『月刊 TANCA』

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寸評 -『月刊 TANCA』編集部
やるせない気持ちと、それでも消せない愛情の葛藤が三十一字(みそひともじ)から溢れる素晴らしい作品です。上の句と下の句に分けて解説します。

忘れない キミに誓うと 言った目を
上の句だけでも切ない気持ちが伝わってきますね。なぜ男は平気で嘘をつくのでしょう? 普段使わない「誓う」なんて言葉まで使って、目を潤ませながら……。目的の為には手段を選ばない許せない行為ですよね。そんな静かな怒りの余韻が下の句に繋がります。

信じてたのに なんてバカなの
詠み手は何度も裏切られていることが、四の句の「たのに」から感じられますね。信じてた、というよりは信じたかったに近かったのでしょう。結句の、嘘をついた男と自分へ向けた憐憫の言葉が哀愁を誘います。

短歌って不思議ですね。31文字しかないのに、詠み手が見た情景や心情がリアルに伝わってくるんです。

「日々学習のプリント忘れが多いです。3学期はしっかりやりましょう」通知表に書かれた先生からのメッセージ。詠み手は「家庭学習を自分でしっかりできるように促していきます」とコメントを書いたのですね。3学期初日、ゲームがやりたいと言うお子さん(多分中2ですね)に宿題はやったのか?と聞いたのでしょう。もちろん、と答えゲームを始めた息子さん。行間を読めば、その光景がありありと感じ取れます。

二学期に宿題忘れが頻発して詠み手は激怒しましたね。宿題をしないなら二度とゲームをするな!と。

これからは絶対宿題忘れないから、と目にうっすら涙を浮かべて誓った息子さんを信じてましたよね。そして通知表に書いたコメントは、本人も読んでるわけです。そ・れ・な・の・に! 新学期初日の冬休み宿題忘れ。しかも学区全体で集計する大事なプリントだったらしく、夕飯直前に担任から「明日必ずもたせてください」と電話があれば、詠み手が激昂するのも仕方ありません。これを書きながら一週間前の怒りを思い出してムカムカしているのさえ伝わってきます。

短歌って不思議です
31文字に人生が見えるから



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