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お正月の猫とかパズルとか、夫とか(エッセイ)

今年のお正月は、家族で1000ピースのパズルをやろうということになっていた。もちろん、マコも一緒に。

パズルをしながら行った気になれるようにと、銀山温泉の雪景色のパズルを年末に取り寄せておいた。ついでに言うと入浴剤も。

マコも一緒に、というのは、以前500ピースのパズルをしていた時に、小さかったマコが乱入してきて、パズルを落としたり、手に取ったり、せっかくできた所を壊したりして、大いに盛り上がったので、今回もきっと参加してくれると思ったからだ。

こたつの上で30日から開始。まずは大まかな色分けだ。
空っぽいところ、雪っぽいところ、建物の灯りっぽいところ、などをビニール袋に分類しておく。

このビニールが失敗だった。
スーパーの袋詰めの台にあるような、薄い種類のビニール袋。
それをマコが食べてしまったのだ。
以前にもウンチから出てきたことがあって(いつもマコのウンチの話ばかりですみません)、絶対に食べないように台所の引き出しに入れておいたのに。

大晦日の夜、パズルをしていて、こたつの中でしゃわしゃわと音がしたので「あっ!」と思って見た時には遅かった。
パズルを出した後のビニールを、マコがかじっていたのだ。
マコが食べるから注意して、と夫に言っておいたのに。
いやそれより、このビニールに入れた私が悪い。
ビニールを伸ばして確認すると、3枚のそれぞれ一部分が無くなっていた。

マコはと言うと、ごはんをモリモリ食べて走り回っている。
ウンチもさっきした。
以前のようにまた出て来るかもしれないので、少し様子を見ることにした。
ひとまず、少しでも症状が出たらすぐに病院だ。
こんな日に対応している救急病院を調べておく。
年末年始に飲もうと沢山お酒を買っていたが、いつでも運転できるように飲まないことにした。
マコ、ごめんね。
パズルなんて、やらなきゃよかった・・。
そんな年越しだったが、マコの変わらない元気さに救われた。
いつものように、布団の上から私のお腹に乗って眠る。



元旦は、「初日の出」よりも何よりも、マコのウンチを心待ちにしていた。
ビニールが出てきてくれさえすれば、安心だ。
出る時は1~3日で出ると書いてある。

そして、出た。
2日に分けて出てきた。
ビニールを広げて、かじって欠けた部分と照合すると、ぴったりと合う。こっちでもトホホなパズルだったが、ピタリと合った時、本当に安堵した。マコはその間ずっと元気で、いつも通りごはんを沢山食べ、お留守番のない正月を楽しんでいた。


1月2日は、たまたま付けていたNHKで、人形劇の「ごんぎつね」を観て泣く。
いたずら好きな子狐のごんが、マコに見えて仕方がないのだ。
飛んでいる虫を捕まえようとジャンプしたり、主人公が病気の母親の為に獲ったうなぎを、籠から逃がしてしまったり・・。

その仕草が、今よりももっと小さかった頃のマコにそっくりで、子狐を擬人化した人形の表情も、なんともかわいらしい。
あんなにうなぎがにゅるにゅるしていたら、そりゃあ興味を持ってしまうよ、触るな、なんて無理だよ・・。子供だからまだなにもわからないし・・。

完全に偏った見方をしながら、終盤の悲し気な音楽も相まって、最後にごんが撃たれるシーンでは「どうして、反省していたのに、どうして・・」と、涙があふれてくる。
ふと横を見ると、夫も泣いていた。

マコが撃たれたような気になって、それからもしばらく気持ちの整理ができず、ごんぎつねについて書かれた記事などを読んだりしていた。

マコはというと、口元に微笑みを浮かべたまま眠っていて、それを見て、撃たれてない、生きているんだと安堵する。
完全にバカ飼い主だ。
かわいい猫は、人をバカにしてしまう。



本物のパズルはというと夫を中心に進められ、銀山温泉がだいぶ見えてきた。
マコがどこからか机のパズルに飛んでくる、通称「マコチャンス」は、3回に渡って突然起こり、狙ったようなタイミングでとても盛り上がった。
それは、すごく難しい黒中心の闇夜の雪部分がやっと完成した後とか、一区切りしてトイレに立った時などに起こる。
マコはよくわかっている。

私たちは、パズルを壊してほしくないという思いと、一緒に盛り上がりたいから飛んできてほしい、という矛盾した気持ちを抱えながらパズルを組み立てる。
マコが破壊する範囲は以前よりも拡大し、大きくなった猫さんらしく、ズザァッと派手にパズルをかっさらっていく。
その度に「ワー!!」とか「マコー!!」とか声が上がるものだから、マコはいいことをしたのか、悪いことをしたのかわからないような顔をしてそばにいた。
完成後は、マコに派手に壊してもらって、動画でバズることを思いつき、「マコ、ここに向かって飛んで」などと指示したが、そんな時に限って地味な壊し方をした。



今年もきっと、こんな平凡な日常が続いていくのだろう。
マコがいて幸せだ。

来年も、正月はマコと一緒にパズルをしよう。
毎年しよう。
もう旅行なんて、行かなくていい。
憧れの銀山温泉は、ずっとパズルのままでいい。

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