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法制審議会家族法制部会第24回会議議事録読む3~落合委員・武田委員・水野委員・窪田委員・井上委員・原田委員

控訴に向けて、いろいろ勉強していますー

議事録も読んどこう

○落合委員 

2点あります。1点目は、水野委員がおっしゃった、欧米にはある規定を日本でここで明らかにするということなのだと、やっと追い付くのだという話なのですけれども、それって欧米の20世紀に追い付く話なのです。もう21世紀になっているのです。もう20世紀の法とか政策というのは変わっているのです。それを20世紀に追い付いてどうするのだと私は思います。欧米の国が植民地をさんざん作って、それに少し遅れて日本が植民地を作り始めて、みんなに怒られたということがありますけれども、何かそれと似たずれ方を感じます。ですから、父母の責務をはっきりさせることではなくて、今大事なのは、父母だけでは育てられないということをはっきりさせるのが21世紀的だと思うのです。という意味で、何かそういうものを、だから、父母がその責務なり権利・義務なりを負うなら、それを実行できるように国がサポートするとかいうことがやはり書かれるべきだと思うのです。そうではないと21世紀にならないと思うのです。これが1点です。
 それからもう1点は、養育と扶養のことですけれども、私もやはり養育という方がよいと思っていまして、扶養というのはやはりお金とか体のことだけみたいな。人格的な関わりというのがやはり親子関係とか養育というときには重要だと思うのです。だから、そこまで入れないでお金だけ出させるというのは何なのだろうという。発想が逆転しているような気がして。何人かの方は養育費を別居親からどうやって取るかというところから話を始めていませんか、それは逆転していると思うのです。やはり理念から決めるべきではないのですか。理念から考えるのだったら、父母がこどもに対してすることは、ただ体を育ててあげる、お金を出すことではなくて、人格的な関わりも通して本当の意味で人間として養育することですよね、それを否定するような書き方になるのはまずいだろうと思います。
○大村部会長 ありがとうございます。落合委員からは2点、一つ目は20世紀的、21世紀的というお話がありましたけれども、先ほどおっしゃっていた社会的支援について書き込むことが是非必要だという御趣旨の御発言かと思います。それから2点目は、先ほどから出ている扶養、養育で、ここは意見が分かれているところだと認識いたしましたが、養育の方がよいという御意見として承りました。

養育権だよね

○武田委員

 親子ネット、武田でございます。今回、大量のパブコメを整理しつつ本日の会議のご準備いただきましたこと事務当局に感謝申し上げたいと思います。本日もよろしくお願い申し上げます。弊会では、この11月に中間試案がまとまって以降、対面で意見交換会をやったりオンラインの勉強会をやったり、私どもは法学者の先生方とは違いあくまで素人集団ですので、まずは、試案の内容の理解に努めました。また、最終的には弊会として急遽、臨時総会を1月に実施しまして、意見を集約しました。結果、何とか2月17日、意見書を提出したというところでございます。したがいまして、本日の部会以降は集まった弊会会員の声を中心に発言をさせていただきたいと考えます。
 前置きはこのぐらいにいたしまして、第2に関してです。おおむね弊会として提出したパブコメの意見についても、網羅的に触れられておりますし、こういった規律ですので、やはり一般的な表現になっていくだろうという部分に関しましては十分理解できるところです。まずは、方向性に関しておおむね賛同すること、申し上げたいと思います。
 その上で2点申し上げます。責務、それに対する権利性という意見、私どもも同様の意見を提出しております。責務に加え、責務を履行するための権利を追記いただきたいという意見を出させていただきました。やはり理由といたしまして、責務を履行するために、何も権限がなくて履行することというのは当然困難になるであろうというところから提出させていただいた意見です。
 もう1点、水野先生より欧米がどういうふうに進んできたかという御説明もありました。当部会にもお越しになっていただきました関西学院大学の山口先生の著作の表現、米国法であり、私はこれが重要だと思っております。具体的には「父母の婚姻関係にかかわらず、法律婚が有効であろうとなかろうと、離婚していようと、はたまた事実婚であろうと、という前提に立って、親にはこどもを養育する権利と責任がある」と紹介されています。親の権利というと、その言葉だけで少しいろいろなハレーションが起きるかもしれませんけれども、合衆国最高裁判所でも確認されていたこのような考えを取り入れていくことは極めて重要であろうということを申し上げたいと思います。
 あともう1点、扶養と養育、いろいろな先生方の御意見もいろいろ拝聴しておりました。私どもといたしましては、やはり養育であろうと思います。理由はほぼ他の先生方が述べた意見と同様です。私からいたしますと、菅原先生がおっしゃっていただいた、育む、やはりケアではなくペアレンティングであろうと、これが親が負うべき責務であろうと、こんなふうに考えております。一旦この方向性で進めていただきまして検討いただいたもの、なかなか表現は難しいかと思いますけれども、改めて提示いただきまして、次の議論に進めていくという方向で進めていただければというのが私からの意見でございます。
 簡単ですが、以上です。
○大村部会長 ありがとうございます。基本的な方向性に賛成ということを踏まえられた上で、2点、責務というのにプラスして権利ないし権限というのを加えるべきだという御発言と、扶養よりも広く養育と考えるべきだという御意見だったかと思います。

