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知ってる!環境のこと(第66話)

⁂データや内容は、当時のものになりますので、ご理解ください。
 
 こんにちは、いかがお過ごしでしょうか?今回のテーマは、「バナナ」です。タイには、「クルアイ・クルアイ」(「バナナ・バナナ」)という言い回しがあり、「簡単なこと」や「ありふれたこと」を意味します。タイ人とバナナが深く結びついていることが伺えるのですが、そんなバナナが今、注目を集めています。もうすぐ、チェンマイは煙害の季節ですが、煙害防止にもバナナが一役買っているのです。バナナのどこがそんなによいのでしょうか?
 
バナナは草
 バナナ(甘蕉、芭蕉実、学名 Musa spp.)はバショウ科バショウ属のうち、果実を食用とする品種群の総称、また、その果実のことを指します。原産地は熱帯アジア、マレーシアなどといわれていますが、バナナが栽培されるようになったのは、パプアニューギニアが初めてと考えられています。
 
 バナナは、大きなもので10メートルを超えるような種もあり、「バナナの木」とはよく言いますが、実は竹類などと同じ草本であり、正確には果物ではなく野菜(果菜)に分類されます。その高く伸びた茎のような部分は偽茎(仮茎)と呼ばれ、実際には、葉が重なりあっているものです。
 
エネルギー供給の優等生
 バナナは、エネルギー源の糖質が豊富で、それを分解する酵素のアミラーゼも含んでいます。また、食後の血糖値の急激な上昇を防いだり、コレステロールの吸収を抑制する水溶性と大腸の働きを促し、がん予防の効果もある不溶性、2種類の食物繊維も含有しています。これらが腸内環境を調整して免疫力を高める他、便秘の改善、腸の余分な老廃物や宿便の排出を促す高いデトックス効果もあります。タイには、バナナの品種が沢山ありますが、特に人気なのはナムワーバナナです。栄養価とデトックスの効果が高く、完熟前の若干青めのものを夜に食べるとよいようです。
 
 更に、バナナの糖質は、吸収が早く即効性のあるブドウ糖と果糖、消化吸収が遅くて持続性のあるショ糖とデンプンがバランスよく含まれています。エネルギーが効果的に持続できるため、スポーツ選手や朝食、また低カロリーであることからダイエットにもお勧めというわけです。
 
捨てるところがほとんどない

 実と花は食用に、仮茎は、食用、家畜の飼料、繊維など、葉は物を包んだり、入れ物を作ったりと殆ど捨てるところのないバナナですが、いまエコを意識した様々な用途があります。

バイオ燃料に

 タイでは、バナナ、パパイヤ、かぼちゃで、バイオエタノールを精製する研究が行われており、バナナが一番効率がいいようです。また、バナナから電気を作る研究も行われています。その他フィリピンでも、規格外のバナナで、バイオエタノールを精製し、工場の設備の消毒などに利用されています。スウェーデンでは、バナナの皮やりんごの皮でバイオガスが精製され、ガス燃料車がたくさん走っています。因みに、ストックホルムでは、エコ燃料車は、駐車料金が無料、燃料も環境税により、化石燃料よりも格安だそうです。

 

バナナペーパー

 バナナの仮茎をパルプ化して紙を製造するのですが、幾重にも房がつき100kgちかくになる実を支えるバナナの仮茎には、紙の原料として上質な繊維が豊富に含まれています。しかし、現状はそのほとんどが廃棄されています。

  バナナは、成長が早く、3~6ヶ月で実つけます。また、一度実をつけた株はもう実をつけないため、収穫の際、根元から切り倒され、残された株から新しい芽が育ちます。このサイクルが20年以上も続きます。ですから、安定した原料の供給が見込める他、非木材パルプを使用することで森林保護にもつながります。世界120カ国以上で生産されているバナナは、約1億トンにもなり、バナナの仮茎で紙を作れば、なんと世界の紙をすべてまかなえるともいわれています。因みに同じような方法で、バナナの繊維を利用した布作りも盛んに行われています。

 

生物分解性プラスチック

 タイでは、生物分解性プラスチックの多くは、キャッサバ芋の澱粉から作れていますが、ピサヌローク県にあるチュラポーンラーチャウィタヤライ学校の高校生は、バナナの実で、生物分解性プラスチックを製造することに成功しています。バナナフラワー、小麦粉、パイナップルの繊維、水を2:2:1:5の割合でまぜあわせて、使い捨ての食器を製造します。現在は、食用となるナムワーバナナの実を利用しており、今後は食用にならない野生のバナナを使用するなど、更なる研究成果が期待されます。
 

防火帯として期待

 森でバナナが生えているところは、土壌が豊かといわれるように、周辺を保水して多くの生命を育むことから、生物的多様性が高いことで知られています。また、成長が早くバナナ自体の水分含有量も豊富です。更に、実、花、仮茎は食用や飼料に葉は食器として、昔からタイの人々の生活と深くかかわってきたバナナは、それ自体に纏わる文化的な多様性も持ち合わせており、村人自ら植樹、管理をして山火事の被害を最小限に留めるための防火帯を形成する植物として注目が集まっています。特に、野生種のバナナは、根をしっかり張ることから、斜面に大量の雨が降っても多量の水分を吸収し、表土流出、土砂崩れを防ぐ効果も高いとされています。

 
 バナナとタイの人々の生活、そしてちょっとした科学技術とアイデアがかみ合えば、もっといろいろなことができそうですね。バナナの可能性を今後も見守って見たいと思います。

CHAOちゃ~お ちょっとディープな北タイ情報誌
(毎月2回10・25日発行)2010年2月25日第165号掲載


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