見出し画像

2017年によく読まれた記事7つ。

2017年も最終日となりました。一年間のご愛読ありがとうございました。この一年間でnoteの記事は累積で147,495回読まれました。ビューの多い順に並べたのが次の表です。今回は、この中からよく読まれた記事を選んで再録したいと思います。

1) どんなときに「やる気」が起こるのか。

勉強でも仕事でもスポーツでも、努力を必要とすることをしようと思うとき、どんな条件がそろうと「やる気(Motivation)」が起こるのでしょうか。

これがわかれば「あー、なんかやる気出ないなー」と言って、自分がやらなければいけないことになかなか手をつけられないこともなくなるでしょう。また、人に教えたり、指導する場合に、相手のやる気をうまく引き出すことができるでしょう。

ケラー(John M. Keller)は学習者のやる気が高まる条件を「ARCS動機づけモデル(ARCS Motivational model)」として提唱しています。それは、以下の4つの条件によって学習動機を高めることができるというものです(ケラー『学習意欲をデザインする』)。

A. (Attention 注意)
 自分の好奇心が、今持っている知識とのギャップによって刺激されたとき
R. (Relevance 関連性)
 学ぶべき知識が、自分のゴールに関連性があることに気づいたとき
C. (Confidence 自信)
 マスターすべき課題の達成がうまくできそうだと思うとき
S. (Satisfaction 満足)
 これをやれば満足な結果が生まれそうだと予想できるとき

これを応用すれば、教えたり指導する人が相手にやる気を持って欲しいときに、どのようにアピールすればいいかがわかります。それは、次のような方法です。

A. 相手の知識とギャップのあることをデモンストレーションして好奇心を喚起する
R. これから学ぶことが相手の個人的目標にも十分関係があることを説明する
C. これから取り組んでいく課題は相手にも十分達成できるものであることをいう
S. このコースが終えるとその後どのようないいことが起こるかを説明する

教えたり指導したりすることを仕事にしている人は、第一回目に、この4つのことを十分説明するべきです。そうすれば相手のやる気を引き出して良いスタートを切ることができます。ARCS動機づけモデルを知っていると、自分のやる気を出そうと思うときにも、相手のやる気を引き出したいと思うときにも、効果的な方法を思いつくことができるでしょう。

2) きちんと学ぶには大学院へ行くしか勉強方法はないでしょうか?

質問が来ていますのでお答えしたいと思います。

Q#09 きちんと学ぶには大学院へ行くしか勉強方法はないでしょうか?

コメント欄からの質問です。このときの記事は「【本】市川尚・根本淳子編著『インストラクショナルデザインの道具箱101』」でしたので、「インストラクショナルデザインを学ぶには大学院か?」という文脈での質問と思います。

ここでは「どんな専門であっても何かをきちんと学ぶにはどんな方法があるか」について答えたいと思います。これは特に社会人となっている人が、何かを専門としてきちんと学ぶ必要性がこれからますます大きくなっていくということが予測されますので、重要な課題です。

その方法は以下のようなものが考えられます。

 1. 大学院に行く
 2. 大学エクステンションに行く
 3. 自学する
 4. 研究会に入る、あるいは作る

順に説明していきます。

まず、大学院に入学して学ぶ方法です。欠点は学費が高額なことと、通学が必要なことと、必ずしも直接必要ではない科目も取らなくてはならないことです。もし通信制大学院であれば、学費は安価になり、通学も最小限に抑えられます。

注意する点は、まず師事したいと思えるような教員を探すことです。それが見つかってから、その教員が所属している大学院を目指すようにすれば間違いがありません。大学院に入ってから師事したい教員を見つけるのでは遅いと思います。

2番目として、大学エクステンションに行く方法があります。たいていの大学ではエクステンションセンターを持っていて、さまざまな科目のコースを開いています。その科目は、趣味的なものやビジネス的なものも入っていますが、専門的なものの入門コースもあります。そのコースが自分のニーズに合ったものであれば通う価値があるでしょう。

3番目は、自学するということです。一人で勉強を進めるというのは強い意志力が必要です。しかし現代は自学しようとする人への環境は整っているのです。荒木優太の『これからのエリック・ホッファーのために:在野研究者の生と心得』という本を読むと、独立した研究者になるための道のりが書いてあります。大学の研究者との付き合い方も書いてありますので参考になります。

