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ATTの負の影響はまだ終わっていなかった?広告業界への影響が止まらない理由とは!

こんにちは。キンジョーです。
皆さんご存知ATTの影響について改めて考えていて、少し疑問に思ったことがあります。

それは、

ATTの導入のタイミングでターゲティングの精度が下がり広告プラットフォーマーの業績が悪化するのは分かるけど、現在もなおMetaやGoogleの広告収益が悪化し続けているのはなぜ?

ということです。

ATTが実装されたタイミングでターゲティングの精度が悪化し、その影響で広告プラットフォーマーの業績が悪化するのは分かります。

ただ、ある程度の期間が立つとほどんどのユーザーがATTの実装されたOSバージョンのデバイスを持つようになり、そこからはターゲティングの精度とATTの影響で業績が悪化したとされる企業(主に広告プラットフォーム)の業績の悪化は下げ止まるはず

しかし、(すでにほとんどのiOSユーザーがATTの導入された端末を使用しているにも関わらず)直近の決算を見てもMetaなどの広告プラットフォーマーの業績は下がり続けている、、

なぜ?

※ちなみに、2023年2月14日にApp Storeで取引を行った端末におけるシェアはiOS15以上のユーザーが96%

https://developer.apple.com/support/app-store/


この疑問を自分なりに解決したくて、少し調べた内容を以下の構成で書いていきます。

1. ATTとは
2. ATT導入期の各社の業績を見ながら影響について確認
3. いまだにATTが悪影響を及ぼしているキンジョーなりの仮説

すでに各社の業績の悪化などはご存知の方も多いかと思いますので、気になる箇所だけでも読んでいただけると幸いです。

このnoteは以下の記事から多くの引用を用いています。
ご興味のある方はぜひ読んでみてください!

1. ATTとは

ATTとは、2020年6月WWDCで発表されたiOSの新しいプライバシー保護機能です。
2021年4月にiOS14.5がリリースされ、ユーザーがオプトイン(トラッキングを許可)しなければ広告識別子であるIDFAの取得が困難になりました。

↓アプリを初回起動した際に表示されるこういうやつです。


ATT導入以前は広告主はIDFAを使って主に以下の2つの方法で広告のパーソナライゼーションを行っていました。

  • あるアプリまたはウェブサイトでのユーザーの行動に基づき、そのユーザーが興味のある、広告効果が高いアプリやウェブサイトを特定する

  • ユーザーが広告経由でインストールしたアプリや、購入した商品を把握し効率よく他の広告のターゲティンを行えるようにする

なぜATTが広告プラットフォームに悪影響を与えるかもう少し考えていきまうすが、デジタル広告プラットフォームの以下の3つの活動にATTが影響を与える可能性があります。

  1. ターゲティング: 広告主の広告を表示する適切なグループまたはオーディエンスを決定する。

  2. 広告配信:メディアの各ページに広告は配信する。

  3. 測定: 配信された広告の価値を決定する。

まずはターゲティングについてですが、

ATTは基本的に個々のユーザーレベルでの広告ターゲティングを妨げます。

ユーザー属性は、購入、登録、カートに追加などのユーザーレベルのコンバージョン データを集約して作成することはできないため、以前各プラットフォームで使用されていたようなユーザーレベルのターゲティングが難しくなります。

広告識別子が取得できない状況でのターゲティングは、ユーザーレベルのターゲティングではなく、グループレベルのターゲティングにしなくてはならないのですが、これではユーザーレベルのターゲティングよりも精度と効率が落ちてしまいます。

次に広告配信について、

広告プラットフォームと広告ネットワークの場合、次のどれかに当てはまる場合にATTの影響を受けます。

  • ユーザー レベルの行動属性に依存し、他のタイプのコンテキスト (検索クエリ、サイト コンテンツなど) に依存しないアプリ内ディスプレイ広告を提供している。

  • ピクセル、アプリ内 SDK、またはサーバー間 API を使用して、クライアントからユーザーレベルのコンバージョンシグナルを収集している。

  • 広告識別子、電子メールアドレスなどのユーザー識別子を用いて、ユーザーレベルの「類似」ターゲティングを行っている。

  • オープンなプログラム環境で特定のユーザーをターゲットにする目的で、広告識別子の「デバイス グラフ」を集約している。

そして、ATTの影響は広告のターゲティングだけでなく、測定や収益性の計算にも影響を与えます。

以前はIDFAで促進されていたユーザーレベルのコンバージョン計測を置き換えるためにAppleはSKAdNetworkを提供していますが、ATTが開始した時点では広告計測には不十分なものであり、直近アップデートがありましたが現状は機能的に十分とは言えないものになっています。

