指先で水平線に重ね合わせて

 昼間に会えることになった。

 遠くに出かけたいけれども、夕方には子どものお迎えと相方が帰ってきてしまう。でも、少し遠出が出来そうとこの日が来る前から言っていた。

 海の上にあるパーキングエリアは開通してから人気があり渋滞がひどかったが、数年もたつと混雑が少なくなった。

「海ほたる、いこっか?」

 珍しく、ホテル以外で行きたいところを言ってくれたあなた、待ち合わせのセブンイレブンから少し離れた場所にあるので、あなたを乗せた後、音楽を聞きながら他愛もない話をしながらそこへ向かう。毎日のように電話で話しているのに、どうしてこんなに話すことがあるのかと思うくらい、話題が尽きなかった。

 友達と冷やかし程度に回った海の上のそこは、ただの「楽しさ」だけで終わってしまったが、大好きな人だった人とここへ足を運ぶと、このパーキングエリアはテーマパークのようで、孤立した島のようで様々なことが駆け巡りながら駐車場から降り、手を繋いで色々なところを回った。

 お土産を買うこともできない。一緒にプリクラを撮ろうとしても撮ることもできない。いつも心の中で買ったふり、撮ったふり、その思い出を焼きつけるばかり。今回もそう。

 外からの潮風が心地よい。少しお腹が空いてきたので店の外で売っていたラスポテトを買った。今では縁日などでロングポテトと言われて売っているものだ。

 塩をかけてもらい、2人でつまみながら海が見える場所に向かった。

 「水平線、どこ」

 分かってはいたけど、聞いてみた。あなたは、ポテトを一つ、つまんで、

「ここだよ」

 と、空と海との間にラスポテトで線を引いて教えてくれた。

 そして笑顔でパクっと口に入れてしまった。

 ポテトが無くなる頃には日が傾き始めた。

「いつもとちがう、ポテトの味だね」

「おんなじだよ」

「そうかなぁ」

「でも、おいしかったね」

「うん」

「近くで売ってないかなぁ」


それ以降、あなたと叶わぬ恋をしている間には見つけられなかった。



そして。

時を経て縁日やサービスエリアで見かけられるようになったポテト。買うと無意識につまんで横にして間を作っている。

何の間かも考えずに。