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共同親権研究会 総括

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10 「法の欠缺1ないし3」を補う法の立法義務が,国会(国会議員)に認められることについて


(1) 総論
一方配偶者による他方配偶者の同意を得ない子の連れ去り(引き離し)を防ぐために,法の欠缺1ないし3を補う立法(法改正)は必要不可欠であり,その立法義務を国会(国会議員)が負っていることは,以下の点から明白である。
(2) ハーグ条約における「不法な連れ去り」は,締約国の国内法における不法な連れ去りを意味していること

立法義務の根拠 まずハーグ

ア ハーグ条約上「不法な連れ去り」とは,各国国内法において「不法な連れ去り」とされる行為を意味している。
ハーグ条約3条は,「子の連れ去り又は留置は,次のa及びbに該当する場合には,不法とする。a 当該連れ去り又は留置の直前に当該子が常居所を有していた国の法令に基づいて個人,施設又は他の機関が共同又は単独で有する監護の権利を侵害していること。b 当該連れ去り若しくは留置の時にaに規定する監護の権利が共同若しくは単独で現実に行使されていたこと又は当該連れ去り若しくは留置がなかったならば当該権利が共同若しくは単独で現実に行使されていたであろうこと。」
と規定している。
また外務省 HP のハーグ条約関連資料の頁(甲23の1)に掲載されている「エリザ・ペレス―ヴェラ氏による解説報告書(和訳,早川眞一郎教授翻訳監修)」46頁119項には,「本条約によれば,子の連れ去りが不法であるかどうかは,それが子の常居所の法令により付与された監護の権利の現実の行使を侵害してなされたかどうかによるのであるから」と記載されている(甲23の2)。
すると,日本がハーグ条約を批准した後,日本側から他の締約国に対して,ハーグ条約に基づく子の返還請求が行われているのであるから(甲24),日本の国内法においても,一方親が他方親の同意を得ずに子を連れ去る(引き離す)ことにより他方親の権利(監護の権利)を侵害する行為を防ぐ法改正が行われなければならないこと,国会(国会議員)がその立法義務を負うことは明白である。
国会(国会議員)がその立法義務を負うことは,以下の10項(3)で引用する,児童の権利に関する条約の条約機関である子どもの権利委員会が,平成31年(2019年)2月1日付で,日本政府に対して行った勧告である「31.委員会は、締約国が、子どもの不法な移送および不返還を防止しかつこれと闘い,国内法を国際的な子の奪取の民事上の側面に関するハーグ条約と調和させ,かつ,子どもの返還および面会交流権に関する司法決定の適正かつ迅速な実施を確保するために,あらゆる必要な努力を行なうよう,勧告する。委員会はさらに,締約国が,関連諸国,とくに締約国が監護または面会権に関する協定を締結している国々との対話および協議を強化するよう,勧告するものである。」の内容からも明白である。
そのような日本の国内法の改正が行われずに,日本側から諸外国側へのハーグ条約に基づく子の返還請求が行われるとすれば,それは,ハーグ条約上「不法な連れ去り」とは,各国国内法において「不法な連れ去り」とされる行為を意味していることとの関係で,矛盾が生じる。その意味においても,国会(国会議員)がその立法義務を負うことは明白である。
イ また,上の10項(2)アでも引用したハーグ条約の注釈として,エリザ・ペレス―ヴェラ氏による解説報告書の28頁の「71」項の箇所では,以下の記載がされている(甲23の2)。
「ところで,本条約が採用した見解においては,共同監護権を有する者の1人が,他方の監護権者の同意なしに子を連れ去ることも,不法とされている。この場合において,この不法性は,法律に反することに根拠を有するものではなく,その行為がこれも法律により保護されているところの他方の親の権利を無視し,当該権利の通常の行使を妨害したという事実に基づくものである。本条約の真の性質は,このような状況において,より明瞭に示されることになる。すなわち,本条約は,将来において子の監護が誰に託されるべきかという点や,かつて下された共同監護の決定をその前提となった事情が変わったため修正する必要があるかという点について決めようとするのではなく,監護に関する終局的な決定が,当事者のひとりが一方的にもたらした事情の変更によって影響されてしまうという事態を避けようとしているにすぎない。」
このエリザ・ペレス―ヴェラ氏による解説報告書の28頁の「71」項の箇所の内容を,ハーグ条約上「不法な連れ去り」は,各国国内法において「不法な連れ去り」
とされる行為を意味していることをふまえて読むと,日本の国内法とハーグ条約上の請求の関係について,以下のように説明されることになる。
「本条約が採用した見解においては,共同監護権を有する者の1人が,他方の監護権者の同意なしに子を連れ去ることも,不法とされている。つまり,ハーグ条約上の「不法の連れ去り」は,共同監護権を有する者の1人が,他方の監護権者の同意なしに子を連れ去ることも含むのである。
その理由はなにか。この場合において,この不法性は,法律に反することに根拠を有するものではなく,その行為がこれも法律により保護されているところの他方の親の権利を無視し,当該権利の通常の行使を妨害したという事実に基づくものである。
本条約の真の性質は,このような状況において,より明瞭に示されることになる。すなわち,本条約は,将来において子の監護が誰に託されるべきかという点や,かつて下された共同監護の決定をその前提となった事情が変わったため修正する必要があるかという点について決めようとするのではなく,監護に関する終局的な決定が,当事者のひとりが一方的にもたらした事情の変更によって影響されてしまうという事態を避けようとしているにすぎない。
