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藍羽放浪記・・・17ページ目

大蛇は頭が切断されたものの、気がついたら切断された頭部共々どこかへ去って消えてしまった。
倒せたということにはなっていないだろう。

昏睡状態の古雅崎藍羽(こがさき あいは)を店のソファに置いて、恭赤藍羽(うやらか あいは)と小鳥遊夏希(たかなし なつき)は現状の不明瞭な点について話をしていた。

「沢山聞かなきゃいけないことがあるけど…まずは助けてくれて.…ありがとう.…」

「別に助けたわけじゃねぇよ。そろそろ尻尾出してくるだろうなぁと思って待ってたんだよ。」

「そう。もうちょっと早く来てくれたら私も痛い目に遭わなくて済んだのになぁ。」

「だぁーー…めんどくせぇ!これだから人が絡むと厄介なんだ。」

恭赤は頭を抱えて、髪の毛をくしゃくしゃにしながら話す。

「何だよめんどくさいってぇ〜!私だって巻き込まれたくてここにいた訳じゃないんだからそんな言い方しなくてもいいじゃない!」

「そういう事じゃなくてさぁ…悪かった。言い方良くなかったな。」

「あ、いや.…私も皮肉みたいな事言ってごめんね。」


少しの時間、2人を沈黙が包む。
恭赤は考え事をしているようだった。
その沈黙を終わらせるかのように夏希は口を開く


「ところでさ、貴方は?あの人とどういう関係なの?」

「そういえばお互い自己紹介がまだだったな。おれは恭赤藍羽。こいつとは表裏みたいな関係で俺達からしたらこいつは別世界の俺って感じの関係だよ。」

「別世界?なんてものがあるの?」

「パラレルワールドって聞いた事あるか?あれって本当にあるんだよ。」

「ふーん…なんだか不思議な話だね。」

「…お前は自分が自我を持ったと時には今の身長で、今の見た目で、今の思考パターンが出来てたりしなかったか?」

「.…何となく言ってることは分かる。けど、みんなそんなもんなんだろうなと思ってた。」

「やっぱりか…俺達は多分、あいつからの思考から生まれた人間なんだと思う。」

突拍子もないような発言に夏希は目を見開く

「それってどういう…」

「こことは違う別世界。そこでは沢山の人間が色んな物を創作する。物語や世界観。人物そのものを想像する。それがそのまま形になったのがこの世界ってことだ。」

「信じられない…だってそれじゃ私は…」

「そう。遅れたけど、俺は君のことを知っている。古雅崎藍羽とは表裏の関係として生まれた俺は、あいつが作った世界や考え方を全部見ているから。それで言うとお前は、想い人と離れるべくして離れた。という事になる。」

「そんな…そんなの理不尽だよ!」

「そう。別世界のヤツらってのは理不尽で人を別れさせるし人殺しだってなんの罪もなく行う。だってアイツらからしたら「作り物の物語」なのだから。」

「許せない…七月…うぅ…」

夏希は顔を伏せて
泣き出してしまった。

「仕方がないことと割り切るしかない。この世界はそういう風にできているんだから。けど」

「…?」

「けど、あいつの意思さえ何とか出来れば俺達の世界は少し変わるかもしれない。恐らくさっきの蛇はあいつを縛り付けてる何かを具現化したものだと思う。倒したところで何度もあいつの中に生まれて縛り付けてる。」

「そっか…そんな事すら具現化するんだね。この世界は。」

再び、しんとした空気があたりを包む。
淡々と説明を受けた夏希は、ひとつ疑問に思うことがあった。

「私達がこうやって話したり考えてることすら、あの人が考えた事だったりするのかな。」

「.…かもしれないな。」

 

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