うろぼろす

長いまつげが震えている

実る光る粒が甘く香って
舌のさきでなぞる

緩やかに息づくラインは
夕日に染まり
ゆっくりと眠りを迎える
準備をしていた

引き寄せ
ふたたび引きずり込んだ
時間の深さ
手探りの距離に
目が眩んで無我夢中に齧り付く


絡み合う白と黒の長蛇が
ぬらぬらと濡れて水槽の硝子に
割れた赤を這わせる

羽が生えてもおかしくない
くぼみを含んだうつくしさが
白すぎて明るい
獣の食欲をむき出しにかぶりつくと
尖った顎を綺麗にあおのかせ
吐息が耳を蕩かす

扇風機の羽の音
短い呼吸の熱量
きゅう、と切れ上がった足首の腱が
畳の上で伸びて、爪が桜色に染まり
丸まる

窓際に掛けた古い風鈴が
りん、となった

終わらない
終わる理由がみつからない

鎌首もたげた
二つの鱗も美美しい白と黒とが

終われない僕らを
見つめて円を描いた

#官能詩

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