つまり,共同監護者の1人による子の連れ去りについて,『法律上監護権を有しているから不法な連れ去りではない』との主張を許さないために,事実上の監護権を有する親の同意なく子を連れ去り,監護権を侵害した場合も,ハーグ条約上の『不法な連れ去り』としたのである。
さらには,共同監護者の1人による子の連れ去りにより,監護に関する終局的な決定が,その当事者のひとりが一方的にもたらした事情の変更によって影響されてしまうという事態を避けるために,ハーグ条約上の『不法な連れ去り』としたのである。そして,ハーグ条約上の『不法な連れ去り』とされるためには,その子が生活をしていた国の国内法により『不法な連れ去り』とされていなければならないのであるから,日本はハーグ条約を批准する段階で,国内法をハーグ条約の『不法な連れ去り』に適合させるように,法改正を行う義務を負っていた。なぜならば,日本から諸外国への子の連れ去りに対して,ハーグ条約上の『不法な連れ去り』であるとした子の引き渡しを求めるためには,日本の国内法において,共同監護権を有する者の1人が,
他方の監護権者の同意なしに子を連れ去ることも,不法であるとされていることが必要だからである。
そしてその法改正では,日本の国内法において,『共同監護権を有する者の1人が,他方の監護権者の同意なしに子を連れ去ることは不法である。そのようなことを許すと,監護に関する終局的な決定が,当事者のひとりが一方的にもたらした事情の変更によって影響されてしまうという事態が生じてしまうので,それを避けなければならない。』との内容の改正がされなければならなかった。日本の国会(国会議員)は,ハーグ条約の批准に際して,そのような法改正の立法義務を負ったのである。
ところが,そのような日本の国内法改正は,未だにされていないのである。」
ウ このエリザ・ペレス―ヴェラ氏による解説報告書の28頁の「71」項の箇所(甲23の2)で書かれているように,ハーグ条約上の不法な連れ去りが,法律違反だけでなく,事実上の監護権侵害も含まれるとされたのは,共同親権者の一方が子を連れ去り,「私は親権者だから法律違反はない」と主張することを禁止するためである。
そして,その主張を防ぎ,当事者のひとりが一方的にもたらした事情の変更によって影響されてしまう事態が生じることを避けること(子を連れ去った(引き離した)者が子を元に戻すこと)が求められているのである。それも同解説報告書で書かれていることである。
とすると,そこに言う事実上の監護権侵害が日本の国内法でも「不法」であるとされるためには,日本において共同親権者の一方が子を連れ去った場合,それは他方親権者の監護権を侵害する許されない行為である(不法である)と日本の国内法で規定されていることが必要である。
また,そこに言う事実上の監護権侵害が日本の国内法でも認められるとされるためには,日本において共同親権者の一方が子を連れ去った場合,それは他方親権者の監護権を侵害する許されない行為である(不法である)として,子を元に戻すことが,日本の国内法上義務付けられていることが必要である。
ところが,日本の国内法では,共同親権者の一方が子を連れ去った場合,それは他方親権者の監護権を侵害する許されない行為(不法な行為)であるとは規定されていない。子を連れ去った親が親権者の決定等において不利益を受ける規定も設けられてない。
また,日本において共同親権者の一方が子を連れ去った場合,それは他方親権者の監護権を侵害する許されない行為である(不法である)として,子を元に戻すことは,日本の国内法上義務付けられていない。
つまり,日本の法律制度上,共同親権者の一方による子の連れ去りは,「不法」とはされていないのである。それは「適法行為」とされているのである。
よって,日本がハーグ条約を批准したこと,さらには,日本から他の批准国に対してハーグ条約上の「不法な連れ去り」に基づいて子の引き戻しを請求するために,日本の国内法において,子の連れ去り(引き離し)が他方親の監護権を侵害する行為(不法な行為)であることを明示し,それを防ぐ立法(法改正)を行う立法義務が国会(国会議員)にあることは明白である。
(3) 児童の権利に関する条約の条約機関である子どもの権利委員会から,日本に対して,「国内法を国際的な子の奪取の民事上の側面に関するハーグ条約と調和させること」を求める勧告が出されていること
児童の権利に関する条約の条約機関である子どもの権利委員会は,平成31年(2019年)2月1日付で,日本政府に対して,「31.委員会は、締約国が、子どもの不法な移送および不返還を防止しかつこれと闘い、国内法を国際的な子の奪取の民事上の側面に関するハーグ条約と調和させ、かつ、子どもの返還および面会交流権に関する司法決定の適正かつ迅速な実施を確保するために、あらゆる必要な努力を行なうよう、勧告する。委員会はさらに、締約国が、関連諸国、とくに締約国が監護または面会権に関する協定を締結している国々との対話および協議を強化するよう、勧告するものである。」と勧告を行った(子どもの権利委員会:総括所見:日本(第4~5回)31条)(甲25)。
この勧告により,日本は,「子どもの不法な移送および不返還を防止しかつこれと闘う」義務を負い,また日本は「国内法を国際的な子の奪取の民事上の側面に関するハーグ条約と調和させ,かつ,子どもの返還および面会交流権に関する司法決定の適正かつ迅速な実施を確保するために,あらゆる必要な努力を行なう」義務を負うことになる。
するとこの勧告が出されたことにより,日本が,日本の国内法においても,ハーグ条約と同様に,子の連れ去り(引き離し)が他方親の監護権を侵害する行為であることを明示し,それを防ぐ立法(法改正)を行う立法義務が国会(国会議員)にあることは明白である。

