見出し画像

東京大学のお金事情を調べてみた。その結果は?

はじめまして。こーへいです。今回は日本で一番偏差値が高くて、研究力があるとされている東京大学の財務諸表を読んだので、日本のトップの国立大学をお金という観点で見てみましょう。

この記事の目的は?

この記事を書こうと思ったのは以前に明治大学のお金事情を調べたのですが、とても儲かっているように見えて。ただ、明治大学は研究費/教員支出費がそんなに多くないように思えました。ただ、他の大学が実際どのくらいの額なのか分からなかったので、とりあえず、日本で一番この2つにお金を掛けているだろう東京大学を調べてみることにしました。

東京大学の収入は?その内訳は?

東京大学の平成28年度の財務諸表を見ていきます。平成29年度の資料はこの記事を書いているとき(2018/07/28)には発表されておらず、ちょっと古いですが、お許しください。
まずは損益計算書の収益部分を見ます。

上のような表にまとめました。これを見ると、1. 運営費交付金収益 740億770万円、2. 付属病院収益 479億7500万円、3. 受託研究収益 358億9700万円、4. 資産見返負債戻入 150億6300万円、5. 授業料収益 138億3800万円が上位5項目を占めています。
個人的にはもっと研究関連の事業が存在感あるのかと思っていました。次はそれぞれの項目が何を表しているのか調べてみます。

運営費交付金収益とは
超ざっくり言えば、これは国からの補助金のことです。このお金に関する扱い方は「別紙2 国立大学法人に特徴的な会計の取り扱いについて
」に記載があります。以下はその一部引用です。

運営費交付金債務の収益化の基準(独立行政法人と共通)
・期間進行基準
時の経過に伴い業務が実施されたとみなして運営費交付金債務を収益化する基準
・成果進行基準(注2)
業務の実施に伴い運営費交付金債務を収益化する基準(例:プロジェクト研究)
・費用進行基準
費用の発生額と同額の業務が実施されたとみなして運営費交付金債務を収益化する基準(例:退職給付)
(注2)成果進行基準は平成19年度より業務達成基準に名称変更

このPDFの9ページ目に東京大学でどのような分類がされているのか記載されています。

で、この運営費交付金はどのような基準で交付額が決まっているのかがこのページに載っています。色々な数式があって「うわ、、。」と思いましたが、文を読めばだいたいどのように決まるのか分かるので、知りたい人は読んでください。一つ思ったのはこの制度は「現状を維持することを第一の目的としており、現状維持の中で成果を挙げたプロジェクトにはお金を落とす。」といった制度だと思います。基本的に前年度のプロジェクト経費を基に交付額が決まるため、未来への投資をします!というスタンスはほとんど見られませんでした(私が見た限りでは)。

受託研究収益とは

受託研究の定義は「受託研究の取扱いについて」に記載があります。以下引用です。

受託研究とは、国立学校、大学共同利用機関、大学評価・学位授与機構、国立学校財務センター(以下「各機関」という。)において民間等外部の機関(以下「委託者」という。)からの委託を受けて公務として行う研究でこれに要する経費を委託者が負担するものをいうものであること。

この他にも受託研究に関する記載がありますが、ひとまず省きます。次は受託研究の内訳を下の表にまとめましたので、見てみます。

断トツで独立行政法人から委託されて研究していることが分かります。この委託者はどんなところがあり、どんなことを委託されているのか調べてみました。ですが、まとまった資料は見当たりませんでした。研究数は平成26年度時点ではおよそ3000件だそうです。一件当たりの額はなんとも言えませんが、相当な額になっていそうです。ちなみに、独立行政法人の一覧はここで見ることができます。これらの組織が東京大学に研究を委託しているはずです。

噂の「科研費」はどうなっているの?

Twitterでよく話題になっている科研費はどのくらい貰っているのか調べてみました。そもそも、科研費とは何なのでしょうか?その答えはこちらの「科学研究費助成事業-科研費-」というページにあります。以下引用です。

科学研究費助成事業(学術研究助成基金助成金/科学研究費補助金)は、人文・社会科学から自然科学まで全ての分野にわたり、基礎から応用までのあらゆる「学術研究」(研究者の自由な発想に基づく研究)を格段に発展させることを目的とする「競争的研究資金」であり、ピア・レビューによる審査を経て、独創的・先駆的な研究に対する助成を行うものです。
科研費についての審査・交付は、独立行政法人日本学術振興会でも行っています。 

これが大学への投資なのかな?と思える感じの内容ですね。
東京大学ではこの科研費が5,191件に対して、232億0202万円が交付されています。正直、少ないと思いました。株式会社CyberAgentがAbema TVに投資している額が200億ぐらいでした。そう考えると、この100倍ぐらい投資されていてもいいのでは?と思いますね。根拠はありませんし、適当言ってますが、日本で最も権威のある教育・研究機関なのに、科研費はAbema TVへの投資額と同じ、一企業の事業部と同じなのか、、、。と思ってしまいます。CyberAgentがめっちゃすごいっていうのはあるかもしれませんが。

ここで私が気になった収入はだいたい書いた&調べたので、そろそろ支出を見ます。

東京大学は何にお金を使っているの?

