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入管が送還停止効例外の一部を修正したのは、もともと適用するつもりがないから

昨日、「修正案は、一言でいって、お話にならない」という記事を書いたところ、大変な反響をいただきました。ありがとうございました

ただ、送還停止効例外規定の範囲を狭めるところを評価される方がいらっしゃるようです。
ただ、上記の記事に加筆したとおり、まず、適用事例が過去にもなく、将来もありそうにないものなので、削ったところで、何ら痛痒を感じていないのだと思います。
なぜかというと、入管の狙いは複数回申請への送還停止効制限であり、犯罪者やテロ対策は、法案を通すための付け足しに過ぎないからです。
以下、その根拠を示します。

収容・送還専門部会の報告書に記載無し

2021年の法案も、2023年の法案も、2020年6月に公表された収容・送還専門部会の「送還忌避・長期収容問題の解決に向けた提言」がベースになっています。
ですが、ここの37頁では、複数回申請の者につき「速やかな送還を可能とするような方策を検討すること」とされているだけです。説明部分を含めても、前科者やテロリストの場合の送還停止効外せ、ということは全く言及されていません。

使い古されたモラル・パニック


ですが、2021年の法案が公表されたときには、送還停止効の例外に、一定の重大犯罪やテロの疑いがある者が突如として現れました。
ここからは私の推論ですが、入管も、複数回申請の者だけを除外するのは、お粗末な難民認定状況からして、批判を浴びるのが必至であることから、前科者・テロリストをも例外の対象に入れることによって、ああ、そういう人たちが難民申請を繰り返して送還できないのはおかしいね、という方向に世論を誘導しようとしたのだと考えられます。
度々ご紹介していますが、稲葉剛さんは、このような手法を使い古された「モラル・パニック」として批判されています。

入管の資料にもテロリストが難民申請を濫用した事例は挙げられていない


ですが、入管がこのような世論誘導のために作成した2021年12月の「現行入管法上の問題点」、2023年2月の「現行入管法の課題」、いずれにも、テロリスト、あるいはその疑いがある者が難民申請を濫用した事例は挙げられていません。そりゃそうでしょう、事例がないのですから。

ですから、修正案において、テロリスト関連条項を削除したり、範囲を狭めることには抵抗がないのです。過去に事例がなく、将来的にも適用する見通しがないけれど、世論誘導のための象徴として付け足しただけなので、削っても問題無いのは、入管さんがよく分かっているからです。
もし、この条項を本気で適用しようと思って法案作っていたのであれば、国家安全保障に関係する重大な問題ですから、こんな数日で削りまーすと言えるような条項ではないですよ。

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