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MITに関する2つの資料を読んでみた


初めまして。こーへいです。今日は世界的に超有名なMassachusetts Institute of Technology(マサチューセッツ工科大学)、略してMIT。
そのMITの概要が記述されているサイト「MIT Facts 2018: Financial Data」を見つけました。このサイトはMITの成り立ちから財務までの概要が記述されています。
もう一つの資料とはMITの2017年の財務報告書「2017 Treasurer’s Report」です。44ページもありますし、並んでいる数字も過去数年分のものが並んでいます。
英語苦手ですし、そもそも会計自体素人なので、間違っている箇所があると思いますが、ご容赦を。
ただ、東京大学のお金事情を調べてみた。その結果は?と合わせて読むと日本の大学の予算の少なさが明確になります。正直、日本が大学教育/研究で今後勝てる見込みが無いことが分かります(煽り気味ですが、本当にそう思いました)。
*この記事に出てくる金額は8/18時点の相場1ドル:110.51円として計算しています。

MITの概要

MIT Facts 2018: Financial Dataを参考にこの章は記述します。情報はだいたい2017年のものです。一部例外がありますが、それはその都度記述します。

MITは1861年4月10日に設立されたそうです。この2日後に南北戦争が開戦するきっかけとなった出来事があり、政情としては不安定な時期に設立されたのでしょう。

MITの学生数や男女比は?

受験者数は20,247人、合格者数は1,438人で合格率は7%です。総学生数は11,466人、学部生4,547人、大学院生6,919人です。これは少ないのか判断できなかったですが、日本で有名な理系の大学、東京理科大学の総学生数は19,673人でした。アメリカの大学入学する年代の人口はおよそ450万人(15~24歳の人口:およそ4500万人。18歳の人口はだいたいこの数を10で割った値だとしている)だと思われます。日本はおよそ100万人です。これらを踏まえると、MITの学生数は少ないと感じました。大学受験者層はアメリカの方が多いのに、日本でMITと同じような「理系の私立大学で国内では有名である」東京理科大学の方が学生が多いっていうことなので。ちなみに、東京理科大学の学部生は16,367人、大学院生は3,158人でした。

ここで驚いたのは学生の男女比です。僕は「理系の学部は女性が少ない。」というイメージを持っていました。僕に限らず多くの人がそのようなイメージを持っていると思います。ですが、MITでは女性が占める割合が46%となっています。大学院では少し下がって、35%ですが、これも女性比率は日本と比較するととても高いと思います。
ちなみに、東京理科大学の学部の男女比は男性76%/女性24%、大学院の男女比はおよそ男性80%/女性20%でした。
これは良い悪いという話ではないですが、これから大学受験するという立場から見ると、同性の人が多い大学の方が勉強しやすいと思うので、女性の選択の幅が広がる要因になっていそうです。

MITに通うのにどのくらいお金がかかるの?奨学金は?

MITに通うために掛かる費用に関する記述もありました。その費用の内訳は学費:5,513,315円、寮費/食費:1,626,633円、教科書代/その他必要経費:311,403円でした。合計すると7,451,351円です。これは一年間に掛かる費用です。一人暮らしで私立大学の理系学部に通うということを考えても、ここまですることは普通ないでしょう。とても高く感じます。ですが、MITでは奨学金が豊富であり、日本学生支援機構のように貸与ではないので、気軽に借りることができます。日本学生支援機構に関する記事はこちらにあるので、良ければ読んでください。

サイトで紹介されている奨学金は二種類あります。一つはMIT scholarshipです。これはMITの卒業生からの寄付金、MITの基金から拠出されている奨学金のことです。実に学生の57%がこの奨学金を利用しており、一人あたりの平均給付額は4,729,724円です。
もう一つの奨学金はfinancial aid awardです。これは色々なお金の渡し方があり、給付型、貸与型、仕事紹介などがあるみたいです。実に90%の学生がこの奨学金制度を利用しているとのことです。一人あたりの平均額は5,449,775円です。たぶん、この2つの奨学金制度を併用できるみたいです。
ということは、家庭の金銭的事情でMITに通えないということはないでしょう。もちろん、入るまでにお金がかかると思いますが、そこは考慮してません。
最後に資料見ていて、Students attending tuition-freeという項目がありました。これは授業料免除のことです(たぶん)。条件としてはあるのは「世帯年収が$80,000以下であること」です。この奨学金を利用している学生は35%います。35%の学生が5,513,315円もの授業料を免除されているという事実を日本の私立大学に通う僕には理解できません。と、これだけお金を渡せる準備があるので、学生としては学業の方に専念できそうですね。

MITの財務諸表を見てみる

ここからはMITの2017年の財務報告書「2017 Treasurer’s Report」を読んでみた感想を書きます。google翻訳にとても助けられました。googleに感謝します。

B/S

上のような貸借対照表になっています。気になった項目は資産の部の「投資資産」、純資産の部「一時的な制限のある資産」「無制限の資産」「永遠に制限のある資産」です。特に最後3つは日本語訳から何も読み取ることができないですが、額としてはかなり大きいので、気になります。資産の部の投資資産の内訳も結構気になります。

投資資産内訳

株式がすごい多いですね。個人的に驚いたのは未上場株をおよそ3600億円分保持していることです。SankeiBizによると、日本の未上場企業の資金調達額は2717億円みたいです。MITが保有している未上場企業株の価値よりも日本の未上場企業が調達している額の方が少ないのです。これは驚きですね。MITは世界から優秀な学生が来ているので、在学生/卒業生ともに起業家が多いでしょうし、彼らへの投資も盛んなのでは?と思いました。

