学生手帳にいきもの_表紙イラスト_

学生手帳にいきもの2

第一話:まえしま君と喋る動物
第二節:まえしま君と富永家

五月一日、メーデー。まえしま君は放課後にクラスメイトであり

数少ない友人の富永君に声をかけられた。

「ねぇ、まえしま君。今日は用事ある?」

「ないよ」

何だろう、と、そわそわするまえしま君。

「ないなら、うちにおいでよ」

それまで富永君の家に招待されたことも、行ったこともなかった

まえしま君は、初めて富永家の人に招待されて、未知なる希望を

抱いた。

「え!? 良いの?!」

「もちろん。親友の仲だろ、俺たち」

得意げに友の絆を語って、肩に手を回してくる富永君。
回してきた片手はサムズアップをしている。

「じゃあ、行こうか、まえしま君」

「お願いします、富永君」

二人は一緒に下校した。
道中、まえしま君は、喋る植物【ユンカース・ジュピ太】につい

て富永君に教えた。

富永君は、ぱぁぁああっと華やいだ表情になった。

「やっぱり、喋る動植物は他にも存在するんだね。——ユンカー

ス・ジュピ太かぁ。今度、会わせてよ」

「良いよ! ジュピ太、きっと喜ぶと思う」

と、ここで一つ、まえしま君はある疑問を抱く。

「ねぇ、富永君。他にもってことは、もしかして・・・・・・?」

「ふふっ。その疑問は、うちに来れば解けるよ。
——ほら着いた。ここが我が家だ。ついてきて。案内するよ」

三階建ての一戸建てとその周囲を大きくL字状に囲む庭らしきお

家——富永邸の門前まで着いた。

富永君が門の横のパスワードキーをポチポチと打って、ロックを

解除して開けてくれた。

「ようこそ我が家へ」

「お邪魔しまーす」

富永家のお庭をくるりと見渡すまえしま君。
すると、図鑑に載っていた幻獣の存在に気付く。

またしても、目が合ったのだ。

「あ」
「あっ……。君がまえしま君?」

幻獣は、まえしま君を既に知っているらしい。

まえしま君は、うん、と、深く頷いた。

「わしは、富永 笑臥雄(とみなが・えがお)じゃ。
好きな食べ物はカツオとサンマじゃ。宜しく」

そのいきものは、猫のような見た目をしている。

「宜しく、笑臥雄」

まえしま君は思った。さっき富永君が言っていた、「他にも」の

意味がここでわかるとは。

驚いて横を振り向くと、富永君がニヤニヤしている。

「な? 言った通りだろ」

「まさか富永くん家で幻獣に会えるとはね」

「うちで飼ってる幻獣は、笑臥雄だけじゃないんだぜ。来いよ。

まだまだ見せてやる」

ここから先は

1,213字

¥ 100

もし、サポートいただけるのでしたら、その際はノートやマガジンの更新その他創作活動のための創作意欲の維持・向上にあてさせていただきます。