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【研究】大学生の基礎リテラシーとしての言語表現教育

2024年9月6日(金)

金曜日は研究の話題で書いています。

現在の大学ではどこでも初年次教育を実施することが当たり前になりました。しかし、1990年代では、1991年の大学設置基準改定により、教養部が解体される中、初年次教育をどのように運営していくかという試みが手探りの中で行われていました。

私は1990年に富山大学教育学部で大学教員の仕事を始めました。それからまもなくして1993年度から、富山大学では全学部で、「情報処理」と「言語表現」という科目を教養科目の必修として開講しました。そうした中で、私は自分の専門領域とは別に、言語表現という科目を担当し、その全学的な運営にも携わりました。

「書く」という行為は、私自身の興味の中心でした。この言語表現という授業の中でそれを追求し、実践していくことができました。そのまとめとして書いたのが次の論文です。

向後 千春(2000)大学生の基礎リテラシーとしての言語表現教育, コンピュータ&エデュケーション, 9 巻 p. 48-53

抄録

富山大学で行われている教養科目のひとつ、「言語表現」について報告する。言語表現が開設されるまでの背景と必要性、現在までの実施状況を記述し、さらにその問題点について議論する。言語表現が情報処理科目との選択になっていることは、大学生のリテラシー教育として不十分であり、それを解決するために、言語表現と情報処理を統合し、電子時代のリテラシー教育として再編成することを提案する。また、実施上の工夫として、モジュール化された3回程度の授業を多数開講し、その中から学生が自分に必要なものを選んで履修していくという方法を提案する。


この論文では「書く」ことのトレーニングの重要性を次のように主張しています。

大学に入学すると、学生の仕事は、高校までの客観テスト中心から変わり、レポートや記述式テスト、また卒業論文といったように、書くことが中心になる。また、ゼミでの発表や、卒業研究の発表会などのように、人前で話し、プレゼンテーションする機会も増えてくる。そして、その時になって学生も教員も気がつくことは、書けない、話せない、ということである。次に気がつくことは、今までにこうした種類の文章の書き方も、こうした発表の場での話し方も、習ってこなかったことである。

富山大学での実践は、私が早稲田大学人間科学部に移ったあとでも、引き継がれました。eスクールでの初年次教育である「スタディスキル」には、富山大学の言語表現科目の授業運営で培われた内容が盛り込まれています。

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