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(140) 2年間の卒論ゼミのコースデザイン

2021年6月10日(木)

私が所属している人間科学部では、卒業研究をして卒業論文を書くことが必修となっています。3年次と4年次の2年の間、特定のゼミに所属して卒業研究を進めていきます。

卒業研究/卒業論文が必修ではない大学、学部もあります。しかし、必修でなくても可能であれば卒業論文(以下、卒論)を書くことをお勧めしたいです。なぜなら、卒論を書く機会は大学時代しかないからです。2年間をかけて、自分の研究テーマを決めて、文献を読み、データをとり、分析をして、文章を書いていく。そのような機会は、人生で最初で最後のことです。それは体験する価値のあることだと思います。

・卒論ゼミで何をどのようにトレーニングしているかはあまり公開されていない

このように価値のある体験である卒論ゼミではあるものの、実際にそこで何が行われているかはあまり公開されていません。もちろん、大学が公開しているシラバスを読めば、何をやっているかはわかります。しかし、実際のところ、どんなスキルがどんな形でトレーニングされているのかはわかりません。

「◯◯学入門」のような講義主体の授業であれば、授業参観を一回させてもらえれば、どのようなものかはわかります。しかし、卒論ゼミのように、少人数で2年間にわたって継続的に開かれるゼミでは、その中で何が行われているのかを見にいく機会はほとんどありません。

いろいろな学部で、いろいろな専門領域の教員がそれぞれの卒論ゼミを開いています。教育がゼミを運営する方法もまたさまざまです。ひたすら専門書の輪読をやるゼミもあれば、教員が決めた手順にしたがって実験をしてデータをとるゼミもあります。TAや大学院生がゼミを仕切っている場合もあります。

つまるところ、ゼミの運営の仕方はどれが正統的、あるいは標準的というものはなくて、それぞれの教員が好きなようにやっているというのが現状です。毎年、10月くらいになるとデータをとるためにあわてている卒論生をみかけます。3年生ではありません。4年生です。12月末には、卒論を仕上げていなくてはならないというのに、10月から(ひどいケースでは11月末くらいから)データをとるというのは、圧倒的に間に合っていません。卒論の「一夜漬け」と言ってもいいくらいです。

最低でも2万字(私のゼミでは5万字以上)を書かなくてはいけない卒論を1、2ヶ月で仕上げようというのは賭けに近いものがあります。一言でいえば、同じ卒論といってもピンキリなのです。

・2年間にわたる卒論ゼミのトレーニング

私の卒論ゼミはどうかというと、この2年間を可能な限り意味のあるトレーニングにしたいと考えて試行錯誤を繰り返してきました。2010年くらいまでに、卒論のコース内容をテキストにしたものを作りました。

それは、半構造化面接(インタビュー)と質問紙調査(アンケート)と実験計画法の3つを基本的な研究スキルとして身につけるものでした。そのテキストは、次の記事からダウンロードすることができます。

・インストラクショナルデザイン研究法(2010)
・卒業研究はじめの一歩(2010)

その後、実験計画法(介入実験)は、卒論のテーマによっては実施することが難しいケースも出てきましたので、インタビューとアンケートを組み合わせた形でトレーニングコースを確立しました。この組み合わせは、混合研究法のパターンの1つになっているので、割といいのではないかと自負しています。

・2021年度からテキストマイニングを追加した

この2021年度からは、アンケートの自由記述データを使ったテキストマイニングを追加しました。テキストマイニングは企業でもマーケティングなどのリサーチで応用される可能性が高いので、卒業してからも役に立つのではないかと考えています。

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