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美しきTKG

奴はいつも、突然やってくる。

奴からの声が聞こえる。「TKG!!」「TKG!!」「TKG!!」「TKG!!」

来た。

冷えた洞窟の中から、が、少しずつ近づいてきた。

「TKG!!」「TKG!!」「TKG!!」「TKG!!」


水晶のようなベールをまとい、軽やかな立ち振る舞いをする。

私の椀に来るときも、全く無駄な動きがない。摩擦を超越した、なめらかなダンスをする。

黄金に輝くその身なりは、何よりも美しく、より一層、ベールを際立たせる。

奴の、黄金に輝くその体はこの世の全てである。太陽なのだ。

ゆっくりとベールを脱ぐ。

気がつくと、もうすでに奴は、私たち日本人が愛するGOHANの上に鎮座している。

美しい。

釈迦如来のごとく、奴はGOHANの真ん中の、凹みに光をまとって、座っているのだ。

気がつくと私はTKG用の醤油を持っていた。

そして、美しく解き放たれた、太陽の光へと、覆いかぶさる雲の如く、醤油をKAKERU。

じわりじわり広がる醤油をじっくりと眺める。

既に奴は私を征服している。奴しか見えなくなっていた。

私は手を合わせて、いただきます(TKG!!)と唱和した。

奴は私の箸を、プルプルと体をダンスさせながら待っている。

ゆっくりと私は黄の表面に箸をそっと乗せた。

プつん。と音にならない音がなる。箸が吸い込まれる。

ゆっくりと私の箸は、黄の中へと埋没していくのだ。

スーッと入り込む箸。

ハムナプトラのピラミッドに隠されていた財宝のように、じわーっと滑らかな黄金が垂れ流れてくる。

美しいの一言で表せられない全てが、私の目の前にあるのだ。

そしてGOHANと融合した黄金は、私の五感を全て支配した。

ゆっくりと重たくなったGOHANを持ち上げ、私の口に運ぶ。

「TKG!!」「TKG!!」「TKG!!」「TKG!!」


気がつくと私は、神光を浴びて、空へと舞い上がる寸前まできていた。

黄金の世界が私の中に広がった。

奴が放つ、旨味。とろとろの黄色が放つ味わい。奥行きのあるとろみ。優しさ。甘くない甘さ。人間が欲する脂肪を超越した存在。さらに、神の領域にある味わいが、GOHANと融合することによって現実となるのだ。

奴はカツオぶしをかけて、少しばかりの塩分を足すことも許す。こちらをもてあそぶかのように。

やがて奴は全てのGOHANに溶け込んだ。

私は、追い醤油をする。そうすることで、辛味が増し、また違った顔を見せる。

ふと気がつくと奴は姿を消していた。

そう。全てが私と融合していたのだ。

私は、奴がいた場所にそっと目をやる。

奴のいた名残が残っている。私は全てを与えてくれた奴に感謝の言葉を贈った。

ごちそうさまでした。

TAMAGOという名の、は、次なる場所を目指し、あなたの目の前に姿を現す。

美しきTKG(TAMAGO KAKE GOHAN)となって。




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