性指向は特に価値観の押し付けができない(と考えた方が良いと思う)話 ※バイセクシュアルの話.でも色々当てはまるはず


最近,Twitter(そっちはただのゲイエロ垢と化しましたw)から note を覗いていただくケースが増えました.note は元々,自分の考えの記録用で,今もそれは同じですが,見てもらっていることを少しだけ頭に置いて,今思うことを 140 字以上でまとめておきます.

「価値観を押し付けてはいけない」


言葉としてはスッと入ってくるのに,意外と実践できない心がけではありませんか?

去年,ゲイアプリ+Twitterを試してみて1年間で15人くらいの人にお会いしました.何人かとは今もやり取りさせていただいていますが,こと性に関してたくさん悩んできた方ばかりだからか,皆さん,結構強固な考えをお持ちです.それに触れることで,本当に勉強になりました.
(「彼」のこともこの one of them と捉えられるくらいにはなってきました.去年の1年間は実験だったと思うことにしよう)

ただ,1つだけ,皆さんよく悩んで自分なりのロジックを組み立ててきたからか,それが誰にでも当てはまるって思われるようです.
「私,公式知ってるんです!キリ」的な?
これにかなり悩まされた.特に僕の場合は,

「バイって言ってる男はゲイ.そのことを認められていないだけだよ」
「性の先輩として言えるのは,性指向はどっちで抜く方が多いかで実は決まってるんですよ」


というもの.多分,バイの方はめちゃくちゃ共感いただけるんじゃないでしょうか!?よくブログ等でも取り上げられる話(例えば以下).

あれ?そうなのかな?ということは自分は今変化の途中?え?本当?

と悩みだすとドツボに嵌ります.僕は初心者だったので割と鵜呑みにしてしまいました.そうすると既婚者にとっては辛い.なるほど!じゃあこれからはゲイとして生きよう!とはいかないですよね?左足をそっと後ろに下げてみても後戻りできる状態ではありません.
僕は久しぶりに散々悩み,頭の中で何度も「その」価値観に合わせ,そうしたルートに乗ってシミュレーションしてみました――妻と同じように特定の男性と一緒に暮らす日々.2人きりで過ごす時を重ねる情景――その結果,やっぱりバイ,しかも同性への恋愛感情にはなれないなという,以前からの結論に落ち着きました.

冷静に考えると,世間一般(もしくは世界的)にはバイの性の存在は当然認められていて,さらに人生の中で変化する場合もしない場合もある,とされています(Rosario et al., 2006; Kaestle, 2019).

彼ら(お会いした人全員ではありません)が「バイって言ってるのはゲイである自分を認めるための過程」って言ってるのは,あくまで「彼ら」がそういう道を辿ってきたからであり,またそれ故に同じ価値観の人が周りに集まり,逆に違う価値観の人は排除され,「彼ら」中で定理のように一般化されていった結果だと思います.特に,性指向は自分の感覚であって,しかもそれは「バイ」の中にもいろいろなパターンがあるように多種多様で,他人が想像することはできないものです.「性指向は特に」価値観を押し付けることができないんです.

でも,こう言うと今度は「結論に落ち着いたのは自分を無理やり納得させただけでしょ?」という反論が出てきます.これにも随分悩まされました.納得した自分を客観的に見ることはできないですからね.でも,それで良いんです.こうして文章に書く作業も含めて,「今の自分が納得している」ということが大事なんです.なぜなら,性指向と同じように「世界」は自分の感覚であって,自分の中で矛盾なく回っていることが大事だからです.だから,価値観を押し付けることはできない「と考えた方が良い」んです.

これが,去年,自分がゲイアプリなどで色んな人に会って得た1つの収穫です.

また,「バイって言ってる男はゲイ.そのことを認められていないだけだよ」の中には,「性指向は将来にわたって不変でないといけない」という価値観も含まれていますが,

「世界」は自分の感覚であって,自分の中で矛盾なく回っていることが大事

というのは時間軸(上記の性的流動性)に対しても同じで,将来の自分の感覚が将来の自分にとって矛盾ないことが大事なんです.それが過去と同じでないことは大したことではないと思います.

エッセイのような文章でロジックを組み立てるのは難しい作業ですね...
章立てされた書籍や論文,報告書等の方がよっぽど書きやすい.
多分,こうした話は学術論文などの形で,はるかに洗練された形で議論されているはずです(例えばこの記事の参考文献).でも,そういうのって本当に悩んでいる人のもとには届かないですよね.今回は,note を読んでメッセージを下さる方がいることを知り,自分の今の感覚が少しでも誰かの参考になればと思って,参考文献なんか付けながら書いてみました.


ただし,このロジックすら「僕」の感覚なので,押し付けることはできません.共感いただける方だけ共感いただければと思います.
たとえ,そういう輪が広がっても違う価値観の人を排除しないように気を付けながら.

参考文献
Kaestle, C. E. (2019). Sexual orientation trajectories based on sexual attractions, partners, and identity: A longitudinal investigation from adolescence through young adulthood using a US representative sample. The Journal of Sex Research.
Rosario, M., Schrimshaw, E. W., Hunter, J., & Braun, L. (2006). Sexual identity development among lesbian, gay, and bisexual youths: Consistency and change over time. Journal of sex research, 43(1), 46-58.


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