養育権よ

○水野委員

 水野でございます。先ほどの池田委員の御発言に対する、要するに反対の意見を申し上げます。今までもさんざん繰り返してきたことでございますけれども、条文に書き込んだ言葉は非常に強い力を持ってしまいます。私も親権法改正のときに面会交流という言葉を条文に入れまして、それが立法のときに考えていたよりもはるかに硬直化した運用がされたという過去がございます。そして、意見を聴くというのは面会交流よりもはるかに簡単なことですので、硬直的な実務を生んでしまいかねません。子の意見の考慮という表現は非常に明確ですので、現在の負担過重の家庭裁判所の実務が、このこどもの意見を聴くことについて細心の注意を払った慎重な対応をしてくれるだろうかというと、私は非常に疑問でございます。こどもの意見の考慮と書いてしまいますと、簡単にこどもに聴いてしまうことになるように思います。こどもにとって、両親のどちらを選ぶかという質問は、非常に残酷な質問です。理念を語る言葉では曖昧すぎてという御批判がありましたけれども、曖昧である言葉にはそれなりの意味があるように思います。子の利益が曖昧すぎるということでしたら、もう少し、例えばこどもの人格を尊重するとか、せいぜいそのような言葉にとどめていただけないでしょうか。子の意見、意向の考慮と書いてしまいますと、これは非常に硬直的に、かつ強力な実務を生んでしまいかねないと危惧いたします。
○大村部会長 ありがとうございました。書きぶりについていろいろ御意見を頂いておりますけれども、余り特定の用語を使った書き方をすると、運用に強い影響を及ぼしてしまうのではないかという御懸念を示されたものと受け止めました。

なんか都合が悪いのかしら?むしろ

○窪田委員

 少しうまく整理ができていないところもあるのですが、今までお話を伺っていて、私自身はやはり①の部分は扶養という言葉を使った方がいいのではないのかなという思いをむしろ強くしております。その理由というのは、扶養といったら、もう実務上はお金の問題だけになってしまうではないかというのは、そうなのかもしれませんが、その部分がはっきりしていなかったので、はっきりするというのが、やはり一つの大きな意味があるだろうと思います。
 それともう一つ、非常に気になる点は、養育という言葉の方がいいのではないかという方が考えている内容というのは、実は親権と重なっているのではないかという点が非常に気になります。つまり、養育というのはお金の問題だけではなくてこどもを育むものなのだというのはよく分かるのですが、そうだとした上で、義務だけではなくて、むしろ権利もあるのだという話になってくると、これはもう親権とかぶさる内容になってきて、むしろ親権の有無にかかわらず同じ内容をここで規定されるということになりかねないというような気もしました。
 池田委員は、面会交流の話もこれを手掛かりにすればよいということだったのですが、この養育の責務という中に面会交流も入るのだとすると、もう有無をも言わさず、養育の責務がある以上は面会交流というのも責務になるというような帰結になりかねない部分があるような気がします。その点では、養育という言葉が非常に幅広い意味を持っていて、ということはよく理解できるのですが、むしろここの部分は非常に、従来実務上行われてきたけれども根拠は明確ではなかったところを明確にするという、志が低いと言われるかもしれませんが、そういった観点から捉えてもよいのではないかと思います。
 それからもう一つ、先ほども少し言及があったドイツ法なのですが、私もドイツ法のことしかよく分からないのですけれども、ドイツ法でも扶養に関しては、非常に細かく規定されています。どういうふうな場面でどういうふうなところまでというような、佐野幹事から御指摘があったような点まで含めて、扶養に関しての規定が置かれています。そうした扶養に関する手掛かりとなる、根拠となる規定を置くということは意味があると思います。他方、ドイツ法では養育という言葉は非常に限定的に使っておりまして、まず、手元で育てるというような場面に限って養育という言葉を使っています。その点では、同居の有無にかかわらず、父母である以上、その法的地位に基づいて子を養育する義務がある、あるいは権利があるというのは、必ずしも、少なくともドイツ法と同じような発想ではないなと思いながら伺っておりました。
○大村部会長 ありがとうございます。窪田委員からは2点に分けて御発言がありましたけれども、基本的にはどちらも扶養と養育の概念をどのように整理するのかということに関する御意見として承りました。その中で、二つの点を示されていたのだろうと思います。一つは親権との異同を考える、これは先ほど石綿幹事もおっしゃったことかもしれませんが、その視点が必要だろうということと、それからもう一つは、これは水野委員などがおっしゃっていることですけれども、現在の状況との関係で、何が最低限必要な規定なのかということから考えるべきだという御指摘だと理解を致しました。

