6-4 自律神経系に作用する薬の副作用機序
自律神経系に作用する薬の副作用機序を見ていく。
作用すべき臓器以外で作用することが、副作用につながる
β 受容体作動薬
以下の薬理作用を目的として使った場合
気管支:β2 受容体を刺激して、気管支平滑筋を弛緩させることで、気管支を拡張させ、呼吸を楽にさせるため、喘息・COPD に対して使用される。
他の臓器での作用が、目的外の作用(副作用)につながる可能性がある
心臓:心臓を刺激するため、動悸・頻脈・不整脈が起こる可能性がある
消化管:消化管運動を抑制し、胃部不快感など、消化器症状を起こす可能性がある
※消化管は副交感神経優位であり、薬理作用のため、消化管への効果を目的として使うのは、副交感神経に作用する薬。しかし、交感神経も作用しているため、副作用には関連する。
筋紡錘:筋紡錘にもβ受容体が存在しており、β作動薬が作用すると、振戦が起こる。
(例)
喘息の発作寛解薬のβ刺激薬を、発作が楽になるからと、使いすぎると、下記のような症状が出る可能性がある(比較的頻度が高い) ・心臓がドキドキしたり ・消化器症状がでたり ・手が震えたり
β 受容体遮断薬(β ブロッカー)
例えば、以下の薬理作用を目的として使った場合
心臓:β1 受容体を遮断することで、心臓の働きを抑制する。虚血性心疾患では、心臓自体への酸素供給に見合った分だけ働くように、心臓を休ませるように使われるし、頻脈に対しては、心拍数を減少させる効果がある。
他の臓器での作用が、目的外の作用(副作用)につながる可能性がある
眼:縮瞳させたり、眼圧が下がる効果がある。(視野が暗くなる可能性がある他には、特には有害な作用にはつながらないかもしれない)
気管支:気管支平滑筋の β2 受容体を遮断すると、気管支平滑筋を収縮させ、気管支が狭くなるため、気管支喘息患者には、禁忌である。(そのため、喘息患者に対して、βブロッカーが必要な場合には、β1 受容体に選択的に作用する薬を選んだりする。)
筋紡錘:筋紡錘のβ受容体を遮断すると、振戦を抑制する効果がある。(そのため、本態性振戦の治療のために、βブロッカーが用いられることもある。)しかし、糖尿病も一緒にある患者に対して使うと、低血糖症状としての振戦を隠してしまい、低血糖症状に気づきにくくなる可能性もある。
抗コリン薬
前項にあげたように、消化管が収縮して起こる痛みを和らげる目的などで、抗コリン薬が使用される。他にも臨床で用いられる薬には、副作用で高コリン作用を持つ薬が多くある。(抗ヒスタミン薬や向精神薬など)
薬理作用以外に、全身では、以下のような作用を引き起こす可能性がある。
分泌線:抗コリン作用を持つ薬では、消化液を分泌抑制させる。そのため、唾液分泌が減少し、口渇を引き起こす。高齢者では食欲低下につながることもあるため、注意が必要である。
消化管:抗コリン作用を持つ薬は、消化管運動を抑制するため、消化管麻痺やイレウスの人には、禁忌である。
心臓:抗コリン作用を持つ薬は、心臓を刺激しすぎてしまう。そのため、重度の心疾患を持つ方には、禁忌である。
中枢:BBB を通過し、中枢に移行する薬の場合、中枢ではアセチルコリンは記憶・学習・集中などに関与しているため、抗コリン作用を持つ薬を使用すると、せん妄などを引き起こす可能性がある。特に、高齢者では注意が必要である。
汗腺:汗腺は神経伝達物質の例外の場所である。交感神経の神経終末からアセチルコリンが放出され、発汗を促している。そのため、抗コリン用を持つ薬では、発汗を減少させ、皮膚高温を引き起こす可能性がある。
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