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金澤詩人賞2023 『ゆきの』入選(候補作)


2022年の12月から公募や雑誌の投稿を始めました。
前から憧れていた金澤詩人賞の入選(候補作)に選ばれました。
ほんまに嬉しいです(´;ω;`)
ありがとうございます✨
流れる季節の中の短いロードムーヴィー
または 絵本をめくっていくイメージで書きました。
こちら金澤詩人20号 162ページに掲載✨
応募総数3209編から選ばれた素敵な作品がたくさん掲載されています。
https://bach2.sakura.ne.jp/kanashi20  
2024年から氷見詩人賞に名前が変わるとの事。
最後の金澤詩人賞に入選できて嬉しいな。


ゆきの       
 
白い部屋
白いカーテンは幾重にも揺れて
雪はちらちらとさっくり敷かれ
人間や動物の小さい足跡を
カーテンをよけながら辿っていく生き物
その後ろを追いかける
木の音の聴診器を持つ人たちが
眠りを忘れて起きては音を聴く
少しづつ だんだんと
気が付かないテンポで大きくなる
ギャロップのリズムに怯え
色んな何かの足跡
血の跡を見つけて嘆き 音を聴き
見えないように 慈しみ
誰かに伝えて聴いては狼狽し
そっと柔らかい雪をかける
 
深夜の木枯らし
小枝のクロスを作り リボンを飾り
もう知らん顔のふりしてまた進む
 
カーテンは今日も幾重にも揺れて
突風で路の先のさきまで見えては隠れ
目指す 
光 ありますようにと祈り 迷い悩む 
一枚一枚ひらりとくぐる歩む
しみになる水滴のひとひらの邪気に
気づきもしないで 
 
赤い あかいしずく
青い あおいしずく
黒い くろいしずく
 
得体の知れないしずくと
ひらひらのドレス  
真白の深雪 新雪をすくい
そっとかけて全部埋めて消した
ほっと息をつき 
枯れた草の味のする薬を飲む
 
次のカーテンの向こうへ
染まる雪の色を記録する
小さく変わる何かを ずっと
忘れないように
途中 立ち枯れのあじさいに挨拶
長い間 下を向いていて
雨の日の
あなたの花の冠にも気が付かなった
いつのまにか
茶色の枯れた細い指が空を指す季節 
緑のボンボリを順々に宿す
こんなどんな 楽しい出来事もいつか
さよならがくると知る
 
皆で笑った小雪の冷たい日
あの動物園のペンギン池の事
ペンギンのふりをして遠くを見つめて
魚を横取りくわえる
すましたゴイサギの目は虚無で
灰色と紺と白のお召し物だと
皆で笑った日の面影
カーテンに映り
 
得たいの知れない楽しい誰かの
幼生たちは日々ちょこまか舞って
回転しては笑顔になる
全てのカーテンが尽きた後
結晶の形を秘めた
すみれ色の粉を
最後のカーテンの下に
そっとまぶす
淡雪色に反射して
眩しいひかりになった墓標
遠くから新しい誰かを呼ぶ
雪野で

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