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旅02-シベリア鉄道に落ちた巨大な塊と奇天烈ビーム

9月14日未明の3:00、ずっと一緒だった兄ちゃんとおじさんが下車。彼らをホームで見送り戻ると新しくいい歳の兄ちゃん2人が乗ってきた。ウルサイ上に「お前も飲めよ!」ってビールを突き出される。この時間から飲めるか! 僕は断ったが彼らは宴会を継続した。
その夜、いや未明、2つの大事件が起きた。

目を覚まして感じたこの違和感が何なのか、と朦朧としていた。まだ暗い時刻、深々とした闇の中を走る音が無機質なのはいつも通り。窓の外を見て気づいた。電車が逆方向に走っている!!シベリア平原を走るこの鉄道にスイッチバックなんかあるわけないのに東へ走っているのだ。方位磁石が示している。
原因が分かった。飛行機事故だ。
未明、ウラル山脈のふもとにアエロフロート機が落ちたらしい。(冒頭の写真はモスクワで買った新聞の表紙である。)88人が亡くなり、僕らが通るはずの線路が破壊された。僕らの電車は6:00にUターンして回り道。危機一髪だった。シベリア鉄道は1本の路線ではなかったのだ。けれど、これはモスクワに近い地方だったからだろう。もし東方で同じことが起こっていたら、僕の旅はそこで終わっていたかも。いや、直撃してたら人生が終わっていた。
(いま改めて考えると、そんな確率はかなり低いけれど。)これが1つ目の大事件。結果、モスクワ到着が8時間も遅れた。
しかーしその翌日、身の毛もヨダツもう1つの大(!?)事件が起こったのだった。(※僕は無事だったが亡くなられた方の冥福をお祈りいたします。)

6:00頃、虫の知らせなのか、僕はなんとなくまた目覚めてしまった。寝たままボーっとしていると、僕の上の段の布団のシーツが透けてきた。垂れている部分が増え、少々横へ、そして下へと膨らんでくる。そしてそこから一筋の滝のように液体が落ちた。(また何かが落ちた。)ガンダムなんかでよくある、ビームがパワーを貯めて発射されたように!何が起こったのかわからなかった。唖然としたまま、無意識に僕の布団をその滝から避難させた。僕の布団は濡れるのを免れた。しかし、滝壺になっていたのは僕の右のサンダルだった。

勘のいい方はもうお気づきだろう。僕の上に寝ていたアル中兄ちゃんが大量の寝小便をしたのだ。その量たるや、半端ではなかった。ビールを零しただけかも。匂いをかぐ。希望は消え、現実に直面した。液体を大量に吸うであろう敷布団。許容量を超え、革製座席を滑り、最後の綱のシーツでも受け止めきれない。そのうえでこの量とは驚異的でしかない。僕は車掌さんに説明。彼女は声を殺して爆笑した。前の日は飲み過ぎで戻して警察に連行されたおじさんがいたが、それなんかよりよっぽど酷いじゃないか! 何歳だお前!僕はトイレでサンダルを洗った。ベッドの傍で小便まみれになったサンダルをトイレで洗う。これは理不尽で、やるせなく、カチンと頭から音が聞こえてもおかしくないでしょう。でも気を取り直した。次第に怒りが消え、オイシイ!と思った。こんな経験は人生で一度あるかないか。喉元過ぎれば熱さを忘れるものだ。

皆が目覚めた後も彼はひたすら隠した。布団に毛布を巻いて何知らぬ顔。そして次の日も朝から2人でビールを16L飲んだ。まだ飲んでいた。さすがにカウントした。どんだけ飲んだらあんなに出せるのか。連夜の豪雨は嫌だが、皆にばらすとアル中が逆切れするかもしれない。僕は気持ちを入替え、知らないふりをしてカラカウことにした。わざと布団の匂いを気にしたり、彼の布団の毛布をいじくろうとした。彼は必死に抵抗した。・・・クククッ。。。次の日、彼は寝小便をしなかった。ありがとう、アル中。僕はラッキーマンだ!?

寝小垂(ねしょだれ)を
集めてビーム
黄の滝
皆さんも飲み過ぎに注意しましょう。
もしかしたらあなたもやるかもよ~

犯人です(どっちかは秘密)。『無理』じゃねえよ。。。

#旅日記 #2008年9月

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