トントントン 今日も執事のロイが私のところにやってきた。 「ジュリエット様、おはようございます。朝食をお持ちしました。」 「はーい。」 「本日はりんごジュースとオレンジジュースどちらになさいますか。」 「うーん、今日はりんご。」 ロイが優しくしてくれるから、パパやママが私に構ってくれなくても平気。それにうちはお金持ちだから欲しいものは手に入る。この世界は最高。 トントントン 「ゆきえー!朝ごはん、早く食べなさい。」 ゆきえの母、あきこは部屋の扉を開けた。 「ちょっと、
美幸へ 手紙ありがとう。驚いたよ。 火星への交通手段確立プロジェクト、かなり遅れてしまったけどやっと目処がついてきたよ。 あの時、君のことも仕事のことも諦めたくない我儘な僕に、火星に行くことを許してくれてありがとう。妻として大変な決断をさせてしまったね。「3年で戻る」と約束したのに、君の手紙を読むまで6年も経ったことを実感できていなかった。ごめん。 使えるのはもう少し先だけど、地球と火星の往復券を贈ります。2枚分。何もしてあげられなかった僕からのせめてものプレゼント
「○×△×卍○(よし、いよいよあの青い星に出発だ。)」 「(綺麗な星。目的地は青い部分だ。やっぱり怖いなあ。)」 「(何言っているんだ、兄さん、ほとんど、青い部分なんだし大丈夫だよ。それにじいちゃん達の代から何度も実験を繰り返してやっとあの星にいけるんだ。)」 「(ああ、そうだな。さあ、行こう!)」 ずんどどどどー 「なんだあれ!?」 「飛行機か。いや、違う、UFOか?想像と形が違うな。」 「行っちゃた。動画は撮ったけど、隕石かなんかか?」 その日のSNSはこの謎の飛行物
「好きで良かった。」 舞台で温かい拍手の中にいた。気付いたら特別賞をもらっていた。 英才教育の一つとしてピアノを始めた。先生は毎週、私と同じくらいの男の子を連れて家に教えに来てくれた。多くの習い事の中でも楽しくて仕方がなかった。 そんなある日、母が「ピアノ上手にならないから、やめさせようかな」と先生に言っているのが聞こえた。 「やだ!」と言いたかったが、演奏中の母の表情を見ていれば、子供ながらに下手なんだとわからされていた。 何もできず、ピアノ椅子に座ったその時。 「好きな
とある街の名探偵の取材。その名探偵はいつも一人誰かを引き連れ、2人で事件を解明しているらしい。 「名探偵」、「2人組」・・・まるでホームズとワトソンだ。 そこにどんな関係があるのか、お互いにどんな役割で事件を解明しているのか。取材中は先入観は持たないと決めている私の心構えは完全に砕かれ、小説のような世界観へのワクワクが抑えきれずにいた。 「えっ、もう一人の方は変わっているのですか?」 勝手に世界観に浸っていた私にワトソンがコロコロ変わるという、全くワトソンとは例えられな