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6-2 自律神経系による臓器の調節

臓器ごとに、自律神経系でどのように調節されているのかを見ていきましょう


心臓

交感神経の受容体として、心臓には β1 受容体が存在する。交感神経が β1 受容体を刺激すると、心臓の動きが促進される。
心臓に作用する薬では、交感神経系に関する薬が中心である。

・交感神経を刺激する薬  =アドレナリン作動薬
 ・・・β作動薬

心収縮力を増強させ、心拍数を増加させるため、
徐脈や心停止に対して、心臓を動かすために使う
(例)アドレナリン・・・心停止に対して、救急で使う薬

・交感神経の作用を抑制する薬  =抗アドレナリン薬  
 ・・・β遮断薬(βブロッカー

心収縮力を弱め、心拍数を減少させるため、
虚血性心疾患や頻脈に対して、心臓を休めるために使う
(例)
アテノロール・・・高血圧症・狭心症・頻脈性不整脈の治療
カルベジロール・ビソプロロール・・・心不全に対して、心臓の負荷を軽減させ、心臓を休める目的で使用する

血管

末梢血管には、交感神経系はα1受容体が存在しており、α1 受容体を刺激すると、血管は収縮し、α1 受容体を遮断すると、血管は拡張する。
(交感神経の働きで、体を動かすために必要な酸素を届けるために血圧を上げる!とイメージ)
また、副交感神経に作用する薬は、末梢血管に対する作用を目的とする治療薬としては、使われていない。

・交感神経を刺激する薬  =アドレナリン作動薬

血管を収縮させ、血圧を上げるため、ショック時などに使う。
他にも、血管を収縮させるため、止血のための処置で使用したり、局所麻酔薬の効果を高めるために一緒に用いられる。
(例)アドレナリン
※エピペン (R)・・アナフィラキシーショックに対してショック症状にならないように使う自己注射製剤

・交感神経の作用を抑制する薬  =抗アドレナリン薬

血圧を下げたい時に使用するため、高血圧治療薬に使われる。(ただし、高齢者では起立性低血圧の副作用リスクがある)

交感神経は、β2受容体の刺激を介して、気管支を拡張させる。 副交感神経は、M3 受容体の刺激を介して、気管支を収縮させる。 (交感神経が働くと、体を動かすために酸素を取り込む必要があるため、気管支は拡張させるとイメージ)

・交感神経作動薬  =アドレナリン作動薬・・・β刺激薬
・副交感神経遮断薬  =抗コリン薬

気管支を拡張させ、呼吸を助ける作用があるため、気管支喘息COPD など、気管支を広げたい時に使用する。
(例) 短時間作用型β刺激薬・・・気管支喘息の発作治療薬 長時間作用型β刺激薬・・・気管支喘息の長期管理薬 抗コリン薬・・・吸入薬として COPD

・交感神経遮断薬  =抗アドレナリン薬・・・βブロッカー
・副交感神経作動薬  =コリン作動薬

治療の目的として、使用することはないが、副作用につながるため、注意が必要である。  
☆βブロッカーやコリン作動薬は、閉塞性肺疾患の患者に対して、発作の増悪リスクにつながるため、注意が必要
(もちろん、薬剤ごとにリスクの程度が異なるため、禁忌〜使用可能に分かれる)

瞳孔は、神経の二重支配の例外である。

○瞳孔

交感神経は、瞳孔散大筋を調節しており、
副交感神経は、瞳孔括約筋を調節している。
(交感神経の作用イメージ:怒って、目を見開いて、周りを睨んでいる)
(副交感神経の作用イメージ:リラックスして、薄目を開けて、手元の本を読んでいる)
瞳孔散大筋には、α1受容体が存在している。
交感神経が刺激すると、瞳孔散大筋が収縮する。瞳孔散大筋は放射状にはしる筋肉であるため、収縮すると、瞳孔は広くなる(散瞳)。

・交感神経作動薬  =アドレナリン作動薬・・・α1 刺激薬
瞳孔を広げるため、眼底検査の時に、点眼薬として用いられる。

○眼圧調節

眼圧調節にはα1, α2, β1, β2 受容体が関与している。眼圧下降点眼薬として用いられるのは下記の通り

β受容体遮断薬・・・房水産生抑制
・α2受容体刺激薬・・・房水産生抑制
・αβ受容体刺激薬(アドレナリンの前駆体)・・・房水流出促進

それぞれの薬の作用機序が異なるため、一見、「遮断薬」と「刺激薬」と相反する薬に見えるが、眼圧を下げる効果がある。

○遠近調節

<近くを見る時>
副交感神経が刺激 →毛様体筋が収縮(輪状筋なので、収縮すると中央による)
→水晶体が厚くなる →近くにピントがあう

<遠くを見る時>
交感神経が刺激 →毛様体筋が弛緩
→水晶体が薄くなる →遠くにピントがあう

瞳孔括約筋には、M3 受容体が存在している。 副交感神経が刺激すると、瞳孔括約筋が収縮する。瞳孔括約筋は輪状筋であるため、収縮すると、瞳孔は小さくなる(縮瞳)。 さらに、毛様体筋を収縮させ、隅角(房水排出路)を開くため、眼圧が低下する作用もある。

・副交感神経刺激薬
縮瞳させ眼圧を低下させる作用があるため、緑内障発作治療に用いられる。

膀胱

交感神経を刺激すると、尿を溜め(蓄尿)、 副交感神経を刺激すると、尿を排出させる(排尿)ように働く。

・交感神経刺激薬
排尿筋を弛緩させるので、膀胱をゆるめ、尿を溜めやすくする 内尿道括約筋を収縮させるので、出口を締め、尿を出しにくくする →しっかりと尿を溜められる(蓄尿)  →頻尿の治療などに用いられる
(例)選択的 β3 刺激薬・・・膀胱を弛緩させ、膀胱の容量を広げる    →過活動膀胱の治療薬

・副交感神経遮断薬=抗コリン薬
(例)抗コリン薬・・・膀胱の過剰な収縮を抑制する    →過活動膀胱の治療薬

・副交感神経刺激薬
排尿筋を収縮させ、排尿を促す (例)コリン作動薬 →低活動膀胱の治療薬

・交感神経遮断薬・・・α1 遮断薬
尿道の抵抗を減少させ、排尿しやすくさせる (例)α1 遮断薬 →低活動膀胱の治療薬、前立腺肥大症の治療薬

消化管

消化管は、交感神経・副交感神経の二重支配を受けているが、副交感神経支配が優位である。そのため、消化管運動を調節する目的で、交感神経に作用する薬を使用することはなく、副交感神経に作用する薬を使用する。
副交感神経を刺激すると、消化管運動は促進される。消化管からの分泌液の分泌も促進される。 (副交感神経の作用イメージ:副交感神経は“休養と栄養”なので、栄養をとるために、腸管が動く)

・副交感神経刺激薬=コリン作動薬
消化管運動を促進する  →腸管麻痺など、腸管を動かしたい時に使用する

・副交感神経遮断薬=抗コリン薬
消化管運動を抑制する  →腸が収縮して痛みが生じている場合など、腸管の動きを止めたい時に使用する

抗コリン薬は、腸を弛緩させるため、腸管麻痺・イレウスの患者には使用できない

代表的な臓器について、自律神経系による調節の概略を説明した

まとめ

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