週刊牛乳屋新聞#97(紹介したいけどできない上海人)
こんにちは、牛乳屋です。
今回は上海の都市封鎖に関しての雑感をまとめました。安全地帯から高みの見物しやがって...と思われるかのしれないことを承知で書いています。上海在住の方はご理解いただいた上で読まれると幸いです。
上海の状況は在外邦人のTwitterでの情報のみならず、現地の友人のモーメンツを見ているので、大変胸が痛みます。自分がかつて住んでいた上海で食糧や日用品が行き渡らず苦しむ人が出てくるなんてゆめゆめ考えていませんでした。
今回の上海の一件を見て、思ったのは上海の人々の民度や教育レベルの高さです。私の友人は、日本語や英語ができる上海人が多く、VPNを使いながら多面的に情報を取得することができます。
また、留学経験や国際交流の経験も豊かで、物事を多面的・批判的に見るタイプも一定数いるため、詰め込み教育によって競争を勝ち抜いた知識集積型中国人のイメージとは少しかけ離れています。
そのため、「コロナウイルスはアメリカ軍が持ち込んだ生物兵器だ」とか「だらしない欧米は死者をたくさん出しているが、中国はコロナ戦争に勝っている!」といったプロパガンダを信じる多数の世論(言葉を選ばずに言うと情弱)とは距離を置いているように感じられます。
加えて、ゼロコロナ政策によって失われるものやゼロコロナ政策の本質についても一定数が理解しています。
ただ、私は批判精神があって多面的な視点と良心を有するエリート上海人の存在がゼロコロナ政策を変えるキッカケにならないと考えています。
諸問題解決よりもゼロコロナ政策の徹底を優先
統治機構の権威と民意が結びついたゼロコロナ政策は「勝利宣言」がされるまでは手綱が緩まることは無いと見ています。むしろ、自分たちの正統性を認めるために強化されるかもしれません。
私はふと、華村さんの記事を読んで、毛沢東の『矛盾論』の考え方を思い出しました。『矛盾論』の大まかな趣旨は以下の通りです。
目の前の矛盾を解決しようと思うと、背景にある大きな矛盾「主要矛盾」に気付く。この主要矛盾に気付いて手を付けない限り、目の前の矛盾「従属矛盾」が解決されない。
あくまでもコロナウイルス蔓延が「主要矛盾」であり、経済や上海で起きている問題は、「主要矛盾」から派生した「従属矛盾」と位置付けることができそうです。
また、ロックダウンにより病院に行けずに持病の悪化、ずっと部屋にいて心の病を抱えるようになること、食料や日用品が満足に届かずに苦しむことは「従属矛盾」であり、これらの矛盾は今すぐ解決すべき喫緊の事象ではなく、「主要矛盾」であるコロナウイルスへの完全勝利が先に解決されるべき矛盾である。これが『矛盾論』の発想から導き出されます。
他者へ共感させるほどの声にならない
私の友人との会話やネット世論を見る限り、上海の窮状が表に出てきたのは上海の人々が当事者になったからであり、これが他の都市であればここまで大きな声にならなかったでしょう。むしろ、上海以外の都市で同様の事態が起きてもインテリ層を含めた圧倒的多数の世論は「従属矛盾よりも主要矛盾の解決を優先すべきだ」と言うような気がします。
忖度を前提としたゼロコロナ政策の徹底による歪みに気付いたのは上海の方々の高い教育水準が下地になった上に自らが当事者になったことが最大の原因だと見ています。ただ、これまで自分の生活圏の外にいる人々の感染状況に対して関心を示さなかった分(見方によっては冷たい態度だった分)、自らの苦境を発信していてもどこか共感を呼ぶような流れにはならないだろうな、、、と感じています。
本当は紹介したい人
主語がいつも通り、大きくなりがちですが、私の友人の中には見返りを求めずに困っている方を助けようという想いを持った人がいるのも事実です。
私の友人(Aさん)はかつて海外留学していたこともあり、日本語と英語で意志疎通を取れます。その方は、ロックダウン中の上海で中国語ができない外国人のためにオンライン上で生活面のサポートをしています。
危機の場面では自分のことだけで精一杯になり、他者に対して攻撃的になるかもしれません。そんな中でも、可能な範囲内で最大限に他者へ貢献するAさんの姿勢には本当に頭が上がりませんし、力になりたいです。
しかし、私はその方の活動を少しでも金銭的にもSNSでも支援できるようなことをしたいし、同じ志を持った仲間が集まってほしいと思いますが、何もできません。なぜなら、外国人と接点のある上海人として過度に表に出てしまうことになった場合でその方の活動や人生に支障が起きるかもしれないと懸念しているからです。
「自分達が苦しい中なぜ外国人を助けてるんだ?」「もしかしたら外国人と結託してるAさんがウイルスの感染源かも」といわれのない罵詈雑言が急スピードで拡散した場合、その方の活動だけでなく支援で助かっている上海在住外国人にとって大きな損失となります。なので、私は考え抜いた結果「中央に宣伝されることは無いけど、少数の人々を決して見捨てることのない良心が上海にはある」とだけ書き残したいと思います。
そんなわけで、今日は上海封鎖に思う諸々を思いつくままに書いてみました。繰り返しになりますが、上海にいる読者の皆様、に限らず上海にいるすべての人々、そのほか封鎖に苦しむすべての地域の人々の安全と健康を願って、本日は締めとします。
サポートは僕の酒代に・・・ではなく、頂いたサポートで面白いことをやって記事にしてみたいと思います!