一時的な制限のある資産/無制限の資産/永遠に制限のある資産

この項目はざっくり言うと、こうです(ぶっちゃけよく分からなかった。)。
・一時的な制限のある資産は「寄付者によって使いみちが指定されている寄付金」のこと。
・永遠に制限のある資産とは「寄付者に永久に権利がある寄付金」のこと。
・無制限の資産とは「MITが保持する純資産」のこと。
他にはこの資産の計上方法が記述されていますが、ちょっと難しいので、書けません。が、1.2兆円ほどの寄付金があり、8000億円ほどのMITが保有する純資産があるということです。

P/L

損益計算書で気になった項目は「研究収益」「給料/賃金」「投資収益」です。「どうしてここまで研究をお金にできているのか」というのが分かるといいなぁと思いました。給料/賃金は東京大学と比較すると、面白そうです。投資収益は正直そんなに興味ないのですが、額がとても大きいので、調べてみました。

研究収益

MITの研究収益は3つのセグメントに分けられています。「大学」「リンカーン研究所」「SMART」の3つです。それぞれの収益は以下に載せます。

これは項目にある組織からスポンサーしてもらって研究しているということです。日本で言う共同研究に近いと思います。調べてみたら、CrowdWorksがMITと共同研究を開始している記事を見つけたりしました。企業や政府が大学側へリソースの提供を行い、大学が研究を行うということです。防衛省との研究がすごい多いことが気になります。アメリカは防衛費に多額の予算を突っ込んでますし、軍事産業は特に技術的発展による優位性を得やすい産業でしょう。そこで得られた技術力がその他の産業に使われることは良いことですが、戦争は勘弁して欲しいです。

研究収益としてはこのリンカーン研究所が最も大きな収益をあげています。連邦政府との研究がほとんどを占めています。そもそも、このリンカーン研究所とはwikipediaにこのような記述があります。

リンカーン研究所は1951年にマサチューセッツ工科大学とアメリカ国防総省の出資で設立した研究所である。レキシントンのハンスコム基地(Hanscom Field)に本部がある他、ニューメキシコ州ホワイトサンズに天文台を持つ。空防を専門とする研究所は立てられないかと1950年にマサチューセッツ大学でチャールズ計画 (Project Charles) という名称で検討が行われ、「リンカーン計画」 (Project Lincoln) として発足した(後にリンカーン研究所と改名)。
同研究所の早期の重要な開発の成果として国内全域のレーダー網の半自動式防空管制組織 (SAGE) や北極圏のレーダー網の遠隔早期警戒線 (Distant Early Warning Line) が挙げられる。また、LINEARと呼ばれる自動観測プログラムにより、多数の彗星や小惑星を発見している。
研究所で生産した知的財産は大学が所有し、管理・産業利用のために技術ライセンス事務局 (the MIT Technology Licensing Office) が置かれている。

これまた、防衛に関する研究をするために設立したみたいです。

SMARTとはMITが2007年にNational Research Foundation of Singapore (NRF)と共同で設立した研究所のことです。

MITの研究は国防省との研究が額としては大きそうです。まぁ技術の発展は望めそうですが、戦争は本当に勘弁して欲しいので、技術の使い方だけは考えてほしいものです。

給料/賃金

MITは給料/賃金として1557億円支払っています。MITには教職員が12,607人います。単純に平均を出しても意味がない数字ですが、一応出します。12,254,053円でした。これを見て、「え?なんかめっちゃ多くない?」と思いました。理由はこの12,607人には大学の職員4,454人が含まれています。正直なところ、大学職員がそんなに給料を貰っている印象はありません。ということでMITの大学職員の給料を調べてみると、Human Resources at MITというサイトに職員の給料に関する記述がありました。まず、MITではAdministrative staffとSupport staffという職があります。そして、それぞれの中でランク付されています。下の写真はサイトから取ってきました。

要するに最も位の高い職員(Administrative staffのLevel6の極めし者)は30,341,885円貰うことができるということです。日本の大学の教授でここまで貰っている人はいないでしょうね。ちなみに、Support staffが低いのは彼らは時短勤務者だからみたいです。

投資収益

詳細が見つかりませんでした。。。ただ、投資資産を2兆円保持していて、それを年10%で運用益を出すと、2000億円になります。この辺全く詳しくないですが、10%も出すのは大変そうですが、非現実的ではないのでは?って感じがします。

総括

MITの経常収益(営業収益+営業外収益)は6228億8311万1000円です。東京大学は2273億9700万0000円(2016年)なので、MITは東京大学の3倍弱稼いでいます。もっと稼いでいるかと思いましたが、十分稼いでいますね。
それよりも圧巻だったのはB/Sです。資産の6割近くに当たる1.2兆円を寄付金で得ており、その調達資産をおよそ8割の2兆円、投資資産として保有しています。これは大学のB/Sなのか分からなくなってきました。
この資産が更に資金を生み出し、教育や研究にお金が回っていくのかと思うと、やっぱり「MIT、すげーな。」「日本の私立大学とかどこ行っても大差ないな。」と思いました。この金銭的差を埋めないと、なかなか日本が学術の世界でトップになるのは難しいのではないか?と思いました。

参考サイト

MIT Facts 2018 Financial Data

MIT 2017 財務報告(Report of the Treasurer)


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