見出し画像

読書ノートl朝井リョウ『何者』

中学生のときにこの本を読んだせいで、わたしはかなり早くから就活に怯えていた。就活では面接に何回も落ちて、自分のことも人のことも嫌になって、友だちのプリンターが借りられなくなるのだと思っていた。去年就活をしている時も、就活の小説があったなとこの本を思い出しながらも、今読んだら病みそうだと思って近づけなかった。
実際に就活をしてみると、この本で怯えていたようなことは一つも起こらず意外とあっさりと決まったし、もともと怖がりすぎていたからか、終えてみるとこんなものか、という感じだった。就活も終わった今読み返したらおもしろいかもしれない。そう思ってまたこの本を手に取ってみた。

みんなハッピー!よかった!で終わる話じゃなかったことはなんとなく覚えていたけど、読み始めてからすぐに、みんななんか嫌だ!!イタい!!と思った。人のことを俯瞰して分析できている気になっている人、頑張っているアピールで必死な人、自分は他人とは違うと思って他を見下している人。でも、主人公たちに対して、こういう人いるよねーと思いながら読んでいたけど、そう思っている自分も実はイタいのではと思って、返ってくるブーメランが背中に突き刺さるのが怖くなってしまった。他人が自分よりもちょっとでも下にいたら安心できると一回も思ったことがないとは言い切れない。自分の嫌なところを全部集めて外に出したらこんな感じになってしまうんじゃないか。読み終わった後、心がひゅんとして灰色になって、うううと言いながらしばらくベッドに突っ伏してしまった。

「就活は終わったけど、俺、何にもなれた気がしねえ」
という光太郎の言葉が突き刺さった。何かをしたからといって、どこかの企業に内定をもらったからといって、理想の自分になんてなれない。自分は自分にしかなれない。それを認めて生きていくしかない。それもとても辛くて苦しくて、勇気がいることなのだと突きつけられて、また怖くなってしまう。

就活なんて遠い未来の中学生のとき、就活を終えたばかりの今、2回読んで、全く違う感想を持った。また10年後ぐらいに読んだら、違うように感じるんだろうか。今度読む時には、自分は自分にしかなれないことを認めて、なれた自分で精一杯頑張れてたらいいなと思う。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?