SKAdNetworkについての解説と直近のアップデートについては、金城の別noteをご確認ください!

2. ATT導入期の各社の業績を見ながら影響について確認

それでは上記で説明したATTの影響が各広告プラットフォームにどれくらい影響を与えているか、前年比の成長率を見ながら考えていきます。

まずはGoogle検索とYoutubeの例を見ていきます。

Google 検索は主にブラウザで実行され、Google 検索の結果は主に検索クエリとファースト パーティのオンサイト データの結果として配信されるため、Google 検索は ATT の制限を受けにくいと想定されます。

上記のグラフからYouTube と検索の両方が 2021年第2四半期(ATTの導入期)をピークに、前年比で成長率が低下していることが分かるかと思いますが、よりATTの影響を受けやすいYouTubeの成長が検索に比べて悪化しているように思えます。

ちなみにYouTubeはアプリのみではないことに注意が必要です。YouTube はブラウザからも利用でき、その場合は ATTの影響を受けません。また、YouTubeではブランド広告の支出の割合が大きくこれも同様に ATT の影響を受けないにも関わらず、検索との影響の差は大きくなっています。

続いてターゲティグ広告の代表格Metaの決算について見ていきます。

Metaの2019年第2四半期の決算発表時に、同社は次のように述べているように、Metaの広告収入の大部分は、モバイルアプリから生み出されています。

「モバイル広告の収益は、総広告収益の約 94% を占めていると推定されます。」

MetaはモバイルWeb とそのアプリ全体の売上に対する比率を分けて発表していませんが、会社のモバイル広告収入のほぼ多くがアプリによって提供されているはずです。

YouTubeや検索と同様に、Meta の成長は2021年第2四半期にピークに達しています。
そして、同じ四半期にATTがiOS デバイスで過半数の規模に達し、その後徐々に減少してマイナスの成長に達します 。

続いてSnapの収益について見ていきます。

こちらもやはり、2021年第2四半期にピークに達しています。

コロナかおよびATTの実装以前の成長率が高いにも関わらず、これまで見てきた2社と同様の成長率の推移をたどっています。

前年比の収益成長は、ATTがiOSデバイスの過半数規模に達したのと同じ2021年第2四半期に116%とピークを迎え、その後急激に低下し、2022年第3四半期には6%を記録しました。

これまではATTの影響が大きいと思われる広告プラットフォーマーの業績について見てきましたが、続いて、ATTの影響があまり無いと思われる広告ビジネスを行う企業についても見ていきます。

The Trade Deskは上場しているデマンドサイドプラットフォーム (DSP) であり、主にブラウザベースのデジタル広告を強化していますが、最近の成長はCTVによって実現されています。

これまで見てきた企業と異なり、2021年第2四半期にピークに達してそこから成長率が下がり続けているわけではなく、2021年第1四半期よりも2022年第1四半期の方が成長率が伸びています。

続いて2021年度から広告事業単体で数値を公表しているAmazonについて見ていきます。

Amazon の広告収益は、ターゲット設定にファーストパーティ データを利用していますが、その場合ATT の制限の影響をほとんど受けないと思われます。

Amazon の広告収益の伸びは 2021 年から 2022 年にかけて鈍化しましたが、2桁台にとどまり、2022年第3四半期には伸びが増加しました。

そして最後に、ATT によるリスクが考えられないと思われるLamar Advertisingについて見ていきます。

こちらの会社はビルボード、交通機関のディスプレイ、空港の広告フォーマットなどの屋外広告資産を運営しており、時価総額はほぼ 100 億ドルです。

同社の売上高の伸びは、2021年第2 四半期にコロナからの消費者の行動回帰で予想どおり劇的に増加し、その後は緩やかに減速しています。

ここまで各広告プラットフォーマーの業績を見てきましたが、どうやらATTはソーシャルメディア企業の業績に特にマイナスの影響を与えていそうです。

MetaやSnapなどソーシャルメディア広告プラットフォームの成長曲線の形は独特で、2021年第2 四半期に急上昇した後に劇的に下降し、場合によってはマイナス成長に陥りますが、ATT の影響をあまり受けない広告プラットフォームの結果は、明らかに異なります。