それから,子どもの権利条約

(4) 子の連れ去り(引き離し)を防ぐ法律規定を設けることは,児童の権利に関する条約の批准国としての日本の義務であること
ア 児童の権利に関する条約9条1項は「締約国は,児童がその父母の意思に反してその父母から分離されないことを確保する。」と規定している。
この条項は,子が両親から共同親権,共同監護を受ける権利,さらには子が両親と同じように触れ合いながら成長する権利を有していることを認めた内容である。
この条項により,児童が一方親の意思に反して,その一方親から分離されないことを確保するために,日本は子の連れ去り(引き離し)を禁止する立法(法改正)を行う立法義務を負っていることは明白である。
イ また児童の権利に関する条約9条3項は,「締約国は,児童の最善の利益に反する場合を除くほか,父母の一方又は双方から分離されている児童が定期的に父母のいずれとも人的な関係及び直接の接触を維持する権利を尊重する。」と規定している。
この条項も,子が両親から共同親権,共同監護を受ける権利,さらには子が両親と同じように触れ合いながら成長する権利を有していることを認めた内容である。一方配偶者の同意なく,他方配偶者が子を連れ去られた(引き離された)結果,現在の家裁の実務では,連れ去られた(引き離された)親は,連れ去った(引き離した)親の同意がない限り,子に会えなくなるか,会えたとしても月に1回短時間だけであることがほとんどである。また,連れ去られた(引き離された)親は,子の親権を事実上行使することが困難になる。さらに,連れ去られた(引き離された)親は,子の養育及び発達について関わることが困難になる。それは,この条項に反することである。
この条項により,日本は「父母の一方又は双方から分離されている児童が定期的に父母のいずれとも人的な関係及び直接の接触を維持する権利を尊重する。」義務を負っているのであるから,日本の国会(国会議員)が,日本の国内法において,子の連れ去り(引き離し)を防ぐ立法(法改正)を行う立法義務が国会(国会議員)にあることは明白である。
ウ また,児童の権利に関する条約18条1項は「締約国は,児童の養育及び発達について父母が共同の責任を有するという原則についての認識を確保するために最善の努力を払う。」と規定している。
この条項も,子が両親から共同親権,共同監護を受ける権利,さらには子が両親と同じように触れ合いながら成長する権利を有していることを認めた内容である。10項(4)イでも述べたように,一方配偶者の同意なく,他方配偶者が子を連れ去られた(引き離された)結果,現在の家裁の実務では,連れ去られた(引き離された)親は,連れ去った(引き離した)親の同意がない限り,子に会えなくなるか,会えたとしても月に1回短時間だけであることがほとんどである。また,連れ去られた(引き離された)親は,子の親権を事実上行使することが困難になる。さらに,連れ去られた(引き離された)親は,子の養育及び発達について関わることが困難になる。それは,この条項に反することである。
この条項により,日本は「児童の養育及び発達について父母が共同の責任を有するという原則についての認識を確保するために最善の努力を払う。」義務を負っているのであるから,日本の国会(国会議員)が,日本の国内法において,子の連れ去り(引き離し)を防ぐ立法(法改正)を行う立法義務が国会(国会議員)にあることは明白である。
エ (ア) 児童の権利に関する条約の条約機関である子どもの権利委員会は,平成31年(2019年)2月1日付で,日本政府に対して,「27.委員会は、締約国が、以下のことを目的として、十分な人的資源、技術的資源および財源に裏づけられたあらゆる必要な措置をとるよう勧告する。(b) 子どもの最善の利益に合致する場合には(外国籍の親も含めて)子どもの共同親権を認める目的で、離婚後の親子関係について定めた法律を改正するとともに、非同居親との個人的関係および直接の接触を維持する子どもの権利が恒常的に行使できることを確保すること。」を求める
勧告を出した(子どもの権利委員会:総括所見:日本(第4~5回)27条(b))(甲23)。
(イ) 10項(4)イでも述べたように,一方配偶者の同意なく,他方配偶者が子を連れ去られた(引き離された)結果,現在の家裁の実務では,連れ去られた(引き離された)親は,連れ去った(引き離した)親の同意がない限り,子に会えなくなるか,会えたとしても月に1回短時間だけであることがほとんどである。するとこの勧告において,「非同居親との個人的関係および直接の接触を維持する子どもの権利が恒常的に行使できることを確保すること。」とされたことにより,日本の国会(国会議員)が,「非同居親との個人的関係および直接の接触を維持する子どもの権利が恒常的に行使できなくなることを防ぐために」,日本の国内法において,子の連れ去り(引き離し)を防ぐ立法(法改正)を行う立法義務が国会(国会議員)にあることは明白である。
また,この勧告において,「子どもの最善の利益に合致する場合には(外国籍の親も含めて)子どもの共同親権を認める目的で、離婚後の親子関係について定めた法律を改正する」とされたことは,いわゆる離婚後共同親権を求めた内容であり,それは子どもの権利委員会が,児童の権利に関する条約に明記されている,子が両親から共同親権,共同監護を受ける権利,さらには子が両親と同じように触れ合いながら成長する権利を実現することを,日本に対して求めた内容である。そこからしても,日本の国会(国会議員)が,「非同居親との個人的関係および直接の接触を維持する子どもの権利が恒常的に行使できなくなることを防ぐために」,日本の国内法において,子の連れ去り(引き離し)を防ぐ立法(法改正)を行う立法義務が国会(国会議員)にあることは明白である。

