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(105) 山口周『未来のビジネス』:手段的な社会から自己充足的な社会へ

山口周『未来のビジネス』(プレジデント社, 2020)を読みました。その紹介と感想を書きます。

・要約

人類は物質的不足の解消という問題をほぼ解決し、緩やかに成長率を低下させて「高原社会」に入りつつある。無限の上昇・拡大・成長という強迫から解放された社会を、どのようにして豊かで瑞々しいものにするかが次の課題である。これを解決するためには、未来のために今を犠牲にするというインストゥルメンタル(手段的)な思考・行動様式から、永遠に循環する今を豊かにみずみずしく生き切るというコンサマトリー(自己充足的)な思考・行動様式への転換が必要である。これを実現するためには、社会システムを変えるのではなく、個人が「人間性に根ざした衝動」によって資本主義・市場原理をハックし直すことだ。

・高原社会に入りつつあることの証拠

過去30年間の経済は低調に推移しているにもかかわらず、生活満足度や幸福度は大きく改善している。これは経済をこれ以上成長させることにもはや大きな意味はないことを示唆している。アメリカが発明したGDPという指標に代表される成長というのは一種の宗教である。終身雇用・年功序列は日本企業の伝統ではなく、成長を前提とした高度成長期の社会システムで取り入れられた。これが高原社会になりつつある現代の日本とシステム的な齟齬をきたしている。世界の人口は2100年まで増加し続けるけれども、その増加率は減少している。、世界の人口の増加率のピークは1967年であり、総人口のカーブはS字型のロジスティック曲線に従い、最終的には定常状態に至る。

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