3. いまだにATTが悪影響を及ぼしているキンジョーなりの仮説

やはり業績を確認してもATTは広告プラットフォーマー(特にソーシャルメディア)の業績へ悪影響を与えているのは間違いなさそうですが、私が感じていた疑問については解決していません。

改めてですが、ATTの影響でデータが取得出来なくなり、ターゲティングの精度が悪化したことでデジタル広告市場全体から見てもソーシャルメディア企業の業績が著しく悪くなっていることは分かったのですが、

2022年第3四半期を過ぎてもなお業績が悪化し続けているのはなぜなのでしょうか?

疑問に対するキンジョーなりの仮説は、以下です。

FBをはじめソーシャルメディアプラットフォーマーは、

これまでファーストパーティデータとオフプラットフォームデータを組み合わせて、パーソナライゼーションを行いユーザーをターゲティングしており、
オフプラットフォームのデータが取れなくなるとファーストパーティーのデータしか活用できなくなるため、パーソナライゼーションの質が下がる

そしてリーセンシーと呼ばれるユーザーが広告に触れる頻度がターゲティングには非常に重要なためデータが古くなるほど、ターゲディングの精度は下がっていく。

ソーシャルメディアはこれまで自社で保有するデータだけでなく、様々なアプリやウェブサイトに存在したSDKから情報を受け取り、自社で保有するデータを組み合わせてより詳細にユーザーをターゲティングしていたわけですが、

ATTが導入されたことにより、自社アプリ以外のアプリやウェブサイトからのデータ(オフプラットフォームからのデータ)が取得出来なくなるため、自社アプリ内のデータでターゲティングは出来たとしてもその精度は下がってしまいます。

以下の右側(黄色)のデータが使えなくなるようなイメージでしょうか。

キンジョー作成

そしてターゲティングには、リーセンシーと呼ばれるユーザーが広告に触れる頻度、情報の新しさが非常に大切になってきます。
例:最近化粧水のページを見ている人には化粧水の広告が刺さりやすい。

ですので、データが古くなればなるほどその価値は徐々に薄れていきます

これこそが、ATTの導入後すぐにはソーシャルメディアプラットフォーマー業績、およびおそらくターゲティングの精度も下げ止まらなかった理由なのではないでしょうか。

すぐにターゲティングに活用されるデータが自社プラットフォームのみのものに切り替わる訳ではなく、ターゲティングに活用されるオフプラットフォーム側のデータの価値が徐々に下がっていくため業績も下げ止まることはなく、悪化し続けているのではというのが今のところの結論です。

そして、この流れはしばらく続き、しばらくはFB広告の効果が悪化し続け、その結果FB広告に投下されていた広告費は他の媒体に流れるはずです。

実際に直近の決算では、Metaのネット広告収入は前年同期から4%減なのに対して、Amazonの広告売上高は前年同期比19%増加しています。

FBに関しては、DAUsは増加傾向にあり、広告インプレッションは前年比23%増にも関わらず、広告単価は前年比22%減となっております。

Meta22年10~12月期決算
Amazon22年10~12月期決算

今回はATTについて改めて調べるなかで疑問に思った事について、書いてみましたが、私の出した結論なんかすでに知ってるよ!という方も多かったでしょうか?

もし記事のなかで何か間違っている事があれば、教えていただけると嬉しいです!

アドテク業界に足を踏み入れて1年、勉強すればするほど疑問が出てくるので、アプリマーケティングや広告運用に関わっている方がいらっしゃいましたら、ぜひ情報交換をさせてください!

最後まで読んでいただきありがとうございました!


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