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自分史上、最強の山行

山が好きです。
二児の子育て真っ最中でなかなか山に行けません。
上の子がそろそろ一緒に山に行ってくれる気配を示しているので、下調べに勤しむ毎日です。

このような山に行くことができないフラストレーションに対抗すべく、昔の写真をよく眺めています。

写真を見返してみると、いろんなところに行っていました。
立山、北アルプス、屋久島。これらの人気の場所にも何度か行ってました。
1人でも登りましたし、複数人で行くのも楽しかったです。

しかしどのシーンが1番鮮明に記憶に残っているかと問われるなら、

“今この時、自然の中に自分1人しかいない“

と錯覚する瞬間。一瞬不安が過ぎるものの、その後に押し寄せてくるワクワク感、爽快感。

この感覚に尽きるなと思います。

なので、1人で行く時はできるだけメジャーでない山を選ぶ傾向にあります。

これまでで1番思い出に残っている山行

この感覚を初めて味わったのは、山登りを初めてまだ日が浅いときでした。
父から、子供の時によく一緒に行った渓流釣りスポットの近くにおすすめの山があると聞きました。

岐阜県郡上市白鳥町にある石徹白登山口から登れる銚子ヶ峰です。
別山、白山への縦走経路の最初のピークです。

7月中旬。快晴。
岐阜県にある実家に帰省して前泊。翌朝、車で2時間ほど車を走らせ、6時半頃に登山口近くの駐車場に到着。
他にもちらほら車は止まっていたけれど、人の姿は見えず。

エンジンを切って車を降りると、聞こえてくるのは近くを流れる川の音と鳥の声だけでした。

諸々準備を済ませて7時前に出発。
長めの階段を登ると大きな杉がお出迎えしてくれます。石徹白の大杉です。
その横を通り過ぎると本格的な登山道が始まりました。

登り始めて気づいたのは、とても静かということ。

人の気配が一切ありません。

たまに聞こえてくるホトトギスの声以外には、自分の息の切れる音、風でたなびく木々の音しか聞こえません。

日常ではいかに人工の雑音に囲まれていたのかを実感します。

ふと、父からあそこはクマが出るから気をつけろよ、と言われたのを思い出しました。しかしどう気を付けて良いのやら。とりあえず、お守りがわりに渡されたホイッスルを定期的に吹くことにしました。

しばらく上がると、母御石と呼ばれる大きな岩が見えてきました。名所のようです。

まだ9時台だっと思いますが、朝も早かったためお腹が空いてました。これまで誰にも会っていないし誰かが降りてくる気配もありません。

贅沢にもその岩の上で、絶景を眺めながら簡単な昼食を楽しみました。

銚子ヶ峰の山頂に着きました。予定よりだいぶ早くに着いてしまったので、もう一つ先のピークである一ノ峰まで足を伸ばしてみることにしました。

少し歩くとこれから自分が向かうピークやそれに連なるピークたち、別山までが一望できます。白山は別山に隠れているか見えません。

よく見てみると、だいぶ向こうに歩いている人が1人見えました。

一ノ峰に到着しました。やはり誰もいません。

ザックを置いて一息ついていると、急にオコジョが飛び出してきて私の周りをくるくる走りまわりました。呆気に取られていると、またすぐに草むらへと走り去って行きました。

しばらく待ってみましたが戻ってくる気配もないので、諦めて下山しました。

結局、下山中も人に会うことはなく駐車場へと戻りました。

駐車場ではこれから石徹白の大杉を見に行くであろう家族連れが楽しそうに出発の準備をしていました。

少し車を走らせて、午後1時過ぎにはこれまた客が1人もいない温泉に浸かって、疲れを癒しました。

これが、今でも私の最強の山行となっています。

大自然に自分1人しか存在しないのではという錯覚。
この不安感や焦り、ワクワク感やら爽快感が混ざり合ったなんとも言えない感覚。
またこの感覚を味わいたいと、それからさらにせっせと山に足を運ぶようになりました。

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