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No.011 蕎麦屋にて

好きな食べ物は何かと聞かれたら、「 蕎麦です」と即答する。

家の近くの閉まっていた蕎麦屋が営業を再開した。
引越蕎麦以来の2度目。
瓶ビールともつ煮込みで、ざる蕎麦天丼セットを待つ。

大学生の頃。
埼玉から新宿を経由して杉並方面へ通っていたので、新宿に寄る事も多かった。
寄るといってもCDを探しにタワレコに行くぐらいだったが、そのタワレコの裏に今は無き「 千曲そば 」という立食い蕎麦屋があった。
頼むのは「 ちくわ天蕎麦7:なす天蕎麦3 」の割合ローテーションだった。

大学の近くにも蕎麦屋があり、よく通った。
西永福の小さな商店街出口付近。
年季を感じる、茶色い木のテーブル。
小さい樽みたいな木のつまみを外すタイプの七味唐辛子入れ。
ここのちくわ天蕎麦も本当に美味しかった。

卒業して7年近く経った、30歳。
杉並区に住み、再び井の頭線を利用する事が増えた。
お酒も飲めるようになった上に、昼から飲む楽しさも芽生えたあの頃。
井の頭線に乗り、西永福の蕎麦屋へ何度か行った。
ゆるめのジャズが流れていて、そういえばこんな感じだったなと、当時が思い出される。
親父さんと女将さんの2人で回していて、そうそう、この2人だ!となにも変わっていない店内に嬉しくなった。
瓶ビール、川海老の唐揚げ、もつ煮込み。
学生の時は考えもしなかった、ちくわ天蕎麦までのベストチョイス。
美味い。すごく美味い。
7分は膨れた腹に、遅れて頼んだちくわ天蕎麦をかき込んでゆく。
美味い。
卒業してから10年。
同じ蕎麦であの時と違う気分で神田川沿いをふらふらと家路に帰った。

そして今。
36歳。
ざる蕎麦天丼セット。
うめぇ。

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