都知事選で見えたメディア崩壊の序章、候補者が過去最多の理由を徹底解説!

4年に1度の都知事選が行われている。とはいっても、今回の選挙はコロナ禍ということで、従来の選挙とはなんだか雰囲気が違う。候補者が街を駆け抜け有権者と握手をするといったいわゆる選挙活動ができない。集会も開けなければ、街頭演説もやりにくい。結果も小池さんの勝利がほぼ確実となっている。

しかし、今回の選挙の立候補者は、過去最多の22人。選挙活動ができないのに、負ける戦いなのに、なんでそんなに候補者が多いんだろう?

と疑問に思った方も多いんじゃないかな。その素朴で大した意味がないような疑問こそ、実はこれからの選挙のあり方を考えさせられる重要なものであることを見逃してはいけない。

具体的にどういうことなのか。ここからは僕の私見だが、投票に行くついでにぜひ参考程度に考えていただきたい。


まず、日本の都道府県知事選挙に立候補するのには、最低300万円が必要になる。これは供託金といって、一定のお金を法務局に預けて、ある程度の票を獲得することができたらお返ししますよといったもの。ある意味デポジットのようなものだね。

なぜこのような制度があるかといえば、簡単に言うと、立候補者の乱立を阻止するため。有権者が選びやすい環境を整備しているんだ。

だから、いくら選挙に出ようと思っても、まずはこの点をクリアしないといけない。しかも供託金は、有効投票数の10分の1の票数を獲得できない場合には、没収されてしまうから、多くの候補者は、300万円を失う覚悟を持つ必要がある。そのため、なかなか簡単に選挙に出れないし、わざわざ出ようとは思わない。

にもかかわらず、なぜ22人もの勇者が出馬しているの?



候補者が過去最多という見出しが報道でも先行しているが、実は2016年の都知事選でも候補者は21人いた。だから、過去最多ではあるけど、どちらかといえば、ここ最近都知事選の候補者が増えてきたという分析の方が正しいかもしれないね。

候補者が近年増加している最大の理由は、ずばり、インターネットの普及だ。

インターネットが普及していなかった時代の選挙戦においては、テレビや新聞の報道が主な情報のソースであった。ところがインターネットが普及した現代社会においては、テレビや新聞の報道だけを頼りにする人はむしろ減ったかもしれない。むしろ若い世代の人々においては、インターネットが唯一のソースという場合も多いと思う。

インターネット時代においては、スマートフォン1つあれば、いつでもどこでも情報をゲットできる。裏を返せば、候補者側も、いつでもどこでも有権者に情報提供ができるわけだ。

おそらくその中でも、大きな役割を果たしているのが、ユーチューブだね。皆さんも最近話題の政見放送をご覧になったかと思うけど、おそらくタイムリーに政見放送を見ていた方よりも、ユーチューブで後から見たという方のが多い気がする。

ちなみに僕もほとんどの候補者の政見放送をユーチューブで見たけど、まあ正直笑いを堪えるのに必死だったよ(笑)。

この政見放送は、各候補者が平等の時間枠を与えられ、主張したいことを主張できる場。そして、インターネット時代においては、この政見放送がユーチューブを通して拡散される。つまり、テレビでタイムリーに見ることができなかった有権者も、ユーチューブというツールを通して、見ることができるわけだ。

むしろ、今までNHKの選挙番組なんて全く興味がなかった若い世代の人々が、ユーチューブで色々な動画を見ていたら、たまたま政見放送を見ることになったというケースも増えていると思うね。

先に述べたように、都知事選に立候補するのには、300万円が最低でも必要となる。従来の選挙戦では、いわゆる泡沫候補と呼ばれる候補者たちは、300万円を事実上失うだけであった。しかし、インターネット時代においては、300万円を支払えば、政見放送に出ることができる。そして、その政見放送がユーチューブを通して拡散される。つまり、300万円自体は失うかもしれないけれど、その300万円で有名になるチャンスがあるという考え方もできるわけだ。

「300万円で政見放送の枠を買う」という表現がよく用いられるのは、こういうことなんだよね。たとえば、2019年の参議院選挙では、N国党の立花さんが政見放送を通じて多くの票を獲得したといってもよいくらいのインパクトを残した。

しばしば、主要メディアの討論番組に呼ばれる候補者に偏りがあるといったメディアの報道姿勢に対する批判の声を耳にする。今回の選挙であれば、テレビで報道されるのは、小池さん、山本さん、宇都宮さん、小野さん、立花さんくらい。それ以外の候補者は泡沫候補として取り上げられることはほとんどない。たしかにこれも問題だけどね。

しかし、インターネット時代では、ユーチューブや他のSNSのツールがあるおかげで、泡沫候補と呼ばれる候補者にもそれなりのチャンスがある。

テレビや新聞にはもう頼らない。これからはインターネットが選挙活動のプラットフォームになる。そういう考え方が、これからはさらに増してくるだろうね。これも既存メディアの崩壊の序章かもしれない。

もちろん、今回候補者が多い理由は他にもある。都知事選はそもそも国政レベルで注目される。だから、同じ300万を供託金として納めなければならない都道府県知事選挙であっても、地方の知事選に出るより、東京で出た方が宣伝効果が雲泥の差なんだよね。

さらに、今回の選挙の結果は、小池さんの勝利がほぼ確実だと思われる。だからこそ、他の候補者が、勝つことに拘らずに選挙ができるというメリットがある。言い方を変えれば、次の選挙へのステップともいえる。特に、維新推薦の小野さん、れいわ新撰組の山本さん、ホリエモン新党の立花さん、もしかしたら他にもいるかもしれないけど、彼らは次の衆議院選挙でも必ず立候補をすると思うね。そのための準備もしくは知名度維持といってもいい。

そして、コロナ禍ということもあって、多くの人が家にいるから、なおさらインターネットを使った選挙活動に意味があるわけだ。

ちなみに、僕はふざけた政見放送は嫌いではない。それこそ、今まで選挙に興味がなかった人たちもそれ見たことによって、選挙というものに少しでも関心を持つきっかけになるかもしれないからね。だからといって、彼らに投票しようとはならないけど(笑)。

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