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No.012 金玉激痛

渋谷、田園都市線ホームに降りると知っている後ろ姿があった。
気付かれないようにすぐ後ろに着くと、そいつはスマホで「 金玉 激痛 」と検索バーに入力していた。
痛いのか?と問うと、俺に気付いたタカは「めっちゃ痛いねん、やばいねん」と股間を押さえながら苦痛の表情を浮かべた。
なんで?と問うと、「 全然わからんねん、ずっと痛いねん」と返ってきた。
とってもかわいそうだった。

時は10年程前。
2年間ルームシェアをしていた。
同居人は、安楽とタカ。

2人とも身体が強い方ではなかった。
安楽は季節の変わり目には体調を崩していたし、なんかで一時期入院していた。

タカは先に記述した、"金玉激痛"だったし、ヘルニアで床を這いつくばっている時期もあった。

生活リズムはそれぞれバラバラだったが、たまに夕食の時間が合うと鍋を囲んだ。
安楽の車で近くのサミットへ行き、具材を大量に買って準備した。

炬燵の真ん中に鍋を置いて、ちょうどこれくらいの時期だったような。
もう少し先だったような。

この冬も鍋を沢山食べたい。



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