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相変わらずおかしい!〜出入国在留管理庁公表の「改善策の取組状況」及び「現行入管法上の問題点」

出入国在留管理庁が本日、標題の資料を公表しました。

取り急ぎ、読んで、問題と感じたところを、以下まとめました。

「改善策の取組状況」改善策② 名古屋局における組織・運用改革(スライド2)

救急搬送・バイタル計測マニュアル策定とある。是非見たいものである。スライド3にある改善策⑤救急対応に係るマニュアルの整備と研修の強化も同様。

改善策⑥ 過去の再発防止策の実施状況の点検と再徹底

10月26日付指示文書とは何か。

改善策⑩ 本庁における情報提供窓口および監察指導部署の設置(スライド3)

「職員の業務遂行における不適切な対応等に係る情報提供を受け、調査・指導等を行うことを想定」とあるが、現行被収容者処遇規則41条の2以下の処遇に関する不服申出制度が全く機能していない。内部調査では期待できないのは明らか。

また、入管収容施設等視察委員会も、機能不全が指摘されており、独立性・実効性を持たせる必要がある 。


「現行入管法上の問題点」について「日本人と外国人との共生社会の実現」(スライド2)

「我が国に入国・在留する全ての外国人が適正な法的地位を保持することにより、外国人への差別・偏見を無くし、日本人と外国人が互いに信頼し、人権を尊重する共生社会の実現を目指す。」大変ごもっともである。であれば、まずは、その次のスライドにある「不法残留」などの偏見を煽る表現を改め、「非正規滞在」とすべき。

「不法残留の現状」(スライド3)

・「入管法第70条では、不法残留自体が犯罪とされている」→国連恣意的拘禁作業部会 審議結果第5号 「10」は以下のとおり定めており、非正規入国・滞在は犯罪行為とみなすべきでないとしている。

「10. 移住者による非正規入国・滞在は犯罪行為と見なされるべきではない。よって非正 規の移住を犯罪行為と見なすことは、自国の領土を保護し非正規移住者の流入を規制す るに際して国に認められる正当な利益として許される限度を超える。移住者を、国家あ るいは公共の治安および/または公衆衛生の維持の観点からのみ犯罪者と認定し、また は犯罪者として扱ったり、判断してはならない。

・「過去3年(H30年〜R2年)の在留特別許可件数 約1400件(在留希望者からの不服申立てに対する許可の割合 約69%)

2005年までは9割の許可率でした。人数も年間1万人を超えた時期もあります。数、率とも顕著な減少傾向にあります。

「退去強制手続の問題(→送還忌避者の発生)」(スライド4)

送還停止効
→論座に寄稿したとおり 、2021年9月22日の東京高裁違憲判決を上告せずに服した国が、例外を設けることは許されない。


送還忌避者の全体像②/③(スライド6)

「令和2年12月末時点(速報値)の送還忌避者3103人のうち、994人が有罪判決を受けている。」

→以下の児玉noteのとおり 。 


元受刑者の犯罪防止のためには社会内の環境を整えるべきであり、京都コングレスで採択された京都宣言では犯罪防止のための国際協力が呼びかけられた。日本国憲法前文も「われらは、全世界の国民が、ひとしく恐怖と欠乏から免かれ、平和のうちに生存する権利を有することを確認する。われらは、いづれの国家も、自国のことのみに専念して他国を無視してはならない」としており、前科者は本国へ帰してしまえという単純な発想では問題は解決しない。国際協力が必要。

難民認定制度の現状①/③(スライド8)

難民認定申請者数の増加に伴う影響として審査処理期間が長期化とあるが、担当者の専門性不足という決定的な要因が何も顧みられていない。

難民認定制度の現状②/③(スライド9)

令和3年4月21日の衆議院法務委員会における柳瀬房子参考人発言が濫用の根拠として挙げられているが、同じ日に、かつて法務大臣政務官であった井野俊郎議員が、難民認定の決裁ラインにいながら「難民認定をちょっとかじったという程度」であったと発言している。同議員は、現場から難民認定相当の意見で上がってきた案件で、本人の供述を裏づける客観的な証拠が無かったことから難民として認定すべきではないと述べたとも言っている 。


難民認定のイロハのイも知らなかった人物が、重要な決裁権限を握っていたことを明らかにしている。柳瀬発言は、ほとんどの申請者が濫用者だというものであるが、なぜ日本への申請者だけが99%以上濫用者で他国は数十パーセント認定されるのかということについて、何ら説明がつかない。例えば新型コロナウィルスのワクチン摂取率が、ある自治体では40%、別の自治体では0.3%だったとすると、摂取率の違いは住民側の問題ではなく実施主体側の運用に問題があると考えるのが普通であろう。

仮放免の問題(スライド14)

・収容された全ての外国人に仮放免を許可することができるわけではない。
→全てを収容することが前提となっているのが大きな間違い。収容しなければ良い。

・仮放免中の逃亡が415人
→仮放免の取り消しが厳格に行われたり、仮放免されても2週間しか許可されず再収容された事例もあり、再収容を恐れる者が出頭しないのはやむを得ない。


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