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はじめてお辞儀された日のこと

────エッセイ

自分の子どもに、きちんとおじぎされたのはいつ以来だろうと記憶を手繰った。幼い子どもが遊びの延長でやるそれではなく、心を込めたおじぎ。

多分、上の子の二分の一成人式だったと思う。学校の小さなホールに集合して、子どもたちが練習を重ねた寸劇や合奏を聞く。最後に一人ひとりが親への手紙を読む。順番が来て、手紙を読み終えた上の子がぼくと妻に向かっておじぎをした。事前に練習したのかもしれないけど、立派なおじぎができるようになったんだねと嬉しくなった。

いまにしてみれば、友だちの前で手紙を読み上げる必要はないのでは? とも思うけど、当時は成長した子どもの姿を目に焼き付けるので精一杯だった。

おじぎは、無防備な頭を相手に向かって下げ、闘う意志がないことを示す行為が起源らしい。次第に「親愛」や「感謝」など様々な意味が増えたようだ。式典で行われる儀礼的な場面もあるけれど、おじぎにはそのときの心が自然と現れるものだ。

先日、子どもたちにおじぎされる場面があった。二人そろっておじぎされたのは、多分はじめてだと思う。厳粛な雰囲気の中、タイミングを合わせて二人同時に頭を下げたその姿に、グっとくるものがあった。次に子どもたちのおじぎを見るときは、晴れの日でありますように。



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