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#31 雨、通過中。

台風10号ハイシェンを経て、二日目の朝、通電。(9月6日の下書きから)
停電する家でヴゥオーーンと家電が鳴いたとき、静けさに慣れた自分を知った。太陽の下でしか目視できない日々はそれはそれでよかった。

夜、十時頃懐中電灯を消して寝て、
朝、四時頃そとの灯りとと共に目を覚まし、きょう何をするか考える。

停電中、ミシンが踏めないので、teiji(ていじ)をつくれていなかったことだけは急かされたとはいえ、今後の動きを冷静に考える機会を望んでいたので、結果それはそれでよかった。

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8月からスタートした
ちいさく繰り返す、バンドのツアーのように巡る展示。

「雨」の中の記号を取り出して、\\\\展(Ame Ten)は、
1.長島町/食堂のあさひや
2.霧島市/こまもの屋沖玉
3.名古屋市/ON minor projectの三カ所の巡ってきました。

この期間、1枚の着物から生まれた
2つのteiji(ていじ)の話をさせてください。

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此処は、甲斐友也(ユーヤ)がいる町、長島。
2019年6月10日の染織ワークショップで来たとき以来で、一年振り。2020年8月25日からあさひやに滞在し、teiji(ていじ)を制作しながらの展示販売スタートさせて、今回もユーヤを通じてたくさんの方が訪れてくれました。

そんなあさひやで過ごす、ある日。

「コーヨーさんの軽トラがあるんで、空き家の要らない家具を取りに行きたいですが、、一緒にいきませんか?もしかしたら、着物もあるかも!」とユーヤから提案に二つ返事で、空き家に行くことにしました。

ブリの生産量日本一の漁師まちの長島町の夕方は、本当に美しい。多くの漁師が仕事を終えて家にいるのか、やたらと静かでいい。

そんな風景を横目にしながら、空き家に到着。ユーヤのお目当てだった家具を車に乗せて、着物も要らないとのことで五枚程度頂きました。

その帰り道の車中で、ふと思った。

長島に橋がなかった頃、この町で暮らしていたおばあちゃんは、こんなカラフルな生地の着物を来て、街に出かけていたのかな
いや、待てよ。この漁師町で生まれた捨てられるはずだった着物を、今のこの町の人たちが使うってことは、「服の「服の地産地消」になるんじゃない?

長島町の着物を、長島町の店を通じて、長島の人が使うっていいなあ!

そんな妄想をあたまに描きながら、あさひやに帰り着いて、早速空き家から生まれた着物を使用して、teiji(ていじ)をつくりました。

(このとき、当初無かった分かりやすいディスプレイが生まれました。)

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ていじは、着物一枚から同じ生地で(異なる大きさで)同じ形のバッグが最大三つできる。全く同じものは2つしかなく希少性があるものなのです。

この2つのていじの行方なのですが、

二年前の夏の終わり、イベントで受付をしていた僕は、熊本県天草の島からやってきた子と出会いました。なぜか話が盛り上がって仲良くなり、それ以来、SNSで互いの活動を応援し合う仲だったのですが、長島町の展示に(二回も船に乗って!)遊びに来てくれました。(本当にありがとう。)

天草でかすみ草農家をしている彼女は、花束を持ってお祝いをしてくれました。そして、みたい未来の話をして、teijiを手渡して、しばしのお別れをしました。

(↑ 彼女がその時のことを書いてくれています。)

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所変わって、名古屋。
名古屋は7年間暮らした街で、思い入れがある土地。

覚王山駅から徒歩5分、バイオリンの修理などを行っているkakuozan MOKUと併設されたON minor projectというギャラリーで展示を行わせてもらいました。

(余談ですが、名古屋で服の販売員をしていた頃のお客様と、こうしていまも繋がりがあるってすごいですよね。感慨深い。)

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この展示には、
京都山奥からわざわざ二人の友人がきてくれました。(本当にありがとう。)

この子たちとも会って二、三回目というのに、見たい未来がとても近くて。初対面で一人の彼女の十年計画を見せてもらった時は、衝撃でした。

え、もうそこまで見えてんの?って 笑

ふたりとも行動力と生きる力がとっても綺麗で、素敵な目で未来をみてるなあという感覚。

炭を作って生計を立てていたり、家族三人で無農薬で田んぼづくりをしていたり、そんなふたりが選んでくれたていじが、この子たち。

なんと
漁師町長島町の一枚の着物は、
海に囲まれた天草のかすみ草農家の友人と
山に囲まれた京都の郷で野良師をしている友人へ。

偶然か、必然か。

自然と共に生きてる人たちの元へ旅立って行きました。

(小さいていじの方も手に渡せて、パンパンにして使ってくれたのも、とってもうれしかった。)

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〝物〟は生まれたら、いつが最期なのか。
壊れるまで、不必要となるまでなのか。

一つの着物を通じて、
この三つのていじを生み、二人の暮らしに触れました。

ていじは不必要になっても、
裁断をしていないから、また別の形に変わります。

彼女たちとまた縁を結ぶことができるんです。
〝物〟の生まれたストーリーとその後のストーリーを、最中を続けることで見ていきたい。

最中 sanaka/コーヨー

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