国語が好きな人の文章の読み方
リテラチャー・サークルという言葉は、5.6年前くらいから聞くようになったイメージがあり、すでに熱心に取り組んでいる地域もあります。
小学校で図書教育として取り組むことが多いように思います。
ざっくり活動を紹介すると、
3〜4種類の本を、複数冊用意して、
グループになって、決めた範囲を、
一人一人違った読み方で読み込み、
その読みで得たものについて話し合い、共有する、
という流れです。
中学校の先生はこの流れを聞くと、
「そんなことは中学校では出来ないよ」
と思うかもしれません。
それは、小学校と中学校の国語の違うからです。
小学校と中学校の国語の違いは、
定期テストという評価物から生まれているものが多いです。
中学校の定期テストには
①複数の担当教諭が同じ教材で授業する
②複数のクラスで同一の問題を解く
③同じ日時にテストを実施する
という3つのポイントがあります。
これがネックとなり、
リテラチャー・サークルの良さを丸ごと味わうことが難しくなっています。
①のために、授業で押さえるべき内容、テーマが定まってきます。これが教科書「を」教える教育に走らせてしまいます。“足並みを揃える”ためです。
②のために、授業内での発言、発見を問題に反映できません。A組で出た解釈と、B組で出た解釈にバラつきがある場合、どちらか一方に有利な問題を作るわけにいかないからです。
③のために、進度を揃えなければなりません。教師の想定より盛り上がったからといって、次回に授業をまたがってしまうと、時数が膨れ上がって、テスト範囲が終わらなくなってしまうからです。
となると、
教科書の作品1つでリテラチャー・サークルをやるとしても、
せっかく多様な読みを生徒がしても、その中に、教師の想定した内容、テーマが無いかもしれません。
また、グループごとに話し合った内容を、クラス全体で共有しても、クラス間の読み取りの差は大きくなる可能性が高く、共通の問題が作れません。
生徒の読み取りに時間がどれくらいかかるか読めず、テストまでに授業が終わらないという可能性もあります。
では、中学校でリテラチャーサークルを実施出来ないのでしょうか?
いくつかアレンジを加えて、覚悟すれば出来ます。
まず、
定期テストまでに、
授業時数のゆとりを作る必要があります。
次に、
多様な読みに耐えうる、
読み応えのある作品を1つ選びます。
そして、
その作品の最初の授業で初発の感想を書かせたら、ワークなどの漢字・語句の部分を宿題としてさせます。
2時間目から、リテラチャー・サークルを回します。
目安としては、
ヘルマン・ヘッセの「少年の日の思い出」で、
3回くらいが限度だと思います。
1回の授業の時間配分は、
本時の読書範囲を指定し、
それぞれの読み方を確認するまで5分。
4人班の中で役割を決定するのに1分。
各自での読み取りを15分。
4種の読み取りについての話し合いを3分×4人分。
今日1番いい仕事をした人を決めるのに1分。
それぞれの班のいい仕事を紹介するのに1分×9班。
と、かなりカツカツですが、50分の中に収まります。
覚悟を決めるというのは、
「この活動で、こちらが狙っている内容や、テーマが出てこなくてもいい」と割り切ることです。
「3時間も授業をしておいて、テスト問題にできる内容がでなくていいの?」と思うかもしれませんが、
それでもこの活動を体験させる価値が、
リテラチャー・サークルにはあります。
リテラチャー・サークルの最大の魅力は、
優れた読者の読み方を疑似体験できるところです。
いわゆる国語が得意な人は、文章を読むとき、
(A)文章に書かれていることと、自分や世界を関連付けながら読む(広げる読み)
(B)文章に書かれていることに、疑問を持ち、自分なりの答えを考えながら読む(深める読み)
(C)文章の中から、特に心に残る場面や、言葉を見つけながら読む(見つける読み)
(D)文章に書かれていることを、鮮明にイメージしながら読む(明確にする読み)
といったことを同時に行なっていると言われます。
リテラチャー・サークルでは、
これらを1人1つの仕事として分担し、
同じ範囲を読むのです。
(A)コネクター(思い出し屋)
つながりを見つける
(B)クエスチョナー(質問屋)
疑問点を見つける
(C)リテラシー・ルミナリー(言葉屋)
特に心に残る場面を見つける
(D)イラストレーター(イラスト屋)
好きな場面をイラストにする
として、1人1つの仕事を分担し、
後に班の中で、3分間を任されて、
その読み方で得たことをみんなと話し合うので、
自然と、
全員がそれぞれの仕事にしっかりと取り組みます。
教師の言ってほしい答えを探すのではなく、
自分の見つけたことを教える活動になるので、
子どもたちの意欲が違います。
授業後の休み時間にも話し合ったりします。
この活動の中で案外、
教師の設定している読み取りも出ますし、
何なら想定以上の読み取りが飛び出すこともあります。
読み方、考え方の良い習慣を体験させることは、
画一的な内容の解釈を教えることより、
価値も効果も高いものです。
定期テスト向けの共通理解なんて、
この後にやってしまえばいいのです。
ヘルマン・ヘッセの「少年の日の思い出」で、
1時間目 初発の感想と語句調べ
2〜4時間目 リテラチャー・サークル
5〜6時間目 二項対立
7時間目 主題読み
という流れで十分、
指導書に載っている内容もカバーできます。
今年は時間があったので、
その後、リライトもしましたが、
それは別のお話。
リテラチャー・サークルについて、
もっと詳しく知りたいという方には、
こちらの仙台教育センターの中川美佳さんの
サイトが非常にわかりやすくまとめておられますので、おすすめです。
http://www.sendai-c.ed.jp/05sien/03kyouka/01kokugo/dokusyo/kami6ritera.pdf
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?