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深夜ラジオで聴いたあの曲は

中学1年から2年(1984~85)にかけて、深夜ラジオにハマっていました。

平日はほぼ毎日、22時すぎから文化放送「吉田照美のてるてるワイド」を聞き始め、24時から「こんばんわ、シュガーです」で始まる「フリー&フリー魔法の時間」、24時10分から「美保純の気楽にいこうよ」、24時15分から「中森明菜ひとつめのサヨナラ」と続きます。

懐かしいなあ・・・もう一度あの雰囲気を味わいたいなあ・・・と思ってなんとなくYouTubeを検索すると、あっさりと音源が見つかりました。

YouTubeは本当にすごい。

世界中の映像&音像コレクターたちが地道に、ていねいに、深い愛情をもって、何十年もかけて収集・保存してきた大量のアナログ資料たち。それがひとつひとつデジタル化され、YouTubeにアップロードされることで、人類共通の財産になっていく。

YouTubeは映像&音像文化への無数の愛によって成り立っています。その愛の恩恵を私はいま、またひとつ受け取りました。

「歌うヘッドライト」を探して

当時の私はこれらの番組を聴いておやすみなさいではなく、24時30分以降もダラダラと、半分寝落ちしながら「オールナイトニッポン」などを聴きつつ長い夜を過ごします。

そして27時(午前3時)ごろになるとシャッキリ目が覚め、TBSラジオ「いすゞ歌うヘッドライト」の時間です。私の昭和歌謡の知識の半分は父親の書斎にあった大量のカセットテープ、残りの半分はこの「歌うヘッドライト」でつちかわれました。

私が聴いていたころの「歌うヘッドライト」のオープニングはこの曲です。

※停止されたアカウントからの転載なので、noteだけの限定公開とします

1984年の時点ですでに若干のレトロ風味をかもし出していたこのオープニング曲が大好きで、聴くたびにわくわくしていたのをよく覚えています。

これも、今だからYouTubeで検索すればあっさり見つかりましたが、昔はそうはいきません。

私は18年前、2002年にもこの曲の音源を手に入れたくて奔走したことがあります。しかしまったく分かりませんでした。YouTubeがないので文字ベースでの検索になりますが、調べても調べても何も出てきませんでした。

こりゃTBSに電話しないと分からないなと思ったそのとき。「歌うヘッドライト」とまったく同時刻の裏番組だった、ニッポン放送「走れ!歌謡曲」のオープニング曲が「口笛天国」という曲である、という情報がヒットしたのです。

「口笛天国」を探して

むむ、そういえば、そもそも自分が聴いていたのが「歌うヘッドライト」なのか「走れ!歌謡曲」なのかもよく覚えていません。似たような番組だし。もしかしたら「走れ!歌謡曲」だったのかもしれない。

たしかにメインのメロディが口笛っぽい音だったような気がするし(のちに勘違いだと判明)、自分とセンスが似ている小山田圭吾のセレクションにも入っているらしいし、うん、たぶんこの曲だな。

ということで、とりあえず「口笛天国」が入っているCDを探しにCDショップ(池袋WAVE)に行きました。

すると、5000円くらいする「走れ!歌謡曲ベストヒット集」みたいな2枚組CDの1曲目に入っているのを発見!でも高い。さすがに高いわ。あきらめていったん帰宅し、こんどは「口笛天国」の原題を調べる。これが意外と苦労したのですが、whistling Jack Smithという人の"I Was Kaiser Bill's Batman"という曲でおそらく間違いないというところまでは分かりました。

後日、満を持してもういちどCDショップに行き、お店に一台しかない検索データベースに"I Was Kaiser Bill's Batman"を入力すると、なんかヘンな輸入盤しかヒットしなくて、店員さんに聞いたら取り寄せるのに1か月くらいかかるということで、もうそこであきらめました。

そしていつのまにか、あの曲を知りたいという欲求も消えてしまったんです。

YouTube以前のシロウトの曲探しなんてこんなもんです。曲名は分かったけど音源が入手困難ではどうしようもありません。

それから約15年たった2017年のある日、急に「あ、そういえばあの曲」と思い出して"I Was Kaiser Bill's Batman"と検索すると、ですよねー。あっさり見つかりました。

てか、探してたのこの曲じゃない!!!

やっぱり自分が聴いてたのは「走れ!歌謡曲」じゃなくて「歌うヘッドライト」だったんだ。あらためて「歌うヘッドライト オープニング」で検索すると、さきほどの動画が見つかった、というわけです。

ちなみに、なんでこんな詳細に18年前のことを覚えているかというと、ちょうどホームページ日記を始めたばかりの頃で、やたらと気合いを入れて細かいいきさつが記録されていたのです。自分アーカイブは役に立ちます。

「時間をとめて」を探して

ここまで書いているうちに、もうひとつ探していた曲があったことを思い出しました。

「歌うヘッドライト」は午前3時に始まり午前5時に終わります。私はだいたい途中で寝てしまいましたが、最後まで聴いていたことも何度もありました。夏が近づくと日の出が早くなり、最後の曲を聴くころには、窓の外に見える東の空が白んできます。

明けていく空を眠い目でボーっと眺めながら聴いた最後の曲を、私は2曲だけはっきりと覚えています。

ひとつは和田アキ子さんの「あの鐘を鳴らすのはあなた」でした。明けていく空を見つめながら、人生で初めてこの曲を聴いた感動は忘れられません。作詞・阿久悠、作曲・森田公一の切なくも力強い世界に激しく心を揺さぶられました。

もうひとつは「時間をとめて」という歌詞の入った女性の曲です。ゆっくりしたバラードで、アンニュイな歌声。しかしこちらは思い出せません。これも2002年ごろに調べたことがあるのですが、ぜんぜん出てこなくてあきらめて、いつしか気になっていたこと自体を忘れてしまいました。

そして今日、長年の疑問に挑みます。まず、「時間をとめて」というタイトルの曲はいくつもあるので片っぱしから聴いてみましたが、あれ?全部違う。てことはタイトルが違うんですね。

とりあえず「時計をとめて」に変えて検索してみると・・・ビンゴ!一発で見つかりました。

そう、これです!13歳の自分が、明けていく空をボーっと見つめながら聴いていた曲。草間ルミさんによるジャックスのカバーでした。

コレクターさんの愛の恩恵をまたひとつ受け取りました。私の朽ちていく記憶が、みなさんの助けによって少しずつ修復されていきます。

最後の曲が終わるとラジオを消して、1時間ほどウトウトして6時すぎに起きて、電車に揺られて学校に行き、そして1限から爆睡するのでした。