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2022年の庇護率29.8%?特殊事情を除けば認定率0.3%、庇護率1.0%で全く威張れたものではない。

庇護率29.8%?

2023年5月2日、BS-TBSの報道1930で、自民党の宮﨑征久さんは、2022年の庇護率が29.8%で諸外国並みと述べていました。4月21日の衆議院法務委員会での滝澤三郎氏も同じ数字を示していました。

ただ、この数字は、一次審査段階のものと付記がされています。

入管庁が公表した資料には、人道配慮による在特がされた件数が一次と審査請求段階で区別がされていません。
両方合わせた数字だと、私の計算では18.9%でした。資料中の「処理数」は取下も含んでいるため、分母は判断がされた認定数と不認定数の合計を用いています。

計算式:(認定数+人道配慮)÷(一次二次を合わせた認定数+不認定数)

2022年 アフガンとミャンマーの特殊事情


ですが、2022年には、以下のような特殊事情がありました。
以下、全国難民弁護団連絡会議の2023年3月24日付声明より、少し長くなりますが、引用します。

2022年の難民認定数の状況について
2022年は一次申請手続と不服審の合計で202人が難民認定を受けたとされており、前年比128人増となっているが、以下のとおり、保護されるべき難民が十分に保護されない厳しい状態は依然として継続している。
(1) まず、アフガニスタンについては、147人で最多となっているが、100人以上は2021年の秋以降、タリバンによるカブールの制圧から日本に退避していた在アフガニスタン日本大使館の現地職員及びその家族であることが判明している。
これらの現地職員及びその家族のほとんどは2022年8月に集団認定を受けたものであるが、その前には、外務省担当者から、「アフガニスタンに帰った方がいい」などと帰国するよう強く勧められたり、2022年8月末の契約終了を通告されて、危険な状態にもかかわらず、実際に帰国した者も相当数いたことが明らかになっている*1,2。このように、現地職員らに対しては、強い帰国勧奨を経た後の集団認定であり、難民保護のあるべき姿とは到底いえない。
このように、2022年の難民認定数においては、極めて特殊な背景事情によって難民認定を受けた者がその多くを占めているものであり、通常の難民認定業務の過程で認定数が大幅に増加したものではないのである。
(2) 次に、ミャンマーについて、2021年2月に軍事クーデターがあったことを受け、2022年は認定数が26人となっているが、ミャンマーの情勢に照らしても極めて少ない数字と言わざるを得ない。約3000人に及ぶミャンマーの難民申請者の存在に鑑みても1%に満たないものであり、到底適正な判断がなされたものとはいいがたい。
 
実際に、2022年におけるミャンマーの不認定者数は一次審査で1455人、不服申立てでは486人となっているものであって、全体の認定率は1%をわずかに上回るにすぎないものとなっている。
(3) その一方、アフガニスタンとミャンマーの2か国以外の出身の難民認定者はわずかに29人であり、前年までと同じく極めて低い難民保護水準が続いている。
2022年はトルコ国籍クルド人の1人が初めて認定されたが、2022年5月に札幌高裁で難民不認定処分の取消しが確定したことを受け、入管庁として難民認定をせざるを得なかった事案であり、それ以外に難民認定を行った事案は存在しないものであって*3、トルコ国籍クルド人は複数回申請を行うことを余儀なくされている状況にある。
 
2 2022年の人道配慮数の状況について
2022年の人道配慮数は1760人とされており、前年比1180人増となっているが、ミャンマーの1682人を除いた人数は78人に過ぎない上、ミャンマーの人道配慮には緊急避難措置が適用された人数が含まれており、人道配慮の実態を有しているとはいえない。
 すなわち、人道配慮による保護という場合には、通常「特定活動」(1年)の在留許可が付与されるが、ミャンマーの難民申請者のうち少なくない者について「特定活動」(6か月)の取扱いであり、週28時間の就労時間制限が付されていた。
 2022年4月以降の緊急避難措置のもとでは、一定の者が「特定活動」(1年)を受けるようになったが、「自己の責に帰すべき事情」によって在留活動を満了しなかった者については、引き続き「特定活動」(6か月)で週28時間の就労時間制限が付されている。
 軍事クーデターを契機に帰国できない者に対し、週28時間の就労時間制限を付する合理的な理由はなく、日本での生活を無用に困難ならしめるものであり、あるべき保護の形ではない。
 しかも、昨年に続き6月と1年の区別をせずに統計上すべてを「人道配慮」とすることは統計上も正確なものとは到底いいがたい。
*1 全国難民弁護団連絡会議「在アフガニスタン大使館職員及びその家族の集団的難民認定に対するコメント」(2022年8月23日)
http://www.jlnr.jp/jlnr/wp-content/uploads/2022/08/jlnr_statement_20220823_j.pdf)
*2
朝日新聞「『日本での暮らしは地獄』外務省担当者は告げた 難民認定の裏側で」
https://www.asahi.com/articles/ASR2G3F4ZR1LPTIL01Q.html
*3
全国難民弁護団連絡会議「トルコ国籍クルド人の初めての難民認定に際しての声明」(2022年8月10日)(http://www.jlnr.jp/jlnr/wp-content/uploads/2022/08/jlnr_statement_20220810_j.pdf)

アフガン、ミャンマーを除くと、認定率は0.3%、庇護率は1.0%

ということで、2022年はアフガン、ミャンマーの特殊事情がありました。
これらを除いて計算した結果は以下のとおりで、例年と変わりのないお粗末な数字であることがわかります。
まだまだ、威張れた数字ではないことがご理解頂けるのではないでしょうか。

【追記 2023年5月4日 17:55】
上記表のうち、異議不認定の数は4735人→4725人、人道配慮の数はアフガン分を抜いていないのではというご指摘があり、確認したところそのとおりでした。前者は老眼、後者はミャンマーしか頭になかったためでした。失礼しました。修正しました。

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