養育権よね

○井上委員

 ありがとうございます。連合の井上です。事務当局の提案である、今回この規律を設けるものとすることについては、賛成の立場で発言をさせていただきたいと思います。というのも、現行民法で何ら規定がされていない状況を踏まえれば、これらを導く一般的な規律を設ける考え方は、あってよいのではないかと思っています。前回会議で棚村委員が発言されたかと思うのですが、総論では賛成でも各論では意見の一致を見るのが容易でない論点でありますので、その意味でも一般的な規律にとどめるのがよいかと思っています。
 例えば、2ページの補足説明に記載があるのですが、父母は親権の有無にかかわらず、子との関係で特別な法的地位を有すると解されることからとありまして、その法的地位を規律で明文化し、その規律から①の子を養育する責務や④の特別な法的地位によって生じる生活保持義務を導くような解釈も考えられるのではないかと思います。
 それから、先ほど責務と義務・権利の話が出ておりますが、法律が少し違いますけれども、労働法の労働政策総合推進法などでも国や事業主、労働者の責務という言葉を使って、そこで自覚とともに、正に責任も含めて責務という言葉を使っていますので、私は権利・義務よりは責務という言葉の方が適切ではないかと考えています。
○大村部会長 ありがとうございます。井上委員からは、この一般的な規律を設けるということについて賛成する、むしろ一般的な規律にとどめるほかないのではないかという御意見を頂いたと思います。その上で、責務という言葉についても、広い意味をそこに込めることが現行法の法体系の下で可能なのではないかという御意見を頂戴いたしました。

責務ねぇ

○原田委員

 委員の原田です。よろしくお願いします。私も窪田委員がおっしゃったように、①を扶養と考えるということに賛成し、権利というのは消極的に考えています。
 これをまとめたような総論的な条文というのがどう考えても思い付かないというか、それで、私が考えたのは、その性質としては、①と④と、②と③は少し性質が違うものではないかと思いました。それで、①の中に、先ほど窪田先生がドイツ法のことを言われて、なるほどと思ったのですけれども、養育という意味をここに含ませると、本当に広い範囲になって、先ほどの親子交流とか、そのほかのいろいろなことを、責務の中に全部入ってくるというので本当にまとめられるのだろうかという思いがあります。
 それと、権利ということになると、親の権利というのは一般的にこどもを教育する権利として、国に対するものとしてはよく概念されるわけですけれども、親子関係ですると、やはり子に対する権利というふうになってくるので、やはり親権の概念と重なってくるし、②、③の子の意思の尊重とぶつかる場面も出てくるのではないかと思いますし、少し言葉尻を捉えるものかもしれませんが、先ほどおっしゃった、武田委員ですかね、責務を履行するための権利というのが少し概念しにくいと思いました。
 弁護士同士で話をしたときも、これを総論としたときに、第766条との関係、第820条、第821条との関係で、どこにどう入るのだろうかということが、なかなかまとめた感じでは概念できずに、やはり①を扶養と考えて、④と併せて、未成年ではなくて、先ほど佐野先生が言われたように、これまで概念的には明確ではないといわれていた未成熟の子に対する父母の扶養義務ということ、生活保持義務ということを明確にして、それは②との関連で出てくると思いますけれども、それと②、③の、こどもの意思を尊重するという部分の総論的なものがあっていいのではないかと思っています。
○大村部会長 ありがとうございます。原田委員からは二つの方向の御意見だったかと思います。一つは具体的な事柄で、扶養、養育については、やはり扶養の方がよいのではないか、また、権利・義務とすることについては疑問があるというお話だったかと思います。もう一つは、規律の仕方で、これも既に御指摘もあったところですけれども、ひとまとめにするのではなくて、①と④、②と③をセットにして規律するということを考えるべきではないかということだったかと思います。

養育権は憲法上の概念よね

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