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猫を迎えるまで


我が家には猫が1匹いる。
それはそれは可愛くてやんちゃで甘えん坊な猫だ。
この子は我が家にとって待望の猫なのだが、この子と出会うまでについてを書こうと思う。

わたしたちと猫

わたしも夫も歴代相当数の猫を飼っていて、現在進行形でそれぞれの実家にも猫がいる。

わたしの飼っていた猫はすべて我が家に迷い込んできた元野良猫。我が家の屋根裏で産まれた子猫もいれば、大きくなって餌を求めてきた猫もいた。

一方で、夫はというと高確率で夫が拾ってきた猫。
わたしはあまり捨て猫に出会ったことがないのだが、どうやら夫は捨て猫や親と逸れた迷い猫と遭遇する特殊能力があるようだ。現在、夫の実家で飼っている猫も夫の大学近くにいた捨て猫だった。
小さくてか弱いもの(ちいかわならぬ、ちいかよ?)に弱い夫は家族の承諾は後回しにとりあえず連れ帰り、そのまま飼うというのがお決まりパターンらしい。


そんな2人はいつか絶対猫を飼おうと結婚前から決めていた。

もちろん猫が好きだからなのだが、猫がいる生活は少なくとも人間だけの生活よりも穏やかなものになるという確信がある。
よく「ハグをするとその日のストレスが3分の1減ります」なんて言うが、まさに猫はハグと同等の、もしくはそれ以上の存在だとわたしたちは幼少期から実感しているからだ。
決して人間2人の生活がつまらないなんてことではない。今でも十分穏やかで幸せな日常に、猫がいたらどんなにいいだろうね、なんて想像を2人で膨らませるのだが、わたしたちはなかなか猫を飼う機会に恵まれずにいた。

猫との出会い

そんな折、知人から「猫を飼わないか」と連絡がきた。

話を聞くと、職場に子猫が迷い込んできたそうだ。
どうやら週末に鍵付きの倉庫に迷い込み、出られなくなっていたらしい。
数日前まで親らしき成猫と一緒にいる姿を見かけていたため近くにいないかと探したが、親の姿は見当たらなかったという。
職場ではこのまま保健所に連れて行こうかという話になっているそうで、知人はどうにか保護したいとわたしに連絡してきたのだ。
送られてきた子猫の動画は、倉庫の中でずっと泣き叫んでいたのだろう、しゃがれた声で不安そうに鳴き続ける子猫の姿があった。

わたしは咄嗟に「夫の特殊能力が発動した」と思った。
こんな風に猫と出会うのははじめてだった。

すぐさま夫に連絡を入れると、さすが " ちいかよ " に弱い男、「前向きに検討しよう」と返事がきた。

出会いと決断の法則

わたしは仕事や恋愛、結婚などの物事は『運と縁とタイミング』次第だと思っている。
この3つが重ならないときは大抵うまくいかないような気がして、何か決断する時、どれか1つでも欠けていれば「きっと違うんだな」と断念することが多い。

今回の猫に関して言えば、

運   いつか猫を飼うかもと思ってペット可の賃貸物件に住んでいた。

   保護猫の譲渡会などは土日が多く、なかなか参加できずにいたわたしたちにとって猫から会いにきてくれた。願ってもいない出会いだ。

タイミング   今わたしは仕事をしていないから日中猫と一緒に過ごすことができる。

と、条件はすべて揃っていた。

一方で、もちろん不安もある。
命を預かるという責任とか、猫がいるとなかなか旅行には行けなくなるな、とか。週1ペースで遠方の実家に帰ったりしていたのができなくなるかもしれない、わたしの生活リズムも変わってしまうのではないか、とか。
いくら猫を飼いたいと望んでいても、ひょいと簡単に決断できないのがわたしの良いところでもあり悪いところだと思う。無責任なことはできない真面目な性格ゆえに、デメリットや諦めなければならないこと、この先の苦労を考えてしまうのだ。

でもそんなことより、運と縁とタイミングがいいこのチャンスを逃したらダメな気がしていた。

「あなたのためになると思う」

仕事から帰ってきた夫と話した。
猫を迎え入れたいと思っていること、でも自由が利かなくなること、生活リズムが変わってしまうのではないかと懸念していることも正直に伝えた。

すると夫は、
「俺は、猫がいたらあなたのためになると思う。」
と言った。

わたしの性格や性質をよく理解している夫は、いつもわたしの平穏を優先してくれる。
変化や不明瞭なことが苦手なこと、考えすぎてしまう癖なども全部理解したうえで、それでも猫を飼うことはわたしにとってプラスになると言い切った。

それを聞いて、夫がそういうならきっとそうなんだろうと思った。
わたしよりもわたしの扱いが上手な夫が、猫を飼えばあなたのためになるでしょうと言えば、きっとそうなんだと思う。

その日のうちに我が家で猫を迎えることを決め、知人に連絡をいれた。
知人は、家族にアレルギー持ちがいるため自分で飼うことができないことを申し訳ないと謝った。
そんなことないのに、と思った。知人が保護してくれなかったらそもそもこの子は生きられなかったかもしれないし、そこでわたしたちを頼ってくれたことが嬉しかった。


その後、すぐに猫を迎えるために必要なものを揃え始めた。
よく考えると、今まで半野良猫を飼ってきたわたしにとってちゃんとした猫グッズを買うのは初めてだった。(この話はまたいつか。)

そうして、来たる日、わたしたちは猫を迎えたのだった。

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