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人格権侵害論のつづき<夫婦別姓訴訟>

人格権侵害についてすでに検討した。憲法13条に違反しないという。

続いて、平等論を見ていく。

憲法14条1項に違反するか

 論旨は,本件規定が,96%以上の夫婦において夫の氏を選択するという性差別を発生させ,ほとんど女性のみに不利益を負わせる効果を有する規定であるから,憲法14条1項に違反する旨をいうものである。

性の平等違反の指摘か。

憲法14条1項は,法の下の平等を定めており,この規定が,事柄の性質に応じた合理的な根拠に基づくものでない限り,法的な差別的取扱いを禁止する趣旨のものであると解すべきことは,当裁判所の判例とするところである(最高裁昭和37年(オ)第1472号同39年5月27日大法廷判決・民集18巻4号676頁,最高裁昭和45年(あ)第1310号同48年4月4日大法廷判決・刑集27巻3号265頁等)。

法の下の平等に関する判例の確認。

そこで検討すると,本件規定は,夫婦が夫又は妻の氏を称するものとしており,夫婦がいずれの氏を称するかを夫婦となろうとする者の間の協議に委ねているのであって,その文言上性別に基づく法的な差別的取扱いを定めているわけではなく,本件規定の定める夫婦同氏制それ自体に男女間の形式的な不平等が存在するわけではない。我が国において,夫婦となろうとする者の間の個々の協議の結果として夫の氏を選択する夫婦が圧倒的多数を占めることが認められるとしても,それが,本件規定の在り方自体から生じた結果であるということはできない。
したがって,本件規定は,憲法14条1項に違反するものではない。

既定の形式から、性別に基づく差別的扱いがないということで、あっさり、憲法14条1項違反を否定する。ただし、付言がある。

 もっとも,氏の選択に関し,これまでは夫の氏を選択する夫婦が圧倒的多数を占めている状況にあることに鑑みると,この現状が,夫婦となろうとする者双方の真に自由な選択の結果によるものかについて留意が求められるところであり,仮に,社会に存する差別的な意識や慣習による影響があるのであれば,その影響を排除して夫婦間に実質的な平等が保たれるように図ることは,憲法14条1項の趣旨に沿うものであるといえる。そして,この点は,氏を含めた婚姻及び家族に関する法制度の在り方を検討するに当たって考慮すべき事項の一つというべきであり,後記の憲法24条の認める立法裁量の範囲を超えるものであるか否かの検討に当たっても留意すべきものと考えられる。

既定の文言は、差別していないけども、差別意識や慣習が社会に存する影響があるのであれば、その影響を排除した上での、夫婦の実質的な平等を保つことこそが、法の下の平等の趣旨であろう、と指摘し、やはり、憲法24条の立法裁量論における考慮事項であるという。

 憲法14条1項違反も否定したが、憲法24条論においての闘いへと導いている。

つづく

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