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こはくらと巨樹巨木③~猿滑

暑くなったからでしょう、早くも満開を迎えたサルスベリを何本も見かけるようになりました。
夏を代表する花・ヒマワリやアサガオは「草」であって「木」ではない。夏に咲く花木は多くないと言います。その中でも個人宅での植栽も多く、強い陽射しと青い空と共に在って輝きを放っているのがサルスベリではないかと。
木登り上手な猿も滑り落ちそうな、つるつるの幹肌。そしてシワシワの花びら。個性の強い花木だと感じます。
「百日紅《ヒャクジツコウ:この字でも「サルスベリ」と読む》」は赤い花が次々と咲き続け、花期が長いため付いた名でしょう。
しかしながら花の色は紅色に限らず、白から淡ピンク・紫がかった淡紅色、濃ピンクと幅があります。

茨城県内のサルスベリの巨木としては、「千代田カントリークラブのサルスベリ」(かすみがうら市)を抜きには語れないというのが個人の印象です。
その呼称のごとくゴルフ場の一角に立っており、自分のような非ゴルフ客でも事情を話したら、木のところまで入れてもらうことが出来ました。
『日本一の巨木図鑑ー樹種別日本一の魅力120ー』(宮 誠而 著)によれば日本一のシマサルスベリ。白花であることも、シマサルスベリとされた根拠のようです。幹周4.37m、樹高10m。サルスベリなんて所詮人間の腕くらい、頑張っても脚の太さ程度でしょ、、と思ってしまいますが、これは違う。その太くガッシリとした幹は、樹木というよりも岩塊のようでもあります。こんな太いサルスベリを、私は後にも先にも見たことないです。
木の根元の石板には「樹齢二千年」とあり、その根拠は不明ながら、この木の姿を見ると単なるハッタリとも思えないくらいです。

千代田カントリークラブのサルスベリ(2019年8月)

他、自分が情報を集めて実際に訪ねてきた木としては、茨城県県南地域に土浦市指定天然記念物「神宮寺のサルスベリ」(市町村合併前、新治村からの指定を継続していると思われる)、取手市指定保存樹木「福永寺のサルスベリ」があり、どちらも花の色は濃ピンクです。
共に樹齢は不明らしいですが、福永寺のサルスベリは幹周2.3m(後掲『取手市の巨木と名木』より)とのことで、これは直径にすると0.7mほどはあろうと。個人宅の植木の域を超えており、相応の歴史がありそうなのは確かです。

神宮寺のサルスベリ(2022年8月)
福永寺のサルスベリ(2022年9月)

余談になりますが、福永寺はとりで利根川七福神の一つで毘沙門天を祀る寺でもあります。同じ取手市小文間おもんま地区には他に恵比寿神の明星院、弁財天の東谷寺があり、特に東谷寺の「お寺の掲示板」には我々凡夫にはグサッとくることが書かれていて、近所だったら定期的に詣でたいくらいです。
お寺の掲示板は、やはり企画「お寺の掲示板大賞」が始まって以降ぐっと知られるようになったというか、今まで何気なく前を通り過ぎていた寺院の掲示板に注目する人が増えたんじゃないかなと思ってます。『お寺の掲示板』『お寺の掲示板 諸法無我』と、 江田 智昭さん著の本にもなってまして、私はもちろん両方とも拝読しました。
私個人は「自称・敬虔な無宗教徒」ですが(爆)、何せ人里の巨木は寺社と地区の集会所にあることが多いものですから(そして地区の集会所というのも敷地内によく小さな神社があったりしますから;)、巨木を訪ねていると自然と寺社詣でも兼ねる形になっているところはあります。。

東谷寺の掲示板。複数あるうちの一つ(2022年9月某日)

花期の長さを物語る事例として。取手市米ノ井の龍禅寺は国指定重文の三仏堂があるお寺ですが、巨樹巨木好きには市指定保存樹木のイヌマキ・キンモクセイ・モチノキの立つお寺でもあります。『日本一の巨木図鑑ー樹種別日本一の魅力120ー』で日本一のキンモクセイとされたのは「麻生原のキンモクセイ」(熊本県上益城郡甲佐町)で、他のキンモクセイの巨木として「三嶋大社のキンモクセイ」(静岡県三島市。細かいこと言うと薄黄木犀)などが挙げられる中、関東地方から唯一入っていたのがこの「龍禅寺のキンモクセイ」だったと記憶しています。キンモクセイの花咲く頃に訪ねると、境内のサルスベリもまだまだ花盛りで、美しい景色です。こちらのサルスベリも濃ピンクですね。
更に言うと、龍禅寺の最寄駅は関東鉄道常総線の稲戸井駅で、駅から龍禅寺への道の途中に米ノ井の神明神社があり、市指定保存樹木のケヤキとカヤが境内に立っています。キンモクセイの花季には、カヤの雌木が落とした実の何ともいえない匂い(グレープフルーツのよう、などと評されたりするらしい)と、ケヤキの周囲に咲くヒガンバナとにも出会うこととなります。

龍禅寺の境内、9月頃の景色。右手前から左奥に、サルスベリ、キンモクセイ、モチノキ、御堂

『取手市の巨木と名木』(取手市緑化推進委員会 発行)に、「(サルスベリは)日本では本山で修業を終えた僧侶が記念に持ち帰ったため、寺院に多く普及したといわれる」とあり。「千代田カントリークラブのサルスベリ」も、元々は某寺にあったものと(『日本一の巨木図鑑ー樹種別日本一の魅力120ー』より)。関東地方であればイチョウやカヤ、スギ、ケヤキ、サクラなどの巨樹が立つ寺院も少なくないですが、これらの樹種は宮社の御神木としても珍しくない。ボダイジュや、木ではないけどハスならば経典などに出てくるものだから理解できる節もあるけれど…(補足しておくと、関東の寺院にあるボダイジュはほぼ中国原産で、釈尊がその下で悟りを開いたとされる真正のボダイジュ<インドボダイジュ>ではないといいます。鹿児島県指宿市の乗船寺にあるのは真正のボダイジュ、しかも釈尊悟りの地・ブダガヤから分けられた木と知って会いに行った数年前でした。。)
いかにしてサルスベリが「お寺らしい木」になったのか、今現在あちこちの寺院にあるサルスベリの「親木」は何処に在るものか――経緯が気になるところではあります。。

登録から数日、記事を何本か書くようになり、エディタの使い方も分かってきて。テキストに画像を挿入できるようになりました(自爆)


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