4-お勧めの本

【本】2017年8月に取り上げた5冊

木曜日はお勧めの本を紹介しています。今回は2017年8月に取り上げた本を再録します。
01 佐々木希世『「半径5メートル最適化」仕事術 』:まず同僚との良い人間関係を構築することで成果は上がる
02 渡部昌平(編著)『実践家のためのナラティブ/社会構成主義キャリア・カウンセリング 』:具体的な事例とツールが紹介されている。
03 中村文子、ボブ・パイク『講師・インストラクターハンドブック』:授業・研修を設計実施する人のための具体的なノウハウを提供。
04 八巻秀、深沢孝之、鈴木義也『臨床アドラー心理学のすすめ』:心理臨床にアドラー心理学をどう活かしていくかのパースペクティブを与えてくれる。
05 ルドガー・ブレグマン『隷属なき道』:ベーシックインカム制をエビデンスによって支持する。

01 佐々木希世『「半径5メートル最適化」仕事術 』:まず同僚との良い人間関係を構築することで成果は上がる

■要約

個人が効率的に成果を出すためには、日常的に顔を合わせる数名の同僚との関係をどう作るかということが鍵になる。これを「半径5メートル最適化」と呼び、「楽しい職場」にするためのノウハウを、著者がアメリカ、日本、イタリアで働いた経験からまとめる。

■ポイント

直接会うことは時間も手間もかかるので、普段はメールでいいけれども、10回に1回は足を運んで直接話した方がいい。表情と感情をやり取りすることで、相手の心を動かし、信頼を生み出すことになる。

スモールトーク(他愛のない世間話)をすることで、その人との関係が個人的なものになる。そのことによってその人の担当する仕事が、自分に近いものになり、協力体制を生み出して行く。

「何かできることある?」と声をかけることで、相手は「私は気にかけてもらっている」という安心感を得ることができる。それが精神的な支えになる。

アメリカ式の会議は仕切りが確立していて、アジェンダが決まらない限り開かれない。議事録は「決定事項」、「とるべきアクション」、「決定に影響した重要な意見」という形式で書かれ、アクションを進めようとする。また誰かが「憎まれ役(Devil's advocate)」を引き受けることによってアイデアが鍛えられ、決定やアクションが強固なものになる。

イタリア人は、家族以外にも「ファミリー」という擬似家族を持つ。色々な付き合いの中でさりげなく人物評価をして、話が合うか、価値観は似ているか、信用に足るかという「テスト」を通過すると、ビジネスでもプライベートでもファミリーとして協力を惜しまない関係ができあがる。

「一に健康、二に家族、三に仕事」。ベースになるのは自分の健康だから、そこに投資する。

仕事を通じて誰かの役に立っているという感覚が、やりがいやモチベーションの源になる。企業も「利益・成長優先」から「サステナビリティ・公益経営」に変わりつつある。

02 渡部昌平(編著)『実践家のためのナラティブ/社会構成主義キャリア・カウンセリング 』:具体的な事例とツールが紹介されている。

■要約

ナラティブ/社会構成主義キャリア・カウンセリングの考え方と方法を具体的な事例によって紹介する。関係構築から入り、クライエントのドミナント・ストーリーを脱構築し、カウンセラーとともに共構築していく手順とその時に使えるツールについて知ることができる。

■ポイント

相談者と関係構築をしたあとに、そのドミナント・ストーリーを脱構築していく。ドミナント・ストーリーを詳細に語ってもらうことは、語られないストーリーとしてのオルタナティブ・ストーリーを見つけ出すための前提条件となる。

「私は何者か」という問いからスタートして、過去をさかのぼると「誰々に叱られた」や「よく泣いていた」などのネガティブな記憶が掘り起こされて「ダメな自分」というラベルづけに至る。そこからは「どうせ自分の未来は大したことはない」という認知になってしまう。実際、叱られたり、泣いたりした経験は誰にでもあることで、そこからは何も掘り出すことはできない。

そうではなく、未来をどうしたいのかという問いからスタートして、あってほしい未来を描いてもらう。そうした上で「私は何者か」と問えば、自分が使うことのできる「資源(resource)/資産(assets)」を掘り起こすことができるだろう。

サビカスのキャリア・ストーリー・インタビューも紹介されている。そのハイライトはアドラーの早期回想にあるが、そこでも辛いことや悲しかったことを開示する必要はない。むしろ「幸せな早期回想」がキャリアを考える上で大いなるヒントになる。

アドラーの早期回想からヒントを得ているサビカスのキャリア・カウンセリング理論を知るには、以下の本をお勧めする。


03 中村文子、ボブ・パイク『講師・インストラクターハンドブック』:授業・研修を設計実施する人のための具体的なノウハウを提供。

■要約

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