東京大学の経費は下のような表になっています。

お金が使われている箇所はイメージ通りでした。教員人件費、研究経費が多いですし、医学部を持つ東京大学は附属の病院があるので、診療経費が計上されています。こう見ると、医学部は経費も相当額掛かっていますね。

教員人件費は541億4800万円となっています。明治大学でも教員費は302億だったので、多いとは感じませんし、むしろ少ない気がしますが、実際一人当たりどのくらいもらっているのか、平均を出してみます。
東京大学の教員数は常勤教員数4,874人 支給金額438億4934万9000円非常勤教員数1,013人 支給金額13億2784万6000円です(上の表の教員数とズレていますが、表の方は退職給付金、法定福利費が含まれているからです。今回はその値に触れないため、ズレが生じています)。
常勤教員一人当たりの給料は899万6583円、非常勤教員一人当たりの給料は131万0805円です。非常勤教員がどのような労働内容なのか分からないので、コメントできないですね。常勤教員の給料は何を基準とするかによりますが、世界トップ大学の教員と比較すれば、低いのでしょう。国内で暮らす分には低くはないですが、正直もっと高くあるべきな気もします。大学教員の役割や責任が900万ほどで賄われてしまっていることに少しがっかりです。

ちなみに、補足すると常勤職員一人当たりの給料は625万7952円、非常勤職員一人当たりの給料は126万9468円です。妥当だと思います。初めて何も驚きのない発見をしました。

研究費のセグメントはどうなっているの?

東京大学の研究経費は406億8100万円ですが、これらはどのように使われているのでしょうか?東京大学には大学の他にいくつかの研究所を持っています。今回はその研究所にいくらの予算が配布されているのか調べてみました。

この表の大学には「学部」「大学院(研究科)」が含まれています。他の研究所というのは東京大学附属の研究所という扱いみたいです。今はある、ないといった研究所がホームページで確認されていますが、そこは勘弁してください。決算系資料が古いので、ズレが生じていると思います。

ちなみに、MITの2016年(今回参考にした東京大学の決算資料と同じ年)の決算資料を見つけました。これによると、総額の研究費は、、、、、

2兆6699億2000万円!!!!!!!!!!!!!!!!!!

(この値はInstruction and unsponsored researchとsponsored researchの項目の合計値に110円を掛けたものです。正直、この計算というか考えで一概に比較して良いのかイマイチ分からない。間違っている!と思ったら、コメントください)

ちなみに、Instruction and unsponsored researchは「受託研究ではなく、教育的な研究」、sponsored researchは「受託研究」のことです。今回はこれらの合計値は東京大学の研究経費に当たるのでは?と思っています。なので、この値と比較しました。収入が違いすぎるので、当然ですが、これでは絶対にMITを上回るような研究を出せるとは思えないです。それでも、今は東京大学からもノーベル賞受賞者が出ることは本当にすごいと思います。ただ、これからもノーベル賞に限らず、研究の成果を出せるのかは疑問です。

総括

日本の中で最も権威のある大学ですが、収益と費用という観点で見てもそこそこの額でした。ただ、世界の超一流大学と比較すると、規模は違います。まぁ私立大学なので、国立大学の東京大学と比較するのはおかしいかもしれませんが、だとしても桁が違うので、この差は重大だなぁとしみじみ感じました。
ただ、東京大学が使っている資金の割合は「大学だなぁ」と思える内容でした。教育、研究、人件費(教員)にしっかりと割り振られており、収入を増やすことでしっかりとした体制で必要な部門に資金が割り振られるのでは?と感じました。つまりは収入のコントロールが効きそう(私が思うに)「受託研究」や「共同研究」を伸ばせると良いのでは?と感じています。
ただ、その前に国からの資金をもっっっっっっとがっつり入れても良いのでは?と思いました。


参考資料

事業報告書 https://www.u-tokyo.ac.jp/content/400067155.pdf
財務諸表 https://www.u-tokyo.ac.jp/content/400067153.pdf
国立大学法人法の概要http://www.mext.go.jp/a_menu/koutou/houjin/03052704.htm
共同研究・受託研究の開始
https://www.ducr.u-tokyo.ac.jp/activity/research/sponsored_research.html

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?