そして,自由権規約

(5) 子の連れ去り(引き離し)を防ぐ法律規定を設けることは,自由権規約(B規約)の批准国としての日本の義務であること
日本が昭和54年(1979)年に批准した国際人権条約である市民的及び政治的権利に関する国際規約(自由権規約)規約(B規約)の23条4項は,「この規約の締約国は,婚姻中及び婚姻の解消の際に,婚姻に係る配偶者の権利及び責任の平等を確保するため,適当な措置をとる。その解消の場合には,児童に対する必要な保護のため,措置がとられる。」と規定している。
この条項により,親の子に対する①リプロダクティブ権,②親権,③監護権(子に対する権利及び責任)を両親が平等に確保するために,日本の国会(国会議員)が,日本の国内法において,子の連れ去り(引き離し)を防ぐ立法(法改正)を行う立法義務が国会(国会議員)にあることは明白である。
親の子に対する①リプロダクティブ権,②親権,③監護権(子に対する権利及び責任)は,その性質上,両親に平等に保障されるべき性質の権利だからである。

こういう条約は,憲法の解釈に影響を与えるもの

(6) 外国法及び日本が批准する条約の存在は日本国憲法の解釈に影響を与える立法事実であること
ア 上でも引用したが,最高裁判所大法廷平成27年(2015年)12月16日判決(女性の再婚禁止期間違憲訴訟)は,女性の再婚禁止期間の旧規定の内,100日を超える部分を違憲とした理由に外国法を引用した上で,次のように判示している。それは,外国法の存在が,日本国憲法の解釈に意味を与える立法事実であることを示している。
「また,かつては再婚禁止期間を定めていた諸外国が徐々にこれを廃止する立法をする傾向にあり,ドイツにおいては1998年(平成10年)施行の「親子法改革法」により,フランスにおいては2005年(平成17年)施行の「離婚に関する2004年5月26日の法律」により,いずれも再婚禁止期間の制度を廃止するに至っており,世界的には再婚禁止期間を設けない国が多くなっていることも公知の事実である。それぞれの国において婚姻の解消や父子関係の確定等に係る制度が異なるものである以上,その一部である再婚禁止期間に係る諸外国の立法の動向は,我が国における再婚禁止期間の制度の評価に直ちに影響を及ぼすものとはいえないが,再婚をすることについての制約をできる限り少なくするという要請が高まっていることを示す事情の一つとなり得るものである。」
イ 日本が締約国となっている条約の内容や,その条約機関から日本に対して出された法改正を求める勧告は,日本国憲法の解釈に影響を与える立法事実として存在している。
この点につき,大阪高裁平成30年8月30日判決(大阪高裁平成30年(ネ)第247号)において引用されている(甲22号証6頁),同判決の原審である神戸地裁平成29年11月29日判決(神戸地裁平成28年(ワ)第1653号)では,日本が締約国となっている条約の内容や,その条約機関から日本に対して出された法改正を求める勧告が,日本国憲法の解釈に影響を与える立法事実として存在していることを,以下のように認めている(甲21号証32頁)。「日本が締約国となっている条約・勧告の内容や諸外国における立法の内容が立法事実となり得ることは否定できない。」