4番目は、研究会に入る、あるいは自分で作ることです。自学するときの危険は独りよがりになってしまうことです。同じ指向性を持った仲間を募り、研究会を作ることができれば、その中で議論しながら成長することができるでしょう。そのような研究会があれば、探して入ることです。あわなければやめればいいのです。あるいは自分で研究会をおこすのもいいでしょう。気軽に始めることです。

最後におまけで書いておきます。

私が今、仲間と企画を考えているものとして「おとな学部」があります。比較的短期間に特定のトピックについて学び、その証拠としてナノディグリー(小さな学位)を出すというものです。インターネットでビデオ配信をして、オンラインで議論をしながら学習を進めていきます。(注)これは実現しました。こちらをご参照ください

これはMOOCs(Massive Open Online Courses, 大規模オープンオンライン講座)に対して、SPOCs(Small Private Online Courses, 小規模プライベートオンライン講座)と呼ばれているeラーニングの形態です。ファシリテーターを入れて小規模な学習コミュニティを形成できるように工夫するところがMOOCsとは違うところです。

3) 自立とは依存先を増やすこと。

先日あった授業は、1つのテーマについて3人の先生が話題提供してディスカッションするという形式で行われました。テーマは「デザイン」ということで、3人のうちの古山宣洋先生は「認知科学におけるデザイン」について話をしました。

そのイントロで「自立とは依存先を増やすこと」ということを言いました。これはどういうことかというと、自立するということは単になんでも一人でできるようになることではなくて、さまざまな依存先を増やすことだというのです。

逆に、依存するということは依存の先が限定されるということです。「ウオノメ」ができるのは、足の裏のどこか一箇所に依存しすぎているということです。一箇所に限定して依存すると、そこが硬くなります。そうするとますますそこに依存してしまう。そうしてウオノメが固定化するということになります。

なんらかの工夫をして足の裏を広く使えるようにすると、ウオノメがだんだん消えていきます。足の裏を広く使うことで、自立できるのです。

自立するということはさまざまなリソースを利用できること、と言い換えることもできるでしょう。全部を自分一人でやるのではなく、さまざまな人や道具のリソースを頼ること。このことは人が不完全な存在である限り、必要なことなのです。そして、信頼できるリソースを広げていくことこそが自立するということなのです。

4) どのページを開いてもきっと勇気を持って行動するきっかけにつながるでしょう。

2月1日に小学館新書より『幸せな劣等感』が発売されます。アマゾンでも書影が出ました。タイトルには「劣等感」と入っていますが、内容はアドラー心理学の中心概念である「共同体感覚」に真正面から取り組んだものです。

Kindleでも購入できます。上記のページからKindle版を選んでください。配信は2月7日からとなっています。

このサイトでは新書の試し読みができます。目次も載っています。どうぞご利用ください。

章立ては以下のようになっています。

第1章 よりよく生きるための心理学
第2章 「生きる」を科学する
第3章 自分自身を受け入れるという冒険――自己受容
第4章 自分が生きてきた道を再発見する冒険――ライフスタイル
第5章 自分の居場所を見つける冒険――所属
第6章 まわりに任せてみる冒険――信頼
第7章 人の役に立ってみる冒険――貢献
第8章 アドラー心理学を実践する
終 章 生きることの科学

「はじめに」を読んでいただくとわかりますが、この本のキャッチフレーズは「マイ・アドラーをポケットに」です。人生のさまざまな局面にぶつかったとき、一息ついて、この本をポケットから取り出して、どのページでもいいので開いて読んで欲しいのですね。どのページを開いてもきっと勇気を持って行動するきっかけにつながるでしょう。

そんな願いを込めてこの本を書きました。たくさんの人に読んで欲しいと思っています。

5) マウンティング女子やマウンティング男子に声をかけてあげたくなる。

最近、「マウンティング女子」というのが流行っているらしい。「私の方が格が上」ということを、様々な方法で相手に知らせようとする行動だ。

マウンティング女子の心理特徴6つと上手に付き合う対処法」という記事を読むと、マウンティングにはいろいろなパターンがあるらしい。こんな感じだ。

・人にアドバイスをしたがるカウンセラー型
・自分に自信たっぷりなプロデューサー型
・「私って全然可愛くないし…」と言いつつ自慢する自虐型タイプ
・自分が会話の中心じゃないと気が済まないタイプ
・思った事はそのまま言う自称サバサバ系タイプ
・誰も得をしない自称毒舌系マウンティング

