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ドラマチック
その日社会人サークルの練習で1ヶ月ぶりに会った先輩は、1ヶ月前に付き合い始めた彼女の名前を呼び間違えて、けんかをしている最中だった。
一日中、彼女からの連絡がないか気にしては
「彼女と別れるかもしれんわー」
と言って回っていた。
私たち後輩は、彼にはそういうことがよく起こると既に知っていたので、半分呆れながら適当に慰めていた。
よく話すメンバーに報告するだけではそわそわがおさまらなかったのか、帰り道、先輩は横を歩いていたあまり面識のないおばあちゃん団員にまで
「俺彼女と別れるかもしれないんすよー」
と話しかけていた。
そんなこと急に言われても困るだろうと思いながら、私は後ろを同期の友だちと一緒に歩いていた。
私の心配に反して、おばあちゃんは
「まあ、ドラマチックねえ」
と言って笑った。その声はどこかワクワクしているようだった。
この人は今までの人生で、いったいどれだけのドラマチックに出会ってきたのだろう、と思った。
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