117B9 医師国家試験 解説【妊娠高血圧症候群】分類が大事

9 妊娠高血圧症候群の重症化の指標となるのはどれか。
a 血小板の減少
b 呼吸数の減少
c 下腿浮腫の悪化
d 子宮収縮の増強
e 尿蛋白/クレアチニン比の低下



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【解説】
ついに必修問題で「HDP」が出題されました。
2018年の「妊娠高血圧症候群」の名称変更、分類変更後、少し出題が敬遠されているように思いましたが、今後産婦人科領域では頻出するものと思われます。

早速余談ですが、医学生さん方に
「血圧の高い妊婦さんを何と呼ぶ?」
と尋ねると、おおよそ妊娠高血圧症候群を知っているかどうかがわかります。
大抵は小声で「高血圧妊娠?」や「妊娠高血圧症?」のような回答が返ってきます。
これではせっかくの2018年の改正によってシンプルになった分類が台無しです。

☆血圧の高い妊婦さんは、全員「妊娠高血圧症候群」です。
大事なことなので言い換えます。
血圧が140/90mmHgを超える妊婦は全員「妊娠高血圧症候群」です。
(例外は白衣高血圧症です。)

これが二つのグループに分かれます。
元々血圧が高いのか、妊娠中期以降に血圧が上昇したのか、の2群です。
さらに、この2グループが尿タンパクもしくは臓器障害の有無で2グループに分かれます。
下に図で示します。

図1. 妊娠高血圧症候群の分類

図1.にあるように、「症」は病型の一つ、「症候群」ではは疾患概念の全体の名前で、大きく異なるわけです。
尿蛋白陽性となれば「〜腎症」に進行するわけですが、現在の分類では尿蛋白がなくても臓器障害があれば「〜腎症」化するというところがポイントです。

そして、分類していると言う事は、リスクや管理治療法に違いがあるということです。
この中で最も軽症であると言える病態は高血圧合併妊娠です。
当然、尿蛋白や臓器障害が出現した妊娠高血圧腎症や加重型妊娠高血圧腎症は重症であるといえます。

妊娠高血圧症候群では血圧のコントロールが非常に重要になります。
降圧目標は140-160/90-110mmHgと下げすぎないというところがポイントですが、160/110mmHg未満であっても重篤な臓器障害を起こすことはしばしばあります。

そこで、この問題を解くカギは、図1の下の段にアップグレードするためには、つまり;
●妊娠高血圧症が妊娠高血圧腎症になる
または
●高血圧合併妊娠が加重型妊娠高血圧腎症になる
ためにはどのような臓器障害を伴うのかということを知っておく必要があります。
臓器障害の一覧を図2に示します。

図2. 妊娠高血圧症候群の臓器障害

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