石巻市立病院

石巻市立病院の今の院長は消化器外科出身の人です。その前の伊勢秀雄氏も消化器外科。昔からあそこは消化器が強い病院として知られていました。逆に言うと、消化器以外はちょっと、と言うのが医者が覧る石巻市立病院のイメージだったんです。



しかし今石巻市立病院の公式HPで常勤医の紹介を覧ると、副院長は日本循環器学会認定循環器専門医、診療部長は内科認定医って言うんですが、実は内科認定医は標榜することを認められていません。私も内科認定医ですが、標榜していない。何故なら内科認定医は標榜が認められていないから。内科認定医というのは要するに、「フツーの内科医」ということです。内科で標榜が認められているのは内科専門医、総合内科専門医で、内科認定医って公式HPで出せないはずの資格です。つまり診療部長は「標榜が許されない資格しか持っておらず、しかも標榜が許されない資格を市立病院というものがHPで堂々と詠っている」という御仁です。



副診療部長は消化器内視鏡専門医です。石巻市立病院が消化器中心だった頃の名残を引く人でしょう。



そのあと、循環器(心臓病)関係の常勤医が部長で二人、医長で一人いますが、医長で循環器の人は認定内科医しか資格がないから、診療部長同様「標榜が許されない資格をHPで標榜している人」です。



仰天するのは、まだ若い一人の部長が心臓血管外科専門医なのに、専門分野が「内科、在宅医療」ってことです。心臓血管外科専門医って、「ガチの専門医」の筈です。心臓バイパス手術とか、心臓の人工弁埋め込みとか言うのをやるんですから。普通なら心臓血管外科専門医はまさに心臓手術に専念しているはずです。プロ中のプロなんだから。なんでその人が「内科・在宅医療」をやってるんでしょう???



医長が他に二人いますが、一人は日本プライマリ・ケア連合学会家庭医療専門医。この専門医は「私は専門医じゃないです」と言っているのとほぼ同じです。家庭医療って、まさに地域の開業医のお仕事です。私みたいな「漢方以外は何でも屋でございます」の「何でも屋」が「家庭医」。だから家庭医療専門医ってのは要するに専門医じゃ無いと言っているのと同じ。もう一人の医長は内科と在宅医療をやるそうですが、専門医は何も記載がない。



呼吸器科医は一人もいません。



こうしてみると、今石の巻市立病院の内科常勤医で一番多いのは循環器関連の医者で3名、と言うことのようです。すると石巻市立病院は循環器(心臓疾患)の診断治療に優れているのでしょうか?



同じ石巻市立病院の公式HPに「循環器内科診療実績」と言うのが掲載されています。これは2016年から2021年までの市立病院における循環器医療のデータが示されています。それを観ると、心カテ、つまり心臓カテーテル件数は2016年に30件でした。2018年には177件に増えた。ところが翌年から減っていきます。年々減って、2021年には87件にまで減ってしまいます。そしてこの診療実績は2021年までで、2022年以上のデータはここには載っていません。内科常勤医で一番多いのが循環器系の3名でありながら、心臓カテーテル件数は2018年をピークに減少を続け、2022年以降はデータ自体発表されていない。



じゃあこの医者達は何をやっているのか、と言うと、どうも在宅医療に力を入れているようです。常勤医のうち専門分野に「在宅」を挙げている医者が4人で最多です。そのうちの一人はあの「心臓血管外科専門医なのに専門が内科と在宅」という方です。



えーと。



市立病院というものは、そもそも在宅を中心にするべきじゃない。在宅医療というのは私のあゆみ野クリニックもやっていますが、在宅専門のクリニックというのも石巻にはあるし、あゆみ野クリニックのように普通のクリニックだけど在宅診療もやってますという所もある。つまりクリニック、医院のお仕事です。市立病院はそういう町のクリニックのバックヤードであるべきなんじゃないですか?外来の患者、在宅診療の患者でクリニックの開業医が「これはちょっとやばいな、きちんと検査が必要だ、入院が必要だ」と判断したとき引き受けるのが市立病院というものでしょう。私何か難しいこと言ってます?普通の常識を申し上げてるつもりなんですが。



市立病院そのものの診療のメインが在宅医療だということ自体が、そもそも間違ってます。在宅医療は町医者の仕事。その町医者が訪問して「これはやばい」と覧たときに引き受けるのが市立病院の仕事。普通に、常識的に、そうじゃないでしょうか。



それなのに、せっかく循環器の医者を三人常勤医として雇用していながら循環器の成績は2018年以上減っていき、2022年からは実績すら公表されなくなり、心臓外科専門医の資格を持つ医者が在宅を主にやっている。そしてたかだか「気胸疑い」とか「尿路結石です」という程度の患者を「専門医がいません」と言って断る。



まさに「摩訶不思議」であります。こういう市立病院って、ちょっと他では聞いたことが無い。循環器科医が最多で、しかもそのうちの一人は心臓血管外科専門医であるにもかかわらず、市立病院というものが本来やるべき診療をやらずに診療の中心が在宅・・・。



私は1990年に医者になりましたので、もう34年医者をやっていますが、こんな不思議な「市立病院」を覧たことがないです。石巻の方々は市立病院と言えば石巻市立病院を思い浮かべるでしょうから「市立病院というのはあんなもの」と思っていらっしゃるかも知れませんが、色々なところで働いてきた私という医者に言わせれば、「こんな奇妙な市立病院はない」。


石巻市立病院及びその設立者である石巻市長は、そもそも「市立病院とは何か、市立病院とはどういう医療を果たすべき病院なのか」を翌々胸に手を当てて、0から考え直していただきたい。

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