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「そこが知りたい!入管法改正案」 Q&A Q3とQ4(退去強制)について 突っ込みどころ満載
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「そこが知りたい!入管法改正案」 Q&A Q3とQ4(退去強制)について 突っ込みどころ満載

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収容部分に続いて、突っ込みどころ満載のQ&Aについてです。長いので、いくつかに分けていきます。

「Q3 なぜ,日本からの退去を拒む外国人を退去させなければならないのですか?」

要するに、日本のルールに違反し、日本への在留を認めるのが好ましくない外国人を国外へ退去させるのが強制送還だ、ということですね。

確かにそれは必要なことです。

「日本のルール」だけ?

ですが、いみじくもここで、入管さんは「日本のルール」と書いてしまっているのですが、守るべきルールは日本国内のルールだけではありません。日本が批准・加入している条約も立派なルールです。

そして、日本国内だけで通用する国内法と、諸外国とで交わした条約とでは、条約の方が強い力を持つ、というのは、法律を学んだ者としては常識中の常識です。

例えば、市民的、政治的権利に関する国際規約(自由権規約)は、17条で家族生活や私生活への恣意的干渉を禁止しています。24条でも家族の保護を謳っています。

なので、入管法という法律では退去強制することができる場合でも、強制送還をすることによって国が得られる利益と、それによって家族が被る不利益とを比較し、後者が上回る場合には、家族を引き裂くような送還をすることは許されないのです。

自由権規約17条、24条と同じような規定のあるヨーロッパ人権条約を適用して、家族分離を違法としたヨーロッパ人権裁判所の判決はこちらで詳しく紹介されています。

あ、自分が収容・送還に関する専門部会でヒヤリング受けたときのパワポでした。

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これぐらい強烈な前科を有する人でも、彼がベルギーに残ることにより国家に与える不利益と、他の家族は全てベルギーにいるので引き離す不利益を比較したら、後者の方が上回るので、彼をモロッコに送還するのは違法だとしました。

パワポ作るにあたっては、こちらの論文を参考にさせていただきました。ありがとうございました。

「公正な管理」

あと、日本のルールに則って強制送還する、と書いてありますが、日本のルールである出入国管理及び難民認定法は1条で、全ての外国人の出入国及び在留について「公正な」管理をすることを目的に掲げています。

「公正」ですからね。

10年前には在留特別許可認められて在留を認められていた事例と同種事例が、最近は認められず、退去強制を命じられるというのは、とてもよく聞く話です。日本人と結婚した人とか、外国籍の親同の間から日本で生まれて中学生以上になる子どもとか。

10年前は認められていたのが、今はダメ。変化した理由は明らかにせず、事案ごとに適切に対応しています、というだけ。これ「公正」な管理と言えるでしょうか?

日本国内のルールの基本中の基本すらちゃんと守れていないのですよ。実は。長くなったのでQ3はこの辺で。


Q4 日本からの退去を拒む外国人は,本国に帰れない事情や日本にとどまらなければならない事情があるから,退去を拒んでいるのではありませんか?

ここでは難民のこと説明していますが、日本で難民認定率が0.4パーセントだとか、認定すべき人が全然認定されていないというのはあちこちで書かれていますので、どうぞ、こちらのポータルサイトを。

難民審査参与員は、立派な方もおられますが、そうでもない方の方がずっと多いな、というのが率直な感想です。

こんな事件もありました。

こんな実例集もあります。

2016年のある参与員の発言

「あなたは難民としては元気過ぎる。本当の難民はもっと力が無い。」「もっと弱い人が大変な人が大勢いる。あなたならミャンマーに帰っても元気にやっていける。」

これ言った方は、今、どう思っているのでしょうね。

さらに、最近は難民審査参与員が難民と認めるべきとの意見を出しても、最終的に法務大臣がその意見を採り入れず、不認定にすることもあります。

「さらに,難民には当たらないとの判断に不服があれば,裁判所に訴えを提起した上でそのような事情を主張して,裁判所の判断を求めることもできます。」

だって(失笑)。

司法審査をする機会を奪ってチャーター便送還をし、国賠訴訟でも適法だと開き直っているのに、よくそんなことが言えると思います。

「令和元年に,退去強制手続における違反審判において法務大臣に異議を申し出た者のうち,在留特別許可されたものは6割超,1,448件です。」

かつては9割、年間1万件という時代もありました。数、率とも激減していて、先にも述べたとおり、かつてなら認められていたような事案が今は認められないのです。「公正」な管理とはおよそ言い難い状況です。

補完的保護対象者は保護の範囲を狭める。


「〇 加えて,今回の法改正により,難民条約上の難民ではないものの,難民に準じて保護すべき外国人を「補完的保護対象者」として,難民と同様に日本での在留を認める手続を設けることとしています。」

とありますが、政府案の補完的保護対象者は、難民条約が定める人種、国籍、宗教、特定の社会的集団、政治的意見という5つの理由以外で、「迫害を受ける恐れがあるという十分理由のある恐怖」を有する者を保護するというものです。

これまで日本の難民申請がほとんど認められなかったのは、5つの理由にあてはまらないということが原因ではなく、むしろ「迫害を受ける恐れがあるという十分理由のある恐怖」について、国際的には通用しない完全ローカルルールを用いて、極めて厳格な認定をしてきたからです。

なので、補完的保護対象者は、これまでの人道配慮による在留特別許可より保護の範囲が狭まると予想されます(以下の「3」参照)。


入管の方に、法改正が通ったら、それまでの、人道配慮による在留特別許可で保護されていた人と比べ、補完的保護対象者で保護される人はどの程度増えると予測しているのか質問してみました

個別の判断なので、答えられないということでした。数値予測もしないで、改正案を出せるのですね。

全国難民弁護団連絡会議調べでは、入管が公表している資料に基づき2017年〜2019年に人道配慮で保護された人たちが、政府案による補完的保護対象者として保護されるか検討した結果、18件中13件が保護されないという衝撃的な結果となっています。



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東京生まれ、ほぼ東京育ち。早稲田大学卒。1994年弁護士登録。2009年から代々木上原で法律事務所経営 http://milestone-law.com/ Photo by Kanako Baba