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(117) 4月からスタートする「教える技術オンライン研究会」の内容を企画する

2021年2月21日(日)

教える技術オンライン研究会を1年間にわたってZoomで開いてきました。次回の3月の開催で2020年度の研究会は完結となります。月一回のペースで開催できたことに参加者の皆さんに感謝したいです。

コロナ禍の中でできることは何かと考えて、オンライン研究会を開いたことで、逆に新しい可能性を見出すことができたと思っています。この一年を振り返ってみると、毎回そこそこの人数が集まって濃い議論ができたことが楽しかったです。また、教える技術とインストラクショナルデザインの知見が、色々な領域で必要とされているし、また役に立つということが実感できました。参加者も日本だけではなく、海外からも参加していただいて、その広がりを感じることができました。

これに勇気を得て、2021年4月からの新しいシーズンを企画しています。2021年度はちょっとスローダウンして、隔月開催で1年間で6回の開催となる予定です。その内容を次のように企画しています。

・取り上げた研究トピックと研究スキル

この研究会の特徴は、勉強会でもあるところです。毎回、インストラクショナルデザインの研究トピックと研究スキルを取り上げて、勉強してきました。

取り上げた研究トピックは以下のようです。

・ICEモデル
・心理的安全性
・限界的練習 Deliberate Practice
・動機づけ研究の中におけるエンゲージメント
・対面とオンラインでの授業設計(実例による検討)
・21世紀に何をどう教えるべきか?

そして、取り上げた研究スキルは以下のようです。

・研究のネタをどう見つけるか
・概念/変数/測定をどう設定するか
・統計手法とその使い方をざっくりと
・尺度を使った事前・事後・フォローアップ調査
・良いリサーチクエスチョンを立てるためには
・心理尺度と自由記述を組み合わせる
・混合研究法

上のリストを見ると、どれも面白そうと思われることでしょう。とはいえ、ちょっとあちこちに飛びすぎたという反省はあります。トピックの選定には、その時々の参加者からのリクエストと私の関心の向き方に影響を受けていましたので。

・研究トピックは『インストラクショナルデザインの道具箱101』から

2021年度の研究会では、鈴木克明・市川尚・根本淳子『インストラクショナルデザインの道具箱101』(北大路書房, 2016)から、理論的な枠組を選んで取り上げていこうと考えています。

この本は、インストラクショナルデザインをどんな領域に応用するときでも重要な理論的枠組を取り揃えています。その中からさらにトピックを選んでいけば、インストラクショナルデザインの全体像をつかむことができそうです。

このことによって、インストラクショナルデザインの入門者であってもうまく研究会に馴染んでいけるのではないかと思います。

実は、2020年度は、ライゲルース他『インストラクショナルデザイン理論とモデル』(北大路書房, 2020)を取り上げて、いくつかの章を読んでいったのです。しかし、この本は、インストラクショナルデザインの前提知識がかなり必要という意味で少し難しすぎました。その点で、『道具箱』はとっつきやすいと思います。

・研究スキルを(少し)体系的に取り上げていく

次に、インストラクショナルデザインの研究者として必要な研究スキルを、少し体系的に取り上げていきたいと考えています。これによって、複雑な現場の中で試行錯誤している研究者に役に立つ研究スキルを提示できたらいいと思います。

具体的には、現場の観察とリサーチクエスチョンの立て方から始めて、質的研究法と量的研究法を通過して、混合研究法やデザイン研究法に至ることができたらいいなと思っています。

まあ、これを6回の研究会でやるのはかなり無理っぽいですけれども、レクチャーをするというよりは、参加者自身の具体的な問題を取り上げて、そこに適用できるような研究方法を考えていくということで、具体的にかつ実践的に学ぶことができるのではないかと目論んでいます。

・ワークも大事

そんなわけで、せっかくZoomでリアルタイムで参加しているのですから、その中で行うワークも大切だなあという気がしています。研究スキルを身につけるために、自分のケースに当てはめて考えていくというワークができればいいなと思います。

・何より大切なのは雑談と相談

そして何より大切なのは雑談と相談です。研究会は授業や講演ではありません。参加者同士の結びつきが最終成果だと考えています。1年間のオンライン研究会をやってみて、少しずつ参加者同士の結びつきができてきたかなということを感じました。そしてこれが何よりの収穫なのだということもわかりました。

参加者同士の結びつきは、なんということのない雑談と相談をすることでできていきます。会話の量が決定的な変数だという仮説を持っています。そういう雑談がたくさんできる研究会を目指したいと思います。

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