マウンティングは、女子だけでなく男子にもあって、「マウンティング男子」と呼ばれているらしい。

女子より深刻…! 飲食店で見かける「マウンティング男子」の切なさ」という記事を読むと、マウンティング男子の方が、マウンティング女子よりも格段にわかりやすい。

要するに、「オレの方が知識がある」とか「オレの方が年収が高い」とか「オレの方が趣味がいい」と言い張るわけだ。上であげたマウンティング女子の複雑な行動パターンと比較すると、単純でわかりやすいね。

さてこの「マウンティング」は、アドラー心理学で言うところの「優越コンプレックス(superiority complex)」ですね。そして、優越コンプレックスは「劣等コンプレックスの裏返し」となっております。つまりマウンティングする人は、自分の劣等コンプレックスに悩んでいて、それをなんとかしようと思ってマウンティングをしてしまうというわけです。

そう思って、マウンティング女子やマウンティング男子を見ると「まあ色々大変だけどがんばっていきましょうよ」と声をかけてあげたくなってしまうのですね。

6) 「気づき」は使用禁止。

個人的には、次のようなフレーズは使用禁止にしたい。

・「気づき」「気づかされた」「深い気づきがあった」
・「学び」「学びがあった」
・「興味深い」「興味深いものだった」

これらのフレーズを使うのであれば「どこがどうそうだったのか」ということをコトバにしよう。

気づいたのであれば、どこをどう気づいたのか。
学んだのであれば、どういうことをどう学んだのか。
興味深いのであれば、どこがどう興味深かったのか。

たくさんあって、表現しにくいのであれば、その中の1つだけをコトバにしてみよう。そうすれば、あなたの気づきを読者と共有することができるだろう。

7) ブログに限らずどんな文章でも書いた瞬間に報われているのです。

ブログは何のために書いているのでしょうか。

ひとつは、自分でもよくわかっていないことを自分のために書くということがあります。自己中心的な目的のためです。

もうひとつは、自分がよくわかっていると思っていることを、読者に伝えるために書くということがあります。いわばサービスです。

もちろんたいていのエントリーは、自分のためでもあり、読者のためでもあり、その中間のどこかに位置するものになります。

読者に伝えるために書こうと思って書き出したものであっても、書いていくうちに自分がよくわかっていない部分が出てきたりします。そうするとやはり自分はよくわかっていなかったのだなあということがわかります。となると、最終的には、よくわかっていない部分を発見することで自分のためになることになります。

ということでブログを書くということは、とことん利己的で自己中心的な利益のために書いていると、私の場合は、なりますね。あくまでも自分のため。自分が書きたいからそうするし、そうすることが将来の自分にとって何らかの利益をもたらすだろうということを期待して書きます。実際、その期待は果たされることが多いのです。

中原淳さんもブログの中で「出して「損はしない」んだよ」と言っています。

ブログ歴20年の私もそう思いますね。

そうなんです。ブログに限らずどんな文章でも「書いた瞬間に報われている」。書いた瞬間に元は取れているのです。もし書かなければ、それだけです。損も得もしない。

しかし書けば必ず得をします。いつの日にか。いつ、得という形になるかはわかりません。しかしいつか形となってあなた自身に返ってくるでしょう。私自身を作っているものは、自分自身が書いてきたものなのです。私が書いた文章が私自身を作っているのです。文章を書くということは、私を作ることなのです。書くことは私が生きている意味を与えてくれるのです。

以上2017年によく読まれたnote記事7つでした。ではみなさま良いお年を。2018年も引き続きご愛読いただければ幸いです。

ここから先は

0字
この記事のみ ¥ 100

ご愛読ありがとうございます。もしお気に召しましたらマガジン「ちはるのファーストコンタクト」をご購読ください(月500円)。また、メンバーシップではマガジン購読に加え、掲示板に短い記事を投稿していますのでお得です(月300円)。記事は一週間は全文無料公開しています。