また私人間適用

(7) いわゆる三菱樹脂事件において最高裁大法廷昭和48年12月12日判決は,私人による人権侵害について,「その侵害の態様,程度が社会的に許容し得る限界を超えるときは,立法措置によって是正を図り」と判示している。
つまり最高裁判例によって,私人による人権侵害の態様,程度が社会的に許容し得る限界を超えるときは,立法措置によって是正を図る立法義務が,国会(国会議員)にはあるのである。
子の連れ去り(引き離し)が,連れ去られる(引き離される)側の親の基本的人権(①リプロダクティブ権,②親権,③監護権)を侵害する違法な行為であり,その人権侵害の態様,程度が社会的に許容しうる限界を超えていることは,一方親による子の連れ去り(引き離し)が,日本の国内で大きな問題とされ(上でも引用した令和元年11月14日の参議院法務委員会において,嘉田由紀子議員が,親権を付与する基準が法的にないことの問題を指摘した上で,基準なしに裁判所が原則ではない継続性の原則を適用するため,強制的に連れ去りをして実態を作っていると指摘したことはその1つである(甲18)。),国際社会からも大きな非難を受けていることから明白である(甲26)。

男女共同参画の観点から

(8) 男女共同参画社会基本法4条は,「男女共同参画社会の形成に当たっては,社会における制度又は慣行が,性別による固定的な役割分担等を反映して,男女の社会における活動の選択に対して中立でない影響を及ぼすことにより,男女共同参画社会の形成を阻害する要因となるおそれがあることにかんがみ,社会における制度又は慣行が男女の社会における活動の選択に対して及ぼす影響をできる限り中立なものとするように配慮されなければならない。」と規定している。この条項により,子に対する①リプロダクティブ権,②親権,③監護権(子に対する権利及び責任)を両親が平等に確保するために,日本の国会(国会議員)は子の連れ去り(引き離し)を防ぐ立法(法改正)を行う立法義務を負っていることは明白である。
親の子に対する①リプロダクティブ権,②親権,③監護権(子に対する権利及び責任)は,その性質上,両親に平等に保障されるべき性質の権利だからである。

自力救済は禁止されているよ

(9) 自力救済が禁止されていること
最高裁昭和40年12月7日判決は,「私力の行使は,原則として法の禁止するところであるが,法律に定める手続によつたのでは,権利に対する違法な侵害に対抗して現状を維持することが不可能又は著しく困難であると認められる緊急やむを得ない特別の事情が存する場合においてのみ,その必要の限度を超えない範囲内で,例外的に許されるものと解することを妨げない。」と判示している。
配偶者による子の連れ去り(引き離し)は,子を連れ去って(引き離して)自らがその後子を養育し,親権を行使し,監護を行おうという行為なのであるから,それは法律上の手続を経ない自力救済によって利益を得る行為である。
最高裁昭和40年12月7日判決が判示したように,日本の国内法上自力救済は原則として許されない違法な行為であり,そのような行為が生じることを防止する立法(法改正)を行う立法義務を国会(国会議員)は負っているものである。
現在,一方配偶者による子の連れ去り(引き離し)が日本の国内で大きな問題とされ(上でも引用した令和元年11月14日の参議院法務委員会において,嘉田由紀子議員が,親権を付与する基準が法的にないことの問題を指摘した上で,基準なしに裁判所が原則ではない継続性の原則を適用するため,強制的に連れ去りをして実態を作っていると指摘したことはその1つである(甲18)。),また国際社会から非難されている(甲26)のも,それが親の子に対する基本的人権を侵害する行為であると同時に,法律上の手続を経ない自力救済によって利益を得る行為であるからに他ならない。
上の7項(4)イで引用したように,日本の民法が,父母の意見が一致しない場合の取扱い(解決のための手続規定)を設けていないのに対し,諸外国の法では,そのような場合に対応するための規定を置いている例が多い(フランスやドイツでは最終的には裁判所の決定にゆだねている)(大村敦志『家族法』(有斐閣,第3版,2010年)102頁(甲20))。国際社会から見ると,日本の法律制度では一方配偶者の子の連れ去り(引き離し)が容認され,かつそれが解決されないまま放置された状態であることが不合理と評価されるのは当然のことである。

