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025 [教える技術] すべての学習は文脈の学習に向かう:ベイトソンの「学習の型」

技能を運動技能、認知技能、態度技能に分類すると、それぞれを教えるためには心理学理論の土台があります。それは、運動技能には行動分析学、認知技能には認知心理学、態度技能には自己調整スキルと社会情動的スキルに関する心理学的研究(これには何か適切な名称がつけられるでしょう)です。

21世紀には、とりわけ態度技能の研究が進んでいくでしょう。しかしその萌芽的な研究は20世紀後半にはすでに提示されていました。今回は、グレゴリー・ベイトソン(1904-1980)の「学習の型」という考え方を紹介します。

・単発のスキルではなくそれをどの文脈で使うのかを学ぶことが重要

ベイトソンは学習の型として4つの段階を考えました。

ひとつ目は「ゼロ学習」です。特定の刺激(S)があるときに決まった反応(R)をすることです。特定のSに対して特定のRをするまでは学習が起こります。しかし、一度決まってしまって変化がなければ「ゼロ学習」であり学習は起こっていません。ルーチン化した作業は一定のものであり、そこでは学習は起こっていません。

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それに対して、特定の刺激があるときに、ある反応をして、それに対するフィードバック(FB)があり、それによって反応が変わっていくときに学習が起こります。それを「学習1 (proto-learning)」と呼びます。たとえば、テニスのフォアハンドストロークを練習していて、打つたびにうまく打てたり、打てなかったりします。そのこと自身がフィードバックとなり、だんだんと打ち方が上達して行きます。そのとき「学習1」が起こっています。

・「学習2」は文脈の学習

フォアハンドストロークのさまざまなバリエーション、たとえば普通のストロークから、トップスピンをかけたり、スライスをかけたりするように学習1が進んでいくと、今度は試合中のどんな場面でどのような種類のフォアハンドストロークを打つかということを学んでいきます。それを「学習2 (deutero-learning)」と呼びます。これは文脈の学習とも呼べます。

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