失われたものを数えるな

「失われたものを数えるな、残された能力を最大限に生かせ」

8月24日の日本経済新聞「春秋」で紹介された言葉である。言葉の主は、第二次大戦後、英国の病院で、車いす患者のリハビリを指導していたユダヤ人医師。リハビリにスポーツを導入した方であり、前出の言葉を理念に、患者を前向きに社会復帰させようと尽力された方である。

以前、同じ趣旨の言葉を別の方から聴いたことがある。発言の主は、首から下が自由に動かせない身体になってもビジネスの世界で活躍された、春山満氏。春山氏の言葉はこうだ。

「失くしたものを数えるな、残っているこの首から上を人よりも使うことで、必ず生き残れる。」

徐々に体の機能が失われていく中、それでも生きていくと腹を決めたときの強い覚悟がうかがえる(と言葉を添えること自体、軽々しいこと言うな、と言われそうである)。

人間は本来、とっても強い。今、できることに意識を向け、それを実践していく。忘れずに持っておきたい姿勢である。

冒頭の英国の病院に話を戻すと、そこで開催されたスポーツ大会が、今、東京で開催されているパラリンピックの発祥と言われている。パラリンピック、そして日本のパラスポーツの歩みについては、「春秋」も引用した本、「パラリンピックと日本 知られざる60年史」(田中圭太郎著 集英社)に興味深く書かれている。

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