【短歌】連作『水が来ている』


だとしても浅い眠りの中で見る何かの青写真だよこれは


すぐに出る言葉を二、三出せばまた跳ね返ってくる老いたあなたが


ポートレイト・オブ・トレイシー お父さん僕のことどう見えていますか


iPhoneが手からはみ出てゆく前の友達、それ以降の友達


鈍色にびいろの帰り道にまだずっといる顎関節に予感を宿して


一度だけ戻れるのなら選ぶかも十一月の後部座席を


なんとなく歩道橋から撮っていてよかった涼しいだけの土曜を


古代魚のように沈んだN-Iエヌイチが僕を見ている風の難波で


真昼間の日本橋を『CCOちゃコッチャ』まで駆ければ縦に連なる時間


僕はもう全く新しくはない 水が来ているなら向かうだけ


お大事に。両足首を置けばもう冬の浜辺の惑星にいる



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