最高裁判例に照らして

(10) 子の連れ去り(引き離し)を防ぐ法律規定を設けることは,最高裁判例の立場からも求められること
ア 非嫡出子の相続分についての最高裁大法廷平成25年9月4日決定について
当時の民法900条4号但書が,非嫡出子の相続分を,嫡出子の相続分の半分としていた規定について,憲法14条1項の法の下の平等に違反すると判示した最高裁大法廷平成25年9月4日決定の立場からすると,子の連れ去り(引き離し)を禁止する立法(法改正)を行うことが国会(国会議員)に課せられた義務であることは明白である。
最高裁大法廷平成25年9月4日決定は,「子が自ら選び,正せない事柄を理由に不利益を及ぼすことは許されない,との考えが確立されてきていること。」等を理由として,当時の民法900条4号但書を,憲法14条1項に違反する,と判断した判例である。
子を連れ去ること(引き離すこと)も,本来は両親から同様に親権を行使される立場であるはずの子にとって,自ら選び,正せない事柄である。子は,一方配偶者(親)による連れ去り(引き離し)という事実により,他方配偶者(親)から引き離され,触れ合う機会を奪われる。連れ去られた(引き離された)子は,連れ去った(引き離した)配偶者の同意がない限り,他方配偶者(親)に会えなくなるか,会えたとしても月に1回短時間だけであることがほとんどである。また子は,他方配偶者(親)から親権を受けることが事実上困難となる。さらに子は,他方配偶者(親)から養育及び発達について関わりを受けることが困難になる。つまり,子が一方配偶者(親)により連れ去られること(引き離されること)は,子が両親から共同親権,共同監護を受ける権利,さらには子が両親と同じように触れ合いながら成長する権利を奪われることを意味しているのである。それは,「子が自ら選び,正せない事柄を理由に不利益を及ぼすこと」である。その意味において,最高裁大法廷平成25年9月4日決定の立場からすると,子の連れ去り(引き離し)を防ぐ立法(法改正)を行うことが国会(国会議員)に課せられた義務であることは明白である。
イ 女性の再婚禁止期間についての最高裁大法廷平成27年12月16日判決について
最高裁大法廷平成27年12月16日判決(平成25年(オ)第1079号,女性の再婚禁止期間違憲訴訟)である(なお,このイにおいては,同判決を「最高裁大法廷平成27年判決」という。)。最高裁大法廷平成27年判決では,当時の民法733条1項の規定していた女性の再婚禁止期間(当時は6箇月)が違憲ではないか,が争点とされた。最高裁大法廷平成27年判決の前の先例であった最高裁平成7年12月5日判決は,女性の再婚禁止期間の目的について「父子関係の重複を回避し,父子関係をめぐる紛争を予防する」ことにある,と判示していた。それは,①父子関係の重複を回避し,かつ②父子関係をめぐる紛争を予防する,という意味で,②の父子関係をめぐる紛争が起きることは,子ではなく,親や家族にとって不都合だ,という側面を考慮に入れて,女性の再婚禁止期間として,嫡出推定規定の重複を避けるための100日だけでなく,それを超える6箇月の期間を設けることも許される,と判示したことを意味している(女性の再婚禁止期間が設けられた理由の1つとして,「嫡出推定が重複する期間だけでは,女性自身が妊娠に気付かない場合があり,また女性が妊娠していることが外見からは分からないから,紛争が生じる可能性があるために,幅を持たせて6箇月にした。」という説明がされている(久貴忠彦「再婚禁止期間をめぐって」ジュリスト981号(有斐閣,1991年)37頁(甲27))。
ところが,最高裁大法廷平成27年判決は,女性の再婚禁止期間の目的についての判示において,「父子関係の重複を回避し,もって父子関係をめぐる紛争を予防する」ことにある,と判示した。最高裁大法廷平成27年判決は,そこに「もって」という言葉を入れることで,父子関係の重複を回避することだけが女性の再婚禁止期間の目的であり,それは未成年者子の福祉や未成年者子の保護のために設けられた規定であって,それを超えて親や家族の不都合いう面を考慮に入れて女性の再婚禁止期間を長くすることは許されない,と判示したのである。
つまり最高裁大法廷平成27年判決は,「親子法は子の福祉や子の保護のためにあるのであり,親の不都合を防止するための制度ではない」ことを確認したことになる。
とすると,この最高裁大法廷平成27年判決の立場から一方配偶者(親)が子を連れ去ること(引き離すこと)を評価すると,その行為は,一方配偶者(親)の都合により,他方配偶者(親)の同意なく子を連れ去る(引き離す)ことなのであるから,明らかに離婚後の親の不都合(子を連れ去った(引き離した)配偶者(親)が他方配偶者(親)と関わりたくないという親の不都合)を防ぐための行動であることは明白である。
そして,子は,一方配偶者(親)による連れ去り(引き離し)という事実により,他方配偶者(親)から引き離され,触れ合う機会を奪われる。連れ去られた子は,連れ去った(引き離した)配偶者の同意がない限り,他方配偶者(親)に会えなくなるか,会えたとしても月に1回短時間だけであることがほとんどである。また子は,他方配偶者(親)から親権を受けることが事実上困難となる。さらに子は,他方配偶者(親)から養育及び発達について関わりを受けることが困難になる。つまり,子が一方配偶者(親)により連れ去られること(引き離されること)は,子が両親から共同親権,共同監護を受ける権利,さらには子が両親と同じように触れ合いながら成長する権利を奪われることを意味しているのである。それは,子の福祉や子の保護について生じる「子の不利益」を生じさせる行為であり,最高裁大法廷平成27年判決は,「親子法は子の福祉や子の保護のためにあるのであり,親の不都合を防止するための制度ではない」ことを確認したことからすると,許され
ない行為であることは明白である。
最高裁大法廷平成27年判決の立場からすると,子の連れ去り(引き離し)を防ぐ立法(法改正)を行うことが国会(国会議員)に課せられた義務であることは明白である。

というわけで

(11) このように,一方配偶者による他方配偶者の同意を得ない子の連れ去り(引き離し)を防ぐために,法の欠缺1ないし3を補う立法(法改正)は必要不可欠であり,その立法義務を国会(国会議員)が負っていることは明白であるにもかかわらず国会(国会議員)は,その立法措置を執ることを怠っているのである。

立法不作為という違法

11 「法の欠缺1ないし3」についての国会(国会議員)の立法不作為が国家賠償法上違法であること
(1) 最高裁平成17年9月14日大法廷判決は,国会(国会議員)の立法不作為が国家賠償法上違法となる場合を2つ判示している(下線は原告らによる記載である。)。
「国家賠償法1条1項は,国又は公共団体の公権力の行使に当たる公務員が個別の国民に対して負担する職務上の法的義務に違背して当該国民に損害を加えたときに,国又は公共団体がこれを賠償する責任を負うことを規定するものである。したがって,国会議員の立法行為又は立法不作為が同項の適用上違法となるかどうかは,国会議員の立法過程における行動が個別の国民に対して負う職務上の法的義務に違背したかどうかの問題であって,当該立法の内容又は立法不作為の違憲性の問題とは区別されるべきであり,仮に当該立法の内容又は立法不作為が憲法の規定に違反するものであるとしても,そのゆえに国会議員の立法行為又は立法不作為が直ちに違法の評価を受けるものではない。しかしながら,立法の内容又は立法不作為が国民に憲法上保
障されている権利を違法に侵害するものであることが明白な場合や,国民に憲法上保障されている権利行使の機会を確保するために所要の立法措置を執ることが必要不可欠であり,それが明白であるにもかかわらず,国会が正当な理由なく長期にわたってこれを怠る場合などには,例外的に,国会議員の立法行為又は立法不作為は,国家賠償法1条1項の規定の適用上,違法の評価を受けるものというべきである。最高裁昭和53年(オ)第1240号同60年11月21日第一小法廷判決・民集39巻7号1512頁は,以上と異なる趣旨をいうものではない。」
(2) さらに,最高裁平成27年12月16日大法廷判決(平成25年(オ)第1079号損害賠償請求事件(女性の再婚禁止期間違憲訴訟))は,国会(国会議員)の立法不作為が国家賠償法上違法となる場合について,以下のように判示している。「法律の規定が憲法上保障され又は保障されている権利利益を合理的な理由なく制約するものとして憲法の規定に違反するものであることが明白であるにもかかわらず,国会が正当な理由なく長期にわたってその改廃等の立法措置を怠る場合などにおいては,国会議員の立法過程における行動が上記職務上の法的義務に違反したものとして,例外的に,その立法不作為は,国家賠償法1条1項の規定の適用上違法の評価を受けることがあるというべきである(最高裁昭和53年(オ)第1240号同60
年11月21日第一小法廷判決・民集39巻7号1512頁,最高裁平成13年(行ツ)第82号,第83号,同年(行ヒ)第76号,第77号同17年9月14日大法廷判決・民集59巻7号2087頁参照)。」
(3) ア 上の「8 小括」及び「9 「法の欠缺1ないし3」が憲法違反であることについて」で主張したように,「法の欠缺1ないし3」が憲法13条,憲法24条1項,憲法14条1項及び憲法24条2項に違反していることは明白である。
イ また,上の「10 「法の欠缺1ないし3」を補う法の立法義務が,国会(国会議員)に認められることについて」で主張したように,「法の欠缺1ないし3」を補う法の立法義務が,国会(国会議員)に認められることも明白である。
ウ それにもかかわらず,国会(国会議員)が立法措置を執らないことは,最高裁平成17年9月14日大法廷判決が判示した「国民に憲法上保障されている権利行使の機会を確保するために所要の立法措置を執ることが必要不可欠であり,それが明白であるにもかかわらず,国会が正当な理由なく長期にわたってこれを怠る場合」に該当する。
なぜならば,国民に憲法上保障されている権利であるリプロダクティブ権,親権及び監護権を行使する機会を確保するためには,他方配偶者による子の連れ去りが行われないための立法措置を執ることが必要不可欠であり,それが明白であるにもかかわらず,国会が正当な理由なく長期にわたってこれを怠っていることが明白だからである。
エ またそれは,最高裁平成27年12月16日大法廷判決(平成25年(オ)第1079号損害賠償請求事件(女性の再婚禁止期間違憲訴訟))が判示した「法律の規定が憲法上保障され又は保障されている権利利益を合理的な理由なく制約するものとして憲法の規定に違反するものであることが明白であるにもかかわらず,国会が正当な理由なく長期にわたってその改廃等の立法措置を怠る場合」に該当する。
なぜならば,一方配偶者による子の連れ去りが,他方配偶者について,国民に憲法上保障され又は保障されている権利利益であるリプロダクティブ権,親権及び監護権を合理的な理由なく制約するものとして憲法の規定に違反するものであることが明白であるにもかかわらず,国会が正当な理由なく長期にわたってその立法措置を怠っていることが明白だからである。
(4) ちなみに,最高裁平成17年9月14日大法廷判決は,日本国内に在住する国民については国政選挙における選挙権行使の機会が確保されていたのに対して,在外国民に国政選挙における選挙権行使の機会を確保するための在外選挙制度を設けるなどの立法措置を執ることが必要不可欠であったにもかかわらず,国会(国会議員)が何らの立法措置を執らなかったことが,国家賠償法1条1項の適用上違法の評価を受ける,と判示した。その事案においては,以下のように同じ日本国民につき,外国に在住する日本国民については在外選挙制度などの立法措置が存在しないこと(法の欠缺)が憲法違反ではないかが争点とされた点において,本件と同じ「法の欠缺」の憲法適合性が問題とされたものである。
最高裁平成17年9月14日大法廷判決当時の公職選挙法における区別と法の欠缺① 日本国内に在住する国民→選挙権の行使が可能
② 外国に在住する日本国民→選挙権の行使が不可能
(5) また,最高裁平成20年6月4日大法廷判決は,当時の国籍法3条1項の規定は,日本国民である父から出生後認知された非嫡出子のうち,父母が法律上の婚姻をしていない者のみが日本国籍を取得できないという区別を生じさせていたことにつき,血統主義を基調としつつ,我が国との密接な結び付きの指標となる一定の要件を設けて,これらを満たす場合に限り出生後における日本国籍の取得を認められることとした立法目的には合理的な根拠が認められるが,立法目的との間における合理的関連性は内外における社会的環境の変化等によって失われており,今日において同項の規定が本件区別を生じさせていることは,憲法14条1項に違反する,と判示した。その事案においても,以下のように父母が法律上の婚姻をしていない者のみが日本国籍を取得できないこと(法の欠缺)が憲法違反ではないかが争点とされた点において,本件と同じ「法の欠缺」の憲法適合性が問題とされたものである。
最高裁平成20年6月4日大法廷判決当時の国籍法における区別と法の欠缺
①婚姻や認知の有無にかかわらず日本人女性から子が出生→日本国籍が得られる
②日本人男性と婚姻した外国人女性から子が出生→日本国籍が得られる
③両親が婚姻せず,胎児のうちに認知がされた→日本国籍が得られる
④親が婚姻せず,子の出生後に認知がされた→日本国籍が得られない
⑤親が婚姻せず,子の出生後に認知。その後両親が婚姻→日本国籍が得られる

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