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カガヤの名盤探訪 #1 - サニーデイ・サービス『いいね!』


さて、noteに移行し、名前も「カガヤの名盤探訪」に変わりまして、第1回はサニーデイ・サービスの新作『いいね!』。


3月に急遽配信でリリースされたサニーデイのニューアルバム。

再結成後の傑作『DANCE TO YOU』、その外伝的な大作『Popcorn Ballads』、そしてその2作の世界観を拡張、破壊、再構築したかのような怪作『the CITY』。
そして2020年、新ドラマー加入を経てサニーデイ・サービスから届いた嬉しいニュースが、新アルバム『いいね!』のリリースだった。

3月の配信リリース以来、ホンマにめちゃくちゃ聴いてる。2020年はまだ半年も経ってないけど、Spotifyの聴いた回数年間ランキング1位は間違いなくこのアルバムになると思う。

前作『the CITY』、そのリミックス・アルバム『the SEA』でサニーデイが接近したヒップホップ、トラップ・ミュージックの意匠はどこ吹く風、まるで新人バンドのデビューアルバムのような気持ち良さがアルバム全体を突き抜けている。もちろん良い意味で。
「サウンドは違えど1st AL『若者たち』を彷彿とさせるような仕上がり」とオフィシャルのコピーにあったけど、まさにその通りだと思う。

聴いていて、本当に気持ちいい。3月から6月ぐらい、ちょうどリリースされてたくさん聴いた春から初夏にかけての季節にぴったりのアルバムだ。
M1「心に雲を持つ少年」、M2「OH!ブルーベリー」、M4「春の風」あたりは春との相性バッチリ。バッチグーです。
M6「日傘をさして」、M8「センチメンタル」はちょうど今ぐらいの、初夏にぴったりの曲。最高。
それ以外の曲も本当に良い。まず曲名が良い。歌詞も良い。このアルバムはお気に入りの歌詞がほんまにいっぱいある。

レコード(カラー盤!! クリアブルーでむちゃくちゃかわいい!)ももちろんも買ったんやけど、レコードが入ってるビニールの袋を入れる四角い紙のケースみたいなのあるじゃない、レコードの一番外側の"ガワ"ではなくて、その中のやつ。その紙のケースが歌詞カードになってるんやけど、この仕様がなんかすごく良い。フォントもなんかいい感じ。
ほんでその歌詞が書いてるスペースの右下に「PLAY LOUD」ってメッセージが書いてあるんやけど、それにも「ほほ〜〜」ってなってる。こんなパンクバンドみたいなメッセージがサニーデイから飛んでくるとは思わなかった。もちろんメッセージ通りレコード初聴きは大音量で聴いた。自室で踊り倒した。

パンクバンド、といえばこの『いいね!』は、ドラマーが新しくなったことによってグルーヴの感じが今までと全然違う。かんたんに言うと「バンドっぽい」、アグレッシブな感じになってる。曲調もこのグルーヴ感に影響を受けたのか、バンドの演奏が前面に出たものが多いかな。

前述の『DANCE TO YOU』以降、オリジナルドラマー・丸山晴茂のリタイアもあり、いわゆる「バンドサウンド」な作風から少し遠のき気味だったサニーデイ。
久しぶりに触れた"ロックバンドな"サニーデイはやっぱり最高だった。
一発録りかな?って感じの「センチメンタル」は、スリリングなバンドの演奏が楽しい。「ガレージにドラムセットとギター・ベースのアンプを置いて、そこでバッとやった演奏をそのまま音源にしちゃった!」みたいな感じがたまらない。ギターソロの前の「間奏ー!」ははっぴいえんどの「はいからはくち」のオマージュやと思うけど、そういうのも最高。

どの曲もマジでいいけど、ずっとこれいいなと思ってるのは「コンビニのコーヒー」って曲。王道で胸キュンなコード進行なんやけど、それがなんやかんやで超名曲になっちゃうのがサニーデイ。タイトル通りコンビニで売ってるコーヒーの曲やけど、そこに詰まってる、あるいは付随させてるエモーションの描写が素晴らしい。メロディもすごく好き。

1曲目の「心に雲を持つ少年」から最後の「時間が止まって音楽が始まる」までわずか35分。これ良い曲やな、いやこれもむっちゃ良いわ〜とかやってると、あれよあれよという間に終わってしまう。全18曲、1時間5分もあった『the CITY』とは対照的だ。でもこのコンパクトなサイズ感がいい。

ジャケットもすごく良い。アルバムの内容に呼応するかのような、溌剌としたパワーのあるマンガ調のイラスト。いつもの小田島等氏によるもので、ジャケット以外の装丁のデザインもシンプルイズベスト的な施しが素晴らしい。LPの予約が開始された瞬間にとてつもない勢いでポチったけど、それで全く正解だった。


僕の2020年ベストディスクにノミネート。てか、1位かも。
今までサニーデイを全く知らなかったという人も、ぜひ聴いてみてほしい。できれば本格的に暑くなってくる前に。


これは名盤。



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