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不世出の歌い手、おおたか静流さんを悼む

おおたか静流さんが亡くなった。69歳の若さで。

おおたかさんの生声は4回聴いた。いずれもオペラシティにある小ホール・近江楽堂におけるオールアカペラコンサート「庭の千草」である。

4000円という安さ

「庭の千草」はおおたかさんのライフワークとして年一回開かれていた。
100人足らずのキャパで、教会のように残響豊かなホールでおおたかさんの生歌を聴けるのは贅沢の極みだった。

おおたかさんの歌声を知らない方のために喜納昌吉の名曲「花」の映像を。

「花」は本家の喜納さん以外では大ヒットした石嶺聡子さん、破格のスケールの美輪明宏さんもよいが、おおたかさんも彼女でしかなしえない世界だった。

「唯一無二」という言葉が彼女ほど合うアーティストはいない。
クラシックをベースに民族音楽のような発声をブレンドさせた独特の歌唱法は他の追随を許さない。

圧倒的なオリジナリティ。昨今流行りのカラオケ歌唱の真逆である。
おおたかさんは代わりが利かない。

「庭の千草」に行ったのは、Eテレ「にほんごであそぼ」の「でんでらりゅうば」を聴いて興味をもったからだった。

ユニークなコスチュームで登場

おおたかさんといえば、ファッションも個性的だった。
どんな派手な服を着ても似合う人だった。

「でんでらりゅうば」はこんな歌詞。

でんでらりゅうば〜 でてくるばってん
でんでられんけん でーてこんけん

長崎のわらべうたなのだという(語感だけで意味をもたない歌かと思ってた😅)

おおたかさんの倍音豊かな歌声に惹かれた。
彼女のコンサートを調べて「庭の千草」の存在を知った。

オール無伴奏。ときどきトークが挟まれる。決して饒舌ではないが、ユーモアセンスのあふれるトークだった。

おおたかさんは平和や反戦のイベントにも積極的に参加していたのではなかったか。
歌を通して社会を動かす力をもった人だった。

おおたかさんはmixiをされていて、たまたま見つけた私がファンメッセージを送ると返信をくださった。

「庭の千草」に何度か伺って、サイン会でも言葉を交わして、多少顔を覚えられたかなという時期に厚かましいリクエストをした。

クラシックを歌ってほしい、と言ったのだ。

もしかしたら曲のリクエストもしたかもしれない。

それで、「庭の千草」でヘンデルの「わたしを泣かせてください」を歌ってくださったことがある。

自作曲の「パティロマ」も印象深いし、おおたかさんは即興的なヴォカリーズだけでも聴き手を感動させる歌い手だった。

最近はコンサートに行ってなかったとはいえ、お話したこともあるし、ポップスの歌手で複数回生で聴いた数少ないアーティストなので、早すぎる死はあまりにも悲しい。

おおたか静流の前におおたか静流なし、おおたか静流の後におおたか静流なし。

不世出の天才、おおたか静流さん。
素敵な歌の思い出